米インフレ削減法でEV普及に逆効果の意見も

米国で8月半ばにインフレ削減法が成立したが、EVの購入に対する税額控除の要件に関し、米国内外から見直しを求める声が上がっている。インフレ削減法では、EV〔バッテリー式EV(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、燃料電池車(FCV)を含む〕の購入者が最大7,500ドルの税額控除を受ける要件として、(1)車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われている、(2)バッテリー材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で抽出あるいは処理されるか、北米でリサイクルされている、(3)バッテリー用部品の50%が北米で製造されていることなどが定められている。(2)と(3)の調達価格割合は、2023年以降段階的に引き上げられる。さらに、中国を含む「懸念される外国の事業体」が関与する部品や重要鉱物が含まれる場合、それぞれ2024年と2025年から控除の対象外となるなど、メーカーにとって現行のサプライチェーンを見直す必要のある厳しい要件が設定されている。(出典:JETRO、ビジネス短信 米インフレ削減法、EV税額控除の要件に各方面から見直し求める声

また、同法では対象となるEVの価格がSUV、ピックアップトラック、バンの場合には8万ドル以下であることが条件になる。セダンやハッチバック、ワゴン車の場合には5万5000ドル以下でないと対象にならない。

世界中でカーボンニュートラルが進む中ガソリン車からEV車へのシフトが各自動車メーカーで進んでいるが、いつの間にか米中対立の政治的要素が大きく影響をしている。現実的にEVのバッテリーは世界最大の中国のバッテリー・メーカーのCATLBYDを始めとする中国メーカーのマーケット・シェアが56%と高く中国メーカー排除で北米でEV生産が可能なのか疑問がある。

米国の自動車メーカーはどうだろうか?GMは韓国LG化学と合弁で、オハイオ州で35GWhのバッテリー工場を運営している。フォードにバッテリーを供給する韓国SKイノベーションは2022年に21.5GWhの工場を操業し始めた。しかし韓国経済新聞の報道によれば、韓国のバッテリーメーカーは2021年にバッテリー正極材の前駆体材料の93%を中国から輸入したという。正極材のコストはバッテリー全体の40%を占めるといわれており、中国産の原料に頼る韓国メーカー製のバッテリーを積むGMやフォードのEVが、税額控除を受けられるかどうかは未知数だ。(出典:Web Car Graphic EV普及にはむしろ逆効果? 米大統領キモいりの「インフレ抑制法」が及ぼす“悪”影響

インフレ削減法による補助金は2022年12月31日以降に製造されるEVやPHEVから適用される予定であるが、対象になるのはテスラの低価格帯の「モデル3」や「モデルY」、日本車では米国生産の日産「リーフ」位である。GMやフォードは米国生産ではあるものの合弁相手の韓国メーカーはバッテリーの材料を中国以外の国から調達しなければいけない状況であり、年内に間に合わせるのは難しそうである。

このレポートでは2035年にガソリン車廃止、EVに100%シフトする事が可能であるかについて様々な角度から分析してみる。

世界中でカーボン・ニュートラルの流れ

温暖化対策に関する国際的な枠組みであるパリ協定が2015年に採択されたことをきっかけに世界中が脱炭素社会実現に向かっている。2019年9月に国連事務総長が気候行動サミットに先立ち、2050年カーボン・ニュートラルを表明するよう各国首脳に書簡を送り、世界中でカーボンニュートラルを表明している国は144か国ある。(2021年11時点)中国は2060年にカーボンニュートラル達成と表明。2020年10月の菅前首相所信表明演説において、2050年脱炭素社会を実現することを宣言した。

