~ETFの仕組みについて詳しく学ぼう~

ETFについて2回に分けてご紹介します。
第1回「個別企業ではなく業界に投資したい?そんなときに便利なETF」はこちら。



ETFの概要

一般にTOPIXや日経平均のような株式インデックスに連動する金融商品と説明される事の多いETFですが、実際には株式のみならず、債券、不動産、コモディティ等様々なアセットを投資対象とする商品が存在します。

誕生して未だ30年に満たないETFですが、その成長は著しく、2019年末時点で世界の証券市場には7,000本を超えるETFが上場しており、預かり資産規模を示すAUM(Asset Under Management)の合計は、約$6.2兆(約660兆円)と、日本の東証1部上場株式時価総額(約550兆円)を遥かに上回る規模に達しています。

世界初のETFは1990年にカナダで誕生しましたが、本格的なスタートとなったのは、アメリカの株式インデックスであるS&P500に連動するSPDR S&P 500 ETF Trust (Ticker: SPY)で、State Street Global Advisor社が1993年にNYのARCA市場に上場させました。SPYは、2020年4月末時点で$2,500億 (約27兆円)の時価総額を誇る世界最大のETFです。

ETFマーケットを国別に見ると、世界最大のマーケットはアメリカで、世界のほぼ1/3となる約2,300本のETFが上場し、AUM(Assets under management,運用資産残高)は2020年4月時点で$3.6兆(約390億円)に達しています。

一方、日本では2001年にTOPIX及び日経平均の値動きに連動するETFが誕生したのが本格的なスタートとされており、現在、東証には約220本のETFが上場しています。

ETF市場が短期間に大きく拡大した理由は、優れた商品性に拠るものです。


投資対象アセット

ETFの対象アセットは、株式だけではなく、債券、優先株、不動産など多岐に亘ります。更に金、石油、小麦といったコモディティやVIX指数に代表されるVolatilityを対象とするものなど、ありとあらゆるアセットを対象とするETFが取引されています。

また、アセットの種類が多様なだけではなく、投資対象とする地域も世界に広がっているので、日本に居ながらに世界中の様々なアセットに対して多彩な分散投資を行う事が可能です。

例えば、先進国の株式や新興国の債券といった大まかな範囲を決めて投資する事もできれば、アメリカの不動産やメキシコの株価指数といった特定の国の特定のアセットに対して集中的に投資することも可能です。更には、金や石油などのコモディティ、ボラティリティETFを通して、株式マーケットの変動そのものに投資するなど、投資対象を自由自在に選ぶことができます。

世界中の多様なアセットに対して簡単に投資ができるという多様性と柔軟性は、ETFの最大の魅力の1つと言えます。


ETFの運用会社

ETFの運用会社

ETFで鍵となるプレーヤーは、対象となる商品を売買し、ファンドを運営する運用会社(AM会社)です。

世界最大のETF運用会社はBlackrock社で、iSharesというブランドで取引されています。
第2位は前述のState Street社で、ブランドはSPDR、第3位はVanguard社で、社名をそのままブランドとして使っています。

3社は全てアメリカに本拠を置くAM会社で、AUM(Assets under management,運用資産残高)は、世界のETFの75%を占めており、商品の一部は東証にも上場しています。

一方、日本においては野村AM、大和AM、日興AMなど、大手証券会社系列の運用会社が上位を占めています。


ETFの安全性

運用会社は投資の裏付けとなる資産を購入し、アセットを保有しています。
但し、裏付け資産は信託されるため、万一ETFの運用会社が倒産したとしても、資産自体は守られ、直接的な影響を受けません。従って、運用会社の財務内容等にそれほど神経質になる必要はありません

裏付けとなる資産があり、AM会社との倒産隔離の仕組みが設けられているため、資産の保全という意味で安全性が高いのもETFの大きな特徴です。


ETFの売買方法

ETFの売買方法

ETFの売買は株式と同じです。東証に上場されているETFであれば、株式と同様に4ケタの証券コード(Ticker)が付されており、証券会社の営業店でも、オンライン証券でも平日9:00〜15:00の取引時間中、自由に売買する事ができます。

この点、一般の投資信託が基本的にその日の取引終了時点の基準価格でしか売買ができないのとは、全く異なります

結果として、正確な基準価格を知らないまま取引注文せざるを得ない一般の投資信託に対し、ETFは時価を確認の上で注文する事ができ、注文方法も指値、成り行きいずれも可能です。

また、ETFは株式と同様に信用取引もできるので、投資資金にレバレッジを効かせる事も、信用売により、価格の下落方向での利益を狙う事も可能です。

更に、多くのオンライン証券会社では、海外ETFのネット注文を受け付けており、中には300以上の銘柄を取り扱っている会社もあります。

海外ETFの場合、取引自体は現地の取引時間に限定されますが、予め売買注文を入れておくことが可能です。

次に、小口で取引できる事も大きな特徴です。東証上場のETFを例にすると、売買単位は1口、10口、1,000口など様々ですが、10,000円程度から取引可能な銘柄も数多く存在します。

例えば、TOPIX連動のETFはそれ自体が既に分散が効いた商品ですが、追加で債券や不動産など、異なるアセットクラスに投資するETFを買う事で、100,000円程度でも十分な分散投資を行う事ができます。

更に海外のETFを組み合わせれば、日本に居ながらにプロ投資家並の幅広く分散の効いたポートフォリオを作る事も可能です。

少額の投資資金で幅広い分散投資を行える点もETFの大きな魅力の1つです。


ETFの分配金(配当)

