今回は日揮を紹介。ウクライナ侵攻によりロシア経済がグローバル市場から遮断される事態となっているが、侵攻の行く末やこの経済制裁がどこまで続くかに関わらず欧州を中心にエネルギー政策の大転換が進められるのは想像に難くない。
具体的には、ロシアから輸入している天然ガスを他から調達する流れが加速するのは誰でも思いつくところ。ただそうなるとこれまで陸続きだからできたパイプラインによる輸出入は困難になることから、液化施設、つまりLNG基地が輸出側、輸入側の双方で必要となってくる。ということで日揮をご紹介。

週末にドイツがLNG基地の増設を軍事予算で行うとの発表もあり、この流れの加速を裏付けている。なお、だぶついてくるロシアの天然ガスはどうなるのか。価格はかなり安くなるだろうから、実はそれを輸入できる中国はグローバル対比で低コストでのエネルギー調達ができて生産活動が行えることが、中国経済のグローバルにおけるプレゼンスのさらなる拡大に繋がる可能性もあり、ではそれを欧米諸国が良しとするのかなど、このロシアの天然ガス問題は考えると様々な波及があり得るので投資ネタは尽きない可能性がある。

それはまた今後考えるとして、今回はストレートにLNG基地の設計から建設、保守まで行える日揮を考える。日揮（1963）は主に総合エンジニアリング事業と呼ばれる、様々な大規模プラントの建設を受注して行う企業である。

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（会社HPより抜粋）

案件は海外案件が中心であり、1件で大きいものだと数千億円規模、完成までに数年がかりのものを受注する。
基本設計から完成後の運転保守までカバーしており、作るプラントは多岐にわたるもののエネルギー関係のプロジェクトが多い。特にLNG施設は高度な技術力が必要であり、グローバルで大規模なLNG施設をリードで行えるのは日揮や千代田化工建設などプレイヤー数が限られてくる。
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（決算概要資料より抜粋）

様々なプロジェクトを抱えるが、大体粗利としては10％内外というところが1つの目安であり、長期プロジェクトであるため期間中の費用や工事期間が想定以下であれば粗利は改善するし、工事の長期化や資材コスト、現地作業員の人件費が増大すると粗利は下がってくる。
ここがリスクでもあり、過去に何度か不採算案件を出してしまい、大規模案件だと不採算だった場合の影響も非常に大きいため財務面の負担が大きくなる。会社はそれに備えて、現金を厚めに保有する必要があり、この辺りは一般的な事業会社と比べて現金保有に対する考え方は異なってくる。

今回の注目点は当然LNG基地需要の増加。LNG基地は案件の規模を大きく、1000億円を超える案件が多い。また環境としても今後受注するLNG案件は採算性が良いものが多い、あるいは期中でのコストや条件変更などの、建設側に有利な条件になるのではないかと思っており、受注増加による単純に年間の売上増だけでなく粗利率の改善も数年単位で期待できるのではないかと考えている。加えて円安効果も会計上はあるだろう。

今期の年間売上がエンジニアリング事業で4700億円。受注は1－3月に大型案件が受注できることを見込でいると思われ、会社予想で今期5000億円（12末時点では1600億円）。12末時点の受注残高は1.1兆円なので、1－3月に順調に受注できれば3末の残高は1.3兆円ほどと想定される。
![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/99aba0eb-9a3c-422d-a4cd-6bda7e6a04d4)
（決算概要資料より抜粋）


平均の工期が3年ほどと考える想定すると、今後3年程度の売上は保証されている中で、LNGプロジェクトが増加することによる売上増加や、交渉が有利になることでの利益率向上を期待すると、年間売上6000億円以上、粗利で12－13％という世界線も2025年に向けてあり得るのではないかと考えている。コロナ前は7000－8000億円の売上もあったわけで、さらに上もなくはないが、少なくともプロジェクト管理としては可能な売上範囲だろう。

そうなると現在の株価はPERで1桁。また日揮の場合、現金をそのまま見ていいのかどうかはあるものの、工事関係の現金を除いても2000億円程度のネットキャッシュがあり、時価総額2800億円に対して70％近い価値が現金部分だけで説明がつくと言えばつく。もちろん不採算案件のリスクをどう評価するかによっても変わるものの、工事関係における簿外のリスクは、同時に簿外での工事関係の現金も想定されるため、それなりに相殺されると思っている。

期待値込みの評価であるのは間違いないが、LNGプロジェクトの増加が目に見えて出てくればテーマ性含めて株価が倍になっても不思議ではないような可能性は秘めている。特にライバルの千代田化工建設が来期の様々なプロジェクトで生産能力がかなり限界に近いことを考えると、棚ぼた的に今後出てくる採算性がよさそうなLNG案件を受注しやすい環境も整っていそう。
日揮から離れるが、LNGの運搬船の需要やその造船関係も仕事が増えそうである、周辺分野を調べてみるのも面白そうだ。

「エネルギー政策転換」をテーマに独断と偏見で銘柄を見る：日揮