自動車業界では2017年のカリフォルニア州のZEV規制の強化(zero emission vehicle requirement、大気汚染対策として米国カリフォルニア州が導入を始めた規制で、自動車メーカーが州内で自動車を販売する場合、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など排出ガスを出さない無公害車を一定比率以上販売することを義務付ける制度。)、フランスやイギリス等におけるガソリン車・ディーゼル車の将来的な新規販売禁止等でEV開発が急がれていたが、2021年10月~11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議、開催地はUKのグラスゴー)で「100%ゼロエミッション車とバンへの移行を加速することに関するCOP26宣言」が行われた。主要都市では2035年、全世界で2040年までに全ての新車販売をゼロエミッション車とする内容で、世界39ヵ国とそのほか都市や州、地方自治体、自動車メーカーなどが合意し、署名をした。ただしこの宣言に法的拘束力はない。

2021年のCOP26の宣言に日本は国としても自動車メーカーとしても署名をしなかった。米国は国としては署名しなかったが、カリフォルニア州、ニューヨーク州、サンフランシスコ市、ロサンゼルス市、ニューヨーク市など州や市単位では署名、フォードやGMは署名した。ドイツも国としての署名はしなかったが、メルセデスベンツは署名した。中国も国としては署名しなかったが、自動車/電池メーカーのBYDは署名した。なお、この宣言に署名した国、地方自治体、企業のリストはこちら。(2021年のCOP26の開催地UKの政府サイトにリストがアップされている。)宣言に署名した国はイギリス、カナダ、ベルギー、デンマーク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、スウェーデン等と欧州が多い印象である。

EV普及のための各国の補助金制度

上述の世界的な脱炭素の大きな流れと共に各国はEV普及のために補助金制度を設けた。AUTOCAR JAPAN、2021年11月25日付の記事「世界のEV事情 主要9か国をざっくり比較 日本は充電器が余っている? 海外との違いは」によると世界9か国のEVの補助金制度やインフラ整備の状況は以下の通りである。

 

国名補助金インフラ
オランダ4万5000ユーロ(約580万円)以下の新車EVには4000ユーロ(約50万円)、中古EVには2000ユーロ(約25万円)の補助金を支給。公的充電器約7万5,000基、民間充電器約18万基(2021年7月現在)
ノルウェー購入補助金はないが、EVはVAT(付加価値税)と購入/輸入税が免除される。その他にもさまざまなメリットが用意されている。1万6,000以上の公共充電器。
米国電動モデルに対して最大7500ドル(約85万円)の連邦税控除。米国の自動車メーカーが製造したEVに対しては、これを1万2500ドル(約140万円)まで引き上げる計画がある。奨励金は州によって異なる。約4万3,000の公共充電器。
英国CO2排出量50g/km以下、EVモードでの走行距離113km以上、3万5000ポンド(約540万円)以下のクルマに2500ポンド(約38万円)の補助金を支給。2万6,000以上の公共充電器。
フランス4万5000ユーロ(約580万円)以下、CO2排出量20g/km以下のクルマには6000ユーロ(約78万円)。4万5000〜6万ユーロ(約580~780万円)のEVには2000ユーロ(約26万円)、PHEVには1000ユーロ(約13万円)の補助金が出る。約3万5,000の公共充電器。
ドイツ4万ユーロ(約520万円)以下のEVには最大9000ユーロ(約115万円)、ハイブリッド車には6750ユーロ(約87万円)の補助金。価格が4万ユーロ以上の場合は、それぞれ7500ユーロ(約97万円)と5625ユーロ(約73万円)の補助金が支給される。約4万5,000の公共充電器。
インド州によって大きく異なる。政府は8月にEVの登録料を撤廃した。公共充電器は2000基以下(2021年3月時点)
日本2020年に増加し、EVには80万円、PHEVには40万円となった。FCEVには225万円が支給される。2021年3月時点で2万9,200の充電ポイントがある。
中国1回の充電での航続距離が300〜400kmのEVに1万3000人民元(約23万円)、400km以上のEVに1万8000人民元(約32万円)、PHEVに6800人民元(約12万円)を支給。80万以上の公共充電器。

 

以下のグラフは2010年から2021年に世界中で販売されたEVの販売台数の推移である。各国のEV普及の補助金制度が後押しとなりEV(=BEV)の販売台数は2021年には劇的に伸びた。対照的にPHEV(ハイブリッド車)の販売台数はあまり伸びていない。

