エヌビディアの決算が終わり9月に入ってもAI、半導体関連の大型株は冴えない展開である。一方グロース市場は7月以降出来高が大幅に増加し活況を呈している。このレポートでは東証グロース市場(旧東証マザーズ市場)上場銘柄で流動性があり、業績拡大が期待される企業5選を徹底解説する。株価は全銘柄2024/9/9の終値、株価バリュエーションは同日の終値ベースで計算した。

目次

  1. メタリアル(6182)
  2. WDBココ(7079)
  3. スマレジ(4431)
  4. ボードルア(4413)
  5. カバー(5253)

①メタリアル(6182)

企業概要:旧社名ロゼッタ。ロゼッタ時代は翻訳サービス企業との印象であったが、各業界に特化し、AIを利用したサービスを展開するようになった。事業内容は①AI事業、②翻訳、通訳事業、③メタバース事業である。主力はAI事業で今年ローンチした新サービスが以下3サービスである。「Metareal AI」は、医薬、製造、法務、特許、金融など、各分野に必要なドキュメントマネジメントにAI技術を組み合わせたソリューションで2024年2月にローンチされた。「四季報」の発行元の東洋経済新報社と「四季報AI」を開発し2024年3月にローンチした。「四季報AI」は、ChatGPTを活用し、「会社四季報オンライン」をはじめとする最新の記事・データを学習した対話型AIである。企業の事業進捗や業績などを元にした高精細な分析を提供する。また、製薬業界に特化した「ラクヤクAI」を2024年3月にローンチした。「ラクヤクAI」は、治験関係書類や添付文書といった社内外の膨大なデータを活用することで、資料の自動生成、整合性チェック、モニタリングなどを可能にし、業務スピード改善を実現するシステムである。

直近業績:2025年2月期1Q決算は売上高が前年同期比15.4%増の11億3,500万円、営業利益は同89.8%増の2億1,100万円、四半期純利益は同127.3%増の1億3,500万円であった。2024年2月期通期時点の翻訳、通訳サービスはセグメント利益率が13%であったが、AI事業のセグメント利益率は30.6%2倍以上高かった。通期の業績予想は1Q終了時点で予測困難の為に非開示であった。

 

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
956円103億円38.6%30.1%16.2%
予想PERPBREV/EIBTDAPEGレシオ配当利回り
N/A5.8倍10.7倍N/A0.00%

 

②WDBココ(7079)

企業概要:安全性情報管理、市販後調査(PMS)、臨床研究を主軸に市販後業務に特化したCRO(医薬品開発業務受託機関)。事業内容は安全性情報管理支援、ドキュメントサポート、PMS等支援、臨床研究支援、人材派遣。バイオ・化学系の人材派遣・人材紹介、医薬品開発支援等を主要事業とするWDBホールディングス(2475)の子会社である。

直近業績:2024年3月期通期は子会社のWDB臨床研究株式会社を吸収合併した事もあり、売上高は前期比12.9%増の45億9,500万円、営業利益は同17.2%増の12億7,200万円、当期純利益は同15.4%増の8億5,700万円と最高益を達成した。2025年2月期1Qは売上高は前年同期比22.5%増の12億8,100万円、営業利益は同44.5%増の3億4,500万円、四半期純利益は同48.6%増の2億4,000万円であった。1Qの通期純利益進捗率は34%であった。今通期の会社計画は増収減益予想であるが、1Q決算は強く、2Qの決算結果次第で上方修正をする可能性があると考えている。

WDBココはCROの安全情報管理業務のコストを競合他社より10%から30%安く提供しているが、それでも高い営業利益率を確保している。過去3期の営業利益率は22/3期に26.6%、23/3期に27.7%、25/2の1Qは27.0%であった。この高い利益率は業務を徹底的に分解し、難易度の高い業務はスキルの高い経験者、難易度が低い業務は経験の浅い人材が担当し、定型的な業務はRPA等の自動化ツールを利用してもたらされている。CROサービスを提供している企業でシミックホールディングス(2309)、EPSホールディングス(4282)がプライム上場していたが、両社ともMBOにより上場廃止した。シミック、EPSともに上場廃止になる直前の期の営業利益率は一桁台後半であり、WDBココは高収益体質のCROサービスと言える。

 

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
3,850円93億円78.5%23.7%23.7%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
13.2倍2.6倍4.9倍▲4.7倍2.08%

③スマレジ(4431)

企業概要:タブレットPOS「スマレジ」、決済サービス「PAYGATE」、HRサービス「タイムカード」等のクラウドサービスを提供する企業である。「スマレジ」は、基本レジ機能をはじめ、リアルタイム売上分析や高度な在庫管理など、従来型POSレジシステムの枠を超えた、これからの店舗運営に必要な新しいシステムである。クレジットカード決済や電子マネー決済、バーコードリーダーやセンサー、RFIDなどによる商品読み取りなど、様々な周辺機器やサービスに対応している。取引データは、すべてクラウドサーバーに蓄積され、あらゆる地域・業種・規模の商取引データがスマレジサーバーに集約されている。「スマレジ」は飲食店、アパレル・小売店、クリニック・医局・薬局、イベント・催事、美容院・エステ、クリーニング店、整骨院、パン屋、道の駅、洋菓子店、百貨店等幅広い。サブスクリプション・サービスなので月額利用料等は獲得が進む度に積みあがっていくビジネスモデルである。パートナーは大塚商会、OBC、TSI等450社。2024年8月末時点でアクティブ店舗は45,810店舗、2024年4月末時点での累積取引件数は20.3億件、累積取引金額は8兆4,000億円であった。

