昨夜の米国株式市場はオミクロン株によるロックダウン懸念やFOMC前のポジション調整からナスダックを中心に下落。金利の低下が大きく、長期債が約6～7bpsずつ下がった。みんな大好きなアップル（AAPL）は寄り付き、一瞬ほぼ3兆ドルの時価総額を達成したが、そこから急落し一日の終わりに2％強下落。ドル指数が上がり、ビットコインも約3か月ぶりに200日移動平均線まで下落。

本日は大注目のFOMC前に、市場が注目しているファクターを見ていきたいと思います。

市場の注目は大きく、二つの発表に集まっている：

* **テーパリング（資産購入の段階的減額）ペースの変化の有無と、**
* **将来の政策金利を占う各自のドットプロット**

その次に **FOMCメンバーのインフレやGDP予測** のアップデートも注目されている。

記者会見で **パウエル議長の発言が前回対比どれほどタカ派シフトしているか** も市場に大きく影響を与えるだろう。

それぞれを少し深堀していきましょう。

# テーパリングをどないすんねん？！

前回のFOMCでテーパリングが発表された際、 **毎月150億ドルの減額に設定され、** **約8カ月** （毎月購入金額の1200億ドル／150億＝8カ月）で終了する見込みであった。今回のFOMCにて市場の注目は **この減額のペースが倍増されるかどうか** に集まっている。

テーパリングの議論は一般的に市場からの流動性引き上げも意味するが、 **利上げのタイミングにも大きく関与する。** これまでの発言を信じるのであれば **パウエル議長をはじめとした連銀メンバーはテーパリングが進んでいる間に利上げをする選択肢がないと考えられる。** そうすれば、前回の150億ドルのペースであれば、早くとも **来年の7月がはじめての利上げとなろう。**

ただし、 **倍増の300億ドルであれば、約4カ月で終わり最速来年の3月当たりから利上げが可能となる。**

その結果、市場の最初の利上げのタイミングに対する見方が大きく左右される。下図にて現在の翌日金利先物市場による利上げのカーブをご覧ください。
![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/89a3a069-e0b4-4822-b4b7-e187abdbf143)
来年の3月の累計利上げ回数は **0.34回に止まり、利上げを見込んでいないのがわかる。** 一方、6月は1.06となっており、 **発表済みの150億ドルの減額ペースに基づいた利上げスケジュールが維持されている。** すなわち、最初の利上げが6月となるであろう予測はまだ変わっていない。テーパリングの倍増があった場合、 **利上げカーブの3月が大きく上昇するかどうか** が重要なポイント。現在の水準を見ると、 テーパリングの倍増があった場合、短期金利カーブの観点で **ややサプライズになるのでは** と思われる。

2022年12月にて累計2回となっており、 **市場は現在来年末に翌日金利が0.5％になると予測している。**

# ドットプロットをどないすんねん？！

次の注目点は **FOMCメンバーの政策金利予測で形成される「ドットプロット」の変化幅** である。
![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/9598f256-ba5f-484b-88d3-b7e8d82afc7c)
上図にFOMCの資料から現在（9月時点）のドットプロットを表している。9月にて2022年に利上げを見ていたメンバーが18人中、9人であり、**政策金利水準予測の中央値が0.3％だった** （1回の利上げを意味する）。2023年に関しては 中央値が1％であり、**2年間をわたって今から約4回の利上げ**を見込んでいる。

今回のドットプロットで、 **委員会メンバーの中央値が市場予想並みの2回に上がるかどうか** がポイント。

**2022年の中央値が2回以上や、2023年に関しては1％をさらに上回るような展開となれば、** ドットプロットもサプライズとなろう。

蛇足だが、2020年12月時点、 **2023年の中央値も0％だった…。**1年間で「2024年まで利上げはない！」と言い切った連銀のクレディビリティーが大きく低下している。むしろ、 **今が 過去の失敗を認め、行動を是正するチャンス** であろう…。

# マクロ経済予測をどないすんねん？！

各メンバーの予測に基づいたマクロ経済の予測も、上記の二つほどではないがよく見られる。現在の予測は以下の通り。

![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/dadb5f33-92e7-44d9-bf1f-2ef3b022d969)
失業率に関してはすでに2021年の予測を超過達成している。2021年末に4.8％になると見込んでいたものは11月時点で4.2％であり、 **完全雇用の政策目標がすでに達成されている** とも言える水準であろう。

いうまでもなく最もハズしてきたのがインフレ（PCE）の予測。 **先月のPCEが前年同月比5％伸び、2021年の予測の4.2％を大きく上回っているのが伺える。** なお、6月、9月ともに連銀の予測は2023年に関して急なインフレ減速を見込んでおり、名目PCEで2.2％、コアPCEで2.3％にそれぞれ低下すると予測している。

今回のFOMCで **2022年のPCE及びコアPCEの予測が～3.5％超えであれば、サプライズに該当するであろう。** その場合はおそらく2023年はまだ3％や3％をやや下回る水準で、2％の長期目に当面近づかないメッセージとなろう。

すなわち、目標期間は明確化されてないが **昨年8月に導入したばかりの平均インフレ率目標の基準を、たった1年で達成したともいえる展開になる。**

# 記者会見で何言うとんねん？！

最後に個人的にいつも大好きなパウエル議長の記者会見。日本時間の真夜中に行われ、毎回朝までちゃんと寝るつもりで挑むが、なぜか記者会見が始まる時間帯に目が覚める…。このよくわからないバイオリズム、いい加減卒業してしまいたい…。

それはさておき、今回の記者会見で個人的に注目している論点は以下：

* 「一時的」を諦めたインフレに対する明確なメッセージ（時間軸、水準）を表現するか
* ここ1年半の失敗を認め、クレディビリティーの回復に注力するかどうか
* 完全雇用の使命に対する達成度合いをどう表現するか
* テーパリングの加速があった場合、利上げに対する考え方を明確化するかどうか

私の上のウィッシュリストはかなり欲望的だが、 **これまで通りのパウエル議長であればおそらく市場へのインパクトを恐れ、お茶を濁して逃げるのであろう。**

特に最近、パウエル議長は穏健派の民主党議員に批判され、 **政治的にもインフレに対するより強固な姿勢が求められている。**

**いちいち市場の反応を恐れる臆病者のパウエル議長が、少しだけ男らしさを示したら、記者会見もサプライズとなろう。**

今回のFOMCも、前回、前々回に続いて間違いなく歴史的なイベントとなるので、是非一緒に楽しくみていきましょう！

前回（9月）のFOMCメンバーのマクロ経済・金利予測を見たい方は以下のリンクからご覧ください：
[https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210922.pdf](https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210922.pdf)

### 主要市場の動き

* ダウ　35650.95 (-0.89%)
* S&P　4668.97 (-0.91%)
* NASDAQ　15413.28 (-1.39%)
* FTSE　7231.44 (-0.83%)
* 米国10年金利　1.4156 (-0.0681)
* 原油　71.29 (-0.53%)
* ビットコイン　5286282円 (-2.98%)

【2021.12.14】FOMC前の市場予測の徹底分析！何があったらサプライズとなるのか？！