執筆:西村 麻美

株価
(2020/6/2)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
5,185円 10.84兆円 15.9% N / A N / A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
N / A N / A 1.96倍 N / A N / A

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2020年3月期 決算分析

■2020年3月期の決算
売上高6兆1,850億円(前年比1.5%増⤴
営業利益▲1兆3,646億円(前年比3兆4,382億円減⤵
当期利益▲8,007億円(前年比2兆3,728億円減⤵

過去最大の赤字決算だった。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)における投資先企業の価値減少により巨額の損失が発生した。

通信子会社のソフトバンク株式会社(SBKK)は営業利益で9,233億円(前年比7.4%増)を計上したが、SVFの未実現評価損失は1兆9,313億円だった。

このうちWeWorkへの投資関係で7,208億円の損失を計上した。また、SVFの投資先であったOneWebが3月に破綻したが、持分法投資の減損損失を492億円計上、貸倒引当金を659億円計上した。

2020年3月末時点での保有株式価値は28兆円だった。
このうち51%がアリババ株によるもので14.2兆円。SBKK株が4.4兆円。SVF(SBG持ち分)が2.7兆円。スプリント株が3.2兆円。アーム株が2.7兆円だった。

2020年3月末時点での手元流動性は3兆3,690億円だった。2019年3月期の1.9兆円より手元流動性は1兆4,000億円ほど増加した。

有利子負債は14兆2,722億円だった。2019年3月期の15兆6851億円の有利子負債より1兆4000億円程度有利子負債は減少した。

SBGが財務の指標としているLTV(loan to value、純負債/保有株式価値)は決算発表時の5月18日時点で14.2%だった。2019年3月期のLTVは16.1%だった。

財務に関しては3月に発表したように自己株式取得と負債削減に向けて4.5兆円の資産を売却または資金化する予定で、自己株式取得に最大2兆円投入予定(過去発表分と合わせて2.5兆円)、残額で負債削減、社債の償還に充てる予定でいる。


2021年3月期 業績予測

2021年3月期の業績に関して会社側は予想数値を発表していない。
通信子会社のSBKKの業績予想は売上4兆9,000万円(前年比0.8%増)、営業利益9,200億円(同0.9%増)、当期利益4,850億円(同2.5%増)である。
同じく子会社のZホールディングスは業績予想を発表していない。

不安要因はSVFの投資先企業である。新型コロナウィルスの世界的な蔓延によりシェア・オフィスのWeWorkの業績は一層厳しくなり、既に営業レベルで赤字であるが赤字拡大が懸念され、更なる支援が必要になるとみられる。アメリカではWeWork破綻の噂まで出ており、業績が回復するとしても相当な時間が必要だと思われる。

また、インドのホテル・チェーンのOYOも経営危機に瀕している。世界80か国でホテルを展開しているが、新型コロナウィルスの蔓延で稼働率は大きく低下していると予想され、需要回復まで時間がかかると思われる。

難局を乗り切るためにOYOは数千人の従業員を無期限で一時帰休させているとの事だが、OYOは加盟ホテルに売上の最低保証を行っている事もあり、キャッシュフローは悪化していると思われ、SBGの相当規模の支援が必要になると予想される。

SVFに関してのもう一つの懸念材料はSVFの優先株式に対する7%の配当がある。
ビジョン・ファンド10兆円の構成は、SBGなどが持っている議決権のある普通株式が6兆円、議決権のない優先株式が4兆円。優先株式は主にサウジアラビアの政府ファンドが出資しているが、優先株式に対しては、年間固定の7%配当を支払い続けなければならず、これが年間約3,000億円になる。

優先配当はビジョン・ファンド内で支払わなければいけなく、今まではIPOで売却した資金を配当にあてていた。株式市場については日米ともに実体経済の悪化と乖離して強い相場が続いており、投資先企業のIPOの機会があるかもしれないが現時点では不透明要素が強い。仮にIPOの機会がなければ優先株に対する配当の支払いの為にはファンド・ルールに則ると借入をする事になる。


アナリストによる投資スタンス

ソフトバンク・グループでは理論株価を以下の計算式で求めている。

株主価値 = 保有株式時価 - 純負債
一株当たり株主価値 = 株主価値 ÷ 発行済株式数(自己株式を除く)

この計算式で現在(2020/6/3)のSBGの理論株価を計算すると一株当たりの株主価値は11,202円となる。
この理論株価と実際の株価5,185円を比べると実際の株価は53%割安である。2020年5月の一か月でSBGの株価は5.8%上昇し、6月1日に5000円の壁を突破して以降上昇ペースが加速しているが、日米両市場の株式相場の力強さからSVFの投資先企業のExitリスクが低減していると考えられているかもしれない。


プロフィール

マーケットアナリスト西村麻実 / Market analyst Mami Nishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

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