多くのETFでは、株式と同様、権利確定日の保有者に分配金(配当)が支払われます。
配当のスパンは毎月から年1回まで商品毎に様々で、同じアセットクラスに投資するETFでも配当回数が異なる事があり、権利確定日もマチマチです。

配当利回りも商品により様々ですが、一般的には新興国債券や高配当株、不動産投資であるREIT等を投資対象とするETFの利回りが高めです。

多くのETFでは株式投資と同様に分配金(配当)を受け取れます。


ETFの保有方法と税金

ETFは株式と同様に個人の証券口座に記録され、特定口座で保有することも、一般口座で保有する事も可能です。

特定口座であれば、売買損益、配当金共に証券会社が税金を源泉徴収し、納税してくれるので手間がかかりません。


ETFの手数料

ETF には2種類の手数料が存在します。

1つは売買に際して証券会社に支払う売買手数料、もう1つはETFの運用会社に対して支払う信託報酬(運営手数料)です。

売買手数料は株式と同様ですが、近年売買手数料を引き下げる動きが続いており、売買手数料を0円とするオンライン証券も登場しています。

信託報酬はファンドレベルで支払われるため、ETFの保有者が直接支払う訳ではありませんが、投資期間中ずっと経費となってファンドの運用成績を引き下げるため、手数料率は低ければ低いほど有利と言えます。

例えば、配当利回り4.0%のファンドの信託報酬が1.0%であれば、ETFの実質的な分配金利回りは3.0%になってしまいますが、信託報酬が0.2%であれば、3.8%の分配金利回りを得ることができます。

一般にETFの信託報酬は、通常の投資信託に比べて非常に低いレベルに設定されています。
これは一般的な投資信託に多いアクティブ投信では、専門のファンドマネージャーが銘柄を選定し、ベンチマークを上回るリターンを目指すのに対し、ETFはインデックスとの連動を目指すパッシブ運用の商品が多い事が主な理由です。

ETFの信託報酬は、投資対象となるアセットによりレベルに差があり、海外リートや海外のハイイールド債などを対象にするものは手数料が高く、株式などインデックスに連動するものは低い傾向があります。

例えば、先に紹介した海外ETFのSPYでは0.09%, 日本のTOPIX連動ETFでは0.06%の商品も提供されているのに対して、海外REITや海外ハイイールド債に投資するものでは0.5%や0.7%のものもあります。

但し、一般の投資信託で2%前後の信託報酬を要求するものも多い事に比べれば、手数料率は極めて低廉です。

ETFは取引にかかる手数料が安いため、低コスト運用が可能です。


代表的なETFのご紹介

タイプ別の代表的なETFを紹介します。実際の取引にも役に立つよう信託報酬や投資口数も紹介しておきます。

A. 株式を投資対象とするETF

 株式を投資対象とするETF
■日本株
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
1306TOPIX連動型上場投資信託野村AM0.11%10
1321日経225連動型上場投資信託野村AM0.22%1
1591NEXT FUNDS JPX日経インデックス野村AM0.2%1
1570NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ野村AM0.8%1
1357日経平均ダブルインバース野村AM0.8%1
2516東証マザーズETFシンプレクス0.5%10


■業種別ETF
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
1613東証電気機器株価指数連動型野村AM0.22%10
1615東証銀行業株価指数連動型野村AM0.22%100
1617NEXT FUNDS 食品上場投信野村AM0.32%1
1618NEXT FUNDS エネルギー資源投信野村AM0.32%1
1619NEXT FUNDS 建設・資材投信野村AM0.32%1
1620NEXT FUNDS 素材・化学投信野村AM0.32%1
1621NEXT FUNDS 医薬品投信野村AM0.32%1

※他、10種類以上の業種別のETFが存在


■海外株式
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
1680上場インデックスファンド海外先進国株日興AM0.24%10
1557SPDR S&P500 ETFState Street0.0945%1
1546NEXT FUNDS ダウジョーンズ野村AM0.45%1
1313サムスンKODEX200証券サムソン0.15%10
1678NEXT FUNDS Nifty 50指数野村AM0.95%100
1309NEXT FUNDS China AMC野村AM0.95%1

※その他、タイ、マレーシア、ブラジル、ロシア株を対象とするものあり


B. 債券を投資対象とするETF

債券を投資対象とするETF
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
2510NEXT FUNDS 国内債券野村AM0.07%10
1677上場インデックスファンド海外債券日興AM0.25%10
1566上場インデックスファンド新興国債券日興AM0.45%1
1496iShares 米ドル建て投資適格社債Blackrock0.28%1


C. 不動産を投資対象とするETF

不動産を投資対象とするETF
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
1343NEXT FUNDS東証REIT指数野村AM0.155%10
1659iShares 米国リートETFBlackrock0.2%1
1555上場インデックスファンド豪州リート日興AM0.45%10
1495上場インデックスファンドアジアリート日興AM0.7%10


D. コモディティを投資対象とするETF

コモディティを投資対象とするETF
TickerETF名AM信託報酬単位(口)
1326SPDRゴールドシェアWorld Gold0.4%1
1673Wisdom Tree 銀上場投資信託Wisdom Tree0.49%10
1674Wisdom Tree 白金上場投資信託Wisdom Tree0.49%1
1690Wisdom Tree WTI原油上場Wisdom Tree0.49%10
1687Wisdom Tree 農産物上場投資信託Wisdom Tree0.49%10
1552国際のETF VIX短期先物指数三菱UFJ0.36%1