           世界のEV販売台数

                 (出所:The International Energy (国際エネルギー機関)、Global EV Data Explorer

トヨタ社長の見解

世界最大の自動車メーカー、トヨタ自動車社長の豊田章男氏は日本自動車工業会の会長でもあるが、一般的にEV反対派のイメージを持たれている。2020年にヨーロッパと中国における電動車(EV/PHV)の新車販売に対するシェアはそれぞれ7%と5%に達したが、一方日本でのEV普及率は0.9%と低く世界のEV化への流れに大きく後れをとっている”ガラパゴス”状態であると批判を受けてきた。豊田氏の見解は各国のエネルギー事業の違いから再生可能エネルギーの比率が高い国で製造するEVではCO2削減に大きく貢献するが、日本のように火力発電比率が高い(75%)国ではEVで使用する蓄電池の生産に多くの電力が必要であり、その電力が火力発電由来の場合は生産時にかなりのCO2を排出するためサステナブルではないと考えている。このことから豊田氏は2050年カーボンニュートラル宣言を行った日本政府にエネルギー政策の転換を求めてきた。

豊田氏はEV導入に賛成である。しかし、全てをEVにするという考え方には反対である。実際トヨタは2030年にEVの年間販売台数を350万台とする方針で、国内外でEV用電池の生産設備に7,300億円を投じると発表している。なお、トヨタの最高級ブランドLexusは2035年に100%BEV化するとトヨタは表明している。豊田氏の見解は脱炭素の手段をEVに絞るのではなく、他の選択肢もあるべきで各国のエネルギー事情に応じ、どの車が良いかを決めるのは市場やユーザーであるべきだという考えである。カーボンニュートラルを達成するためにエンジンではなくエンジンから排出されるCO2が問題であり、CO2を排出しない水素エンジンの開発にも取り組んでいる。トヨタはEV、ハイブリッド、FCVなども手掛けるフルラインナップメーカー長年にわたって技術やノウハウを蓄積してきた。また、トヨタはEVに使われているリチウムイオン電池は長距離走行できない事から全固体電池の開発に取り組んでいる。(弊社で2年前に書いた全固体電池のレポートはこちら)また、日産自動車も2022年4月に全固体電池の試作生産設備を公開した。

豊田氏の見解をまとめてみると至極まっとうな主張をしていると感じる。各国のエネルギー事情を無視して、EV化を一律に世界で推進し、カーボン・ニュートラルを達成するというのは無理がある。実際に日本は自動車の排出するCO2を削減する事に成功した唯一の主要国であると言えるだろう。

下にあげるグラフは一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)が国際エネルギー機関(IEA)のデータを使い作成したもので、主要国の過去20年間の自動車が排出するCO2排出量の推移である。2001年を100とすると20年間に米国は+9%、ドイツは+3%、オランダも同じく+3%(データの都合で18年間)、フランスは▲1%、イギリスは▲9%、日本は▲23%という結果であった。

 

 

    (出所:一般社団法人日本自動車工業会 カーボンニュートラルデータ集 ⾃動⾞のCO2削減・電動化実績

日本は独自にCO2削減にこれだけ成功しているのに、日本のエネルギー事情に合わないEV化を積極的に進めて行くという考え方は全く理にかなっていないと言えるだろう。一律のEV化に国も自動車メーカーも反対であり2040年の100%ZEV化に署名をしなかったのはこのような背景がある。

それでは長年環境問題に先進的に取り組みZEV規制を強化したカリフォルニア州の状況はどうだろうか?

カリフォルニアの新車販売状況

カリフォルニア州は大気汚染がひどい事から1990年にZEV規制を始めた州で、CARBCalifornia Air Resources Board、カリフォルニア州大気資源委員会)は州内で販売する全ての新車(乗用車とトラック)を2035年までにゼロエミッション車(ZEV)にする、つまりガソリン車の廃止という目標の達成に向けて、2026年以降の具体的なZEV規制案を2022年4月に発表した。この中で、CARBは新車販売に占めるZEVの割合を2026年式モデルでは35%、2030年式では68%にすることを提案している。

また、この目標値が自動車メーカーに及ぼす追加コストは2026~2040年で302億ドル、年平均20億ドルと見積もっている。GMやトヨタなど主要自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会(AAI)は声明で「自動車メーカーは最終的に採択された基準に見合うよう努力するが、今回の規制案の目標値はカリフォルニア州内ですら非常に困難で、同州の規制に準拠する他州では達成できないだろう」との見解を発表した。

実際の車の販売実績はどうであろうか?California New Car Dealers Association (CNCDA)が四半期毎に新車販売の統計を発表をしているが、EVのマーケットシェアはどの位まで上がっただろうか?

                                      (出所:CNCDA,  California Auto Outlook covering second quarter 2022) 

CNCDAの集計によるとEVのマーケットシェアは2022年6月末までに15.1%とハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車を上回った。一方ハイブリッド車は11.7%、プラグイン・ハイブリッド車は2.8%であった。2021年まではEVのマーケットシェアは9.5%、ハイブリッド車は10.6%、プラグイン・ハイブリッド車は3.3%であった。8月の下旬にカリフォルニア州で採択されたZEV関連の規制ではハイブリッド車(HV)はZEVとは認められず2022年6月末時点でのZEV比率は17.9%と2021年のZEV比率の12.8%より5.1pt上昇した。2026年にEV車とプラグイン・ハイブリッド車で計35%達成が可能なのかは微妙なところである。

2022年6月末までのZEV(BEV、FCEV、PHEV)のモデル別売上高である。テスラのModel Y、Model3が断トツの人気であった。

              (出所:California Energy Commission、New ZEV Sales in California

2022年6月末までの自動車メーカーごとのマーケットシェアは以下の通りである。

             (出所:CNCDA,  California Auto Outlook covering second quarter 2022) 

テスラはZEV車では圧倒的に人気があるが、トヨタはガソリン車のカムリ、カローラ、ピックアップ車のTacoma、ミニバンのSienna、小型SUVのRAV4、中型SUVのHighlander、レクサスなどそれぞれのカテゴリ―でトップの人気であり、自動車メーカーとしてのカリフォルニア州でのマーケットシェアは17.9%とテスラの10.7%を大きく上回っている。

カリフォルニアの電力状況

それではカリフォルニア州の電力状況はどうであろうか?2021年の電源構成は以下のようになる。

電源構成比(%)
石炭0.2
天然ガス50.2
廃熱・石油コークス0.2
原子力8.5
大規模水力発電6.2
バイオマス2.8
地熱5.7
小規模水力発電1.3
太陽光発電17.1
風力発電7.8

  (出所:California Energy Commission、2021 Total System Electric Generationのデータを使い株式会社pafin作成) 

2021年のカリフォルニア州の電源構成は天然ガスが50.2%、太陽光発電が17.1%、原子力が8.5%等であった。カリフォルニア州では今年の夏は異常な猛暑と多発する山火事で電力不足になった。再生可能エネルギーにシフトする過程で古い天然ガス火力発電所の多くを廃止し、電力需要がピークに達する夜間に稼働を停止する太陽光発電所への依存度を強めている。また過去1200年で最悪の干ばつで、水力発電による電力供給は減少している。こうしたなかカリフォルニア州では8月31日から9月2日にかけて、電力逼迫から午後4時から同9時まで自主的な節電を求める「フレックスアラート」を出し、EVの充電は午後4時までに済ませるようにとの呼びかけであった。

CARB(California Air Resources Board)が8月25日に2035年にガソリン車の新車の販売を全面禁止する新たな規制案を決定した直後にEV充電を制限するようにとのアラートだったので批判の声もあがった。山火事が多発し、猛暑になりやすいカリフォルニア州で気候、エネルギー事情を考慮せずに2035年にガソリン車販売の全面禁止は現実的ではない印象を受ける。電力逼迫時にEVの充電ができなくなると車の移動手段としての役目を果たす事ができなくなる可能性もあり、全面的なZEV化は危険であると思われる。

トヨタ vs テスラ

ここではトヨタとテスラのKPIの比較をしてみる。

      トヨタ        テスラ
株価1,987円 (2022/10/7時点)USD238.13 (34,481円)(2022/10/6時点)
時価総額27.2兆円USD7,462億(108兆円)
売上高(直近四半期)8兆4,911億円(7.0%YoY)USD169億(2兆3400億円)(42%YoY)
営業利益(直近四半期)5,787億円(▲42%YoY)USD24億6,400万(3,568億円)(88%YoY)
販売台数(直近四半期)2,342,000台(レクサスを含む)254,695台
営業利益率6.8%14.6%
予想PER11.6倍40.8倍
PBR1.0倍20.7倍
PSR0.8倍12.3倍
EV/EBITDA10.2倍51.8倍
ROE10.4%29.9%
ROIC3.3%22.4%

トヨタの直近の四半期は2023年3月期1Q、テスラはFY20221Qであった。トヨタは上海のロックダウンや南アフリカの洪水の影響で計画以下の生産台数になってしまった。販売台数は前年同期比92.1%であった。一方テスラは生産台数は過去最高を記録した。営業利益率はテスラがトヨタの倍以上高いが、テスラは既存の自動車メーカーと違いディーラー等を通じての販売をしていなく、直販Webサイトによる予約受付でのみ販売しており、
広告費も使っていないためにテスラの方が利益率は高い。利益率が高いためにROE、ROICがトヨタの倍位高い。トヨタの販売台数はテスラの9.2倍、売上高は3.6倍だが、時価総額はテスラが約4倍高い。テスラの株価バリュエーションは予想PERが一時100倍越えの時もあったが、今は約40倍と大分落ち着いている。テスラの高いROE、ROICを考えると予想PERの40倍が高いという印象はなく、むしろトヨタの株価バリュエーションが低すぎると思われる。今期(2023年3月期)の会社予想は売上高は前期比9.9%増の34兆5,000億円だが、鉄やアルミ等の原材料高から営業利益は同19.9%減の2兆4,000億円、当期純利益は同17.2%減の2兆3,600億円を予定している。円安メリットはあるが減益予想もあり、株価は冴えない。トヨタの株価バリュエーションは予想PERが11.6倍、PBRが1.0倍、PSRが0.8倍と割安でトヨタはEV化に遅れ成長余地があまりないバリュエーションの印象を受ける。しかし、トヨタが開発中の水素エンジン、全固体電池の量産化に成功し、BEV、PHEV、FCV以外のカーボンニュートラルが実現すれば評価は変わるだろう。

アナリストビュー

あらためてEVについて米国の法規制、COP26宣言、カリフォルニア州のZEV規制を調べてみて再生可能エネルギー先進国のヨーロッパではEV化はCO2削減に大きく貢献しそうであるが、日本や米国といったまだ化石エネルギーに大きく依存している国ではEV化をしてもEVで使う蓄電池製造に多くのCO2を排出するので現実的なカーボン・ニュートラルの手段とは言えない印象を持った。カリフォルニア州はカーボン・ニュートラルに関して世界で一番進んでいるが、ZEV規制が先走りしてしまい、電力逼迫のなかEV充電を控えるように呼び掛ける事態になってしまった。やはり各国のエネルギー事情に合ったカーボン・ニュートラルであるべきで、ユーザーに選択肢が与えられるのが望ましいだろう。COP26宣言は法的拘束力はなく、ガソリン車廃止までに時間があるのでそれまでにBEV、PHEV、FCV以外のカーボン・ニュートラルが実現すれば事情は変わってくるだろう。

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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