1週間を経て金利は高止まり（といっても絶対値としては高くもないが・・）を続けている中で、株式市場は調整、というよりかはポートフォリオの入れ替えが進んでいる印象。

日本の長期金利も0.14%と黒田総裁のなかでも高い水準にあり、金利上昇メリットの大きい金融株が中心に独歩高の展開となっている。他はとりあえずValuationの低い銘柄や配当の高い銘柄への逃避が続いているが、緊急避難的な要素も強く今のままでは定常化するかどうかはやや疑問。ただ、前回から続くが、期待と恐怖が入り混じりつつも、日本でも金利が上昇する大相場がくることを真剣に考え始めている。

その1つの観測としては、日銀がメドとしている長期金利±0.2%のレンジを超えてくる動きを見せるかどうかがポイントとなろう。そしてそれは黒田日銀の中で最も恩恵の受けたマーケットの1つである不動産にとって、過去10年の前提が大きく変わるターニングポイントになり得る。

たまたま本日、新築マンションが年収の何倍で買えるかを表す「年収倍率」は都内で13.4倍となっており、黒田さんが日銀に就任した時期は10倍を切っていた、というニュースが流れた。
[https://news.yahoo.co.jp/articles/db51caaf5892e97794950e2243f91851174257f0](https://news.yahoo.co.jp/articles/db51caaf5892e97794950e2243f91851174257f0)

このニュースでも触れているが最大の恩恵は低金利環境であったことで、年収や家賃の上昇があったわけではない。もちろんこの先も年収や家賃の上昇がない、ということはなく、むしろ賃金上昇はあり得るのだが、それが賃料に波及してこないと金利が上がり始めたときに現在の不動産価格を正当化しづらくなる可能性がある。

非常に簡単な前提、かつ住宅ローン向けの新築マンションという市場だけをみて計算するのもツッコミどころはあるものの、年収の13倍の不動産となると、家賃負担が税前の年収の20％程度だと考えれば、家賃相場の65倍の価格になっているということを意味しており、家賃/不動産価格でみたgross cap rateで1.5%、維持費などを考慮したnet cap rateだと1％前半に水準になっているとも考えられる。

利回りで1％しかない物件を、いったい金利いくらであれば借りて買いたいと思えるのか？長期金利が0.2%を超えてきて、金利上昇が見込まれ始めると、もはや賃料の上昇がしっかり見えてこないと、元本返済額も考慮すればCF上正当化しづらい水準となってくる。逆に言えば、だからこそ今が低金利で借りれるラストチャンスかもしれず、今のうちに低金利で自宅を買う駆け込み需要が起きるかもしれない。
ただ、投資用不動産は金利が上がり始めると冷え込む可能性が高いと思っており、住宅ローン向けの新築マンションと投資用不動産はマーケットが異なるものの、いずれかが冷え込めば双方に影響を及ぼすだろう。何よりこの10年でマーケットの前提条件だった低金利、金利は下がるということが変わってしまうかもしれないショックと、そんな中で再来年に黒田さんは引退するという恐怖が、これまで順調だった不動産市況、また企業心理のどう影響与えるのか。

とはいっても、政府や中央銀行も不動産市況の悪化は望むところではないので、金利上昇時には賃金上昇に向けてさらなる圧力を加えるだろう。そう考えるとバランスシートの軽いサービス業をロングし、借入の多くtoC向けのビジネスでない企業をショートする、そんな相場がやってこないか。いったんこの視点で、来週はいくつかの企業を調査してみようと考えている。





【2022.01.11】金利上昇が続くなら。借入コスト増加と迫りくる不動産の市況の臨界点？