直近業績:2024年4月期通期は11年連続増収と二年連続最高益を更新した。売上高は前期比41.8%増の83億8,500万円、営業利益は同94.1%増の17億3,500万円、営業利益率は同5.6pt増の20.7%、当期純利益は同36.7%増の12億1,200万円であった。

「スマレジ」のターゲットとしている層は店舗数2店舗から40店舗の中規模層80万店舗であるが、2024年4月末時点で5.5%のシェアを取っていた。中期経営計画のKPIは2031年にアクティブ店舗30万店舗、シェア38%、レジ業界シェア30%を目標としている。

 

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
2,354円452億円75.1%20.3%21.5%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
32倍7.6倍17.1倍1.2倍0.00%

 

④ボードルア(4413)

企業概要:ITインフラストラクチャに特化し、コンサルティング、設計、構築、マネージドサービスまで提供。アプリやミドルウェア、通信工事は行わずITインフラ領域に特化している専門事業者。事業内容は①ネットワーク仮想化。ネットワークをソフトウェアで制御するSDN(Software Defined Network)やNFV(Network Functions Virtualization)の技術を用いて、ローカルブレイクアウトでクラウドサービス宛の通信のトラフィックを軽減、複数拠点間の通信をオーバーレイ方式に変更する等、リソースを最大限に活用できる柔軟なネットワークを構築。②クラウドソリューション。現在利用のオンプレミス環境から、AWS、Azure、GCPをはじめとするパブリッククラウド、ハイブリットクラウド環境へのマイグレーション計画を、策定から導入までトータルにサポート。③ITセキュリティ。IoTの普及による接続デバイスの多様化、BYODやコワーキング用のVPN接続や仮想デスクトップ等、エンドポイントが多様化。これに伴いシャドーITの増加、標的型攻撃等の企業へのセキュリティリスクも日々増加する一方であり、セキュリティにおいてはゼロトラストがスタンダードに。お客様のネットワーク環境を適切に把握し、WAF、UTM、クラウドプロキシ、サンドボックスといった各種セキュリティ技術について、導入から運用までワンストップで支援。④ワイヤレス。ICT技術の活用は企業に留まらず、教育現場や医療現場にも浸透。「GIGAスクール構想」の推進は新型コロナウィルス感染拡大により急加速し、小中高等学校においてもタブレット端末を利用した教育がスタート。医療現場においても遠隔手話通訳やリモート診療においてタブレット端末やスマートフォンの活用が進んでいる。ワイヤレス接続の導入で、ロケーションフリーなICT技術の進歩に貢献。12期連続増収増益達成。ITインフラストラクチャに特化した競合はいない。

直近業績:2024年2月期通期は売上高が前期比39.8%増の73億3,000万円、営業利益は同60.7%増の15億6,700万円、営業利益率は同2.8pt増の21.4%、当期純利益は同47.6%増の11億7,100万円であった。2025年2月期1QからIFRSに移行した。売上高は前年同期比39.6%増の23億3,900万円、営業利益は同64.2%増の4億5,000万円、営業利益率は同2.9pt増の19.3%、四半期純利益は同66.7%増の3億3,400万円であった。

IT専門調査会社のIDC Japan株式会社の予測によると国内ITインフラ市場の2023年~2028年における支出額の年間平均成長率(CAGR)を7.9%、2028年の同市場の売上額を8兆5,478億円と予測している。

 

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
5,420円855億円63.8%23%16.9%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
51.9倍16.8倍33.2倍0.5倍0.00%

 

⑤カバー(5253)

企業概要:カバーはモーション・キャプチャー技術とアニメルック・アバターを用いて活動するバーチャル・エンターテイナー「VTuber」のキャラクターIP開発、及びVTuberプロダクション「hololive production(ホロライブプロダクション」という)」の運営を行っている。カバー所属のVTuberはカバーが提供する配信技術とアニメルック・アバターを用いて、動画・楽曲配信プラットフォームでのコンテンツ配信や会場で観客を伴ってのライブコンサート・パフォーマンス等の活動を行っている。所属VTuberのキャラクターIP権利はカバーに帰属しており、IPに基づいたマーチャンダイジングやライセンスビジネス等の多様なコマース展開を可能としている。VTuber IPの影響力の拡大に伴って、コマース展開の規模も拡大しており、2024年3月期時点では在籍VTuberあたりの収益は年間約3.5億円まで成長している。また、売上高全体に占めるIPコマース展開からの収益の構成比は、2021年3月期には39.8%だったところから2024年3月期では56.1%まで増加しており、ビジネスモデルはIPビジネスとしての性質が一層強くなりつつある。2024年3月末時点でホロライブプロダクションのVTuber在籍数は85名(言語地域別で日本が52名、インドネシアが9名、英語圏が24名)となっており、そのうち38名はYouTubeのチャンネル登録数が100万登録を超える等幅広く支持を得ている。

直近業績:2024年3月期通期決算は売上高が前期比47.5%増の301億6,600万円、営業利益は55億3,600万円、営業利益率は同1.7pt増の18.4%、当期純利益は41億3,700万円であった。2025年3月期1Q決算は売上高は前年同期比24.8%増の64億1,600万円、営業利益は同▲6.8%の8億3,400万円、営業利益率は同▲4.4ptの13%、四半期純利益は同▲0.2%の6億2,000万円であった。営業利益が減少した要因は将来の事業成長のための高度人材の採用やコンテンツ制作能力の拡充といった固定費増を背景として減益となった。

VTