これまで繰り返し触れているが、金融政策の路線の違い、金利差拡大などから今年はインフレや金利の表裏一体として、円安が1つのテーマになると考えている。最近でも円の実質実効為替レートが50年ぶりの安値となったとあり、50年前といえばドル円が固定レートだった時代なわけで、変動相場に入ってからは最安水準。

ウクライナの地政学リスクによってこの流れが中断される可能性もないことはないが、基本的な流れは円安方向が是正されにくい状態だと思っている。ということを前提としつつ、為替レートだけの投資は個人的には苦手なので（かつ、それならドル買って寝てればいい）、もうプラスαということで今回はフランスが原発開発を再開するという報道をもとに原発関連の部材輸出メーカーを調べることにした。

今回紹介するのは5631日本製鋼所。震災以降はEV関連会社として認知されているが、かつては原発部材で最も高い安全性が求められる原子炉の部材メーカーとしても有名だった。
事業セグメントとしては、産業機械と素形材・エンジニアリング事業の2つに分かれる。産業機械は、例えば、EV車に搭載されるバッテリーにセパレータフィルムという電極の間にある仕切りのようなフィルムがあるが、そのセパレーターを製造するための装置を販売したり、プラスチック素材を生産するための装置である射出成型機を主に自動車業界用に販売していたりしている。その他、スマホ用の製造装置や鉄道、防衛関連の機器の製造販売を行っていて、生産拠点は日本、横浜、名古屋と国内。

一方で、素材形・エンジニアリング事業は、電力、特に原子力とかに使われる反応容器の部材など鋳鍛鋼品を生産しており、原子炉に求められる強度を達成させるために巨大な炉を鉄から一体成型できる技術は世界でも希少だと理解している。
![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/7d64463b-9e09-44fc-a009-527da561dfc3)
（決算説明会資料から抜粋）

原発部材の例：
[https://jsw-me.com/products/01-02-02.html](https://jsw-me.com/products/01-02-02.html)

会社全体の営業利益率は7％くらいだが、鋳鍛鋼品は競争力を考えると会社平均より高い収益性を持っていると予想しており、限界利益率は高く、営業利益率で見ても20％くらい出てもおかしくないのではないかと想定。
今期の受注は当初予想200億円を210億円に引き上げているが、2011年の震災前は600億円内外は受注していたので今後フランスをはじめとして世界で原発建設が再開されていくのであれば、これまで溜まっていた潜在的需要から大きく受注を伸ばす可能性に期待できる、ということで注目している。

**今期の受注状況**
**![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/a6408edb-83c8-490e-847e-b43b6e70df84)**

![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/aadced01-cb18-4145-b259-280d20677358)

**大震災前の受注状況**
![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/faafa748-7db0-4bf5-8bdc-72b569d8cd0a)

今期の営業利益予想は160億円、純利益予想は110億円だが、全体的な受注動向も堅調であることから来期も増益が期待できる上に、営業利益に与える為替影響は1円で＋2億円（会社資料）のようなので今期のレート108円から例えば115円へと今後推移していくのであれば、潜在的には10％程度の増益のバッファーがあると考える。

必ずしも為替インパクトは大きくないが、今後原発関連の海外受注が増えればこのインパクトはさらに大きくなると思う。原発部材はすぐに受注に繋がる話ではないものの、10年前の水準に戻すだけで＋400億円ほどの売上と利益率20％（完全な想定と期待）程度を見込むと、80億円ほどの増益効果が生まれて生産拠点は日本なので内⇒外の輸出事業としては長期円安によるプラス効果も期待できる。

現在の株価は今期の会社予想ベースでPER25倍。安いという水準でもないが、来期の実力ベースなら20倍前半にはなるし、長期的なストーリーも出てきている。上記の仮定に基づけば、原発部材事業が復活すれば利益は1.5倍とかに増えているので、実際にそうなるか、またそうなったとしても、そのタイミングは先ではあるが期待先行で市場形成されるテーマがそろっていると思っている。

リスクとしては、そもそもこの市場環境下でロングのポジションを増やす必要あるのか、というもそうだが、この10年の間に原発事業の世界競争力が失われていたり、競合が大きく育っている場合は思ったより受注増加や利益率改善に繋がらない可能性がある。また、同じテーマでもっと面白い会社があるかもしれないので、今後も調査していく予定。

「円安＋α」をテーマに独断と偏見で銘柄を見る：日本製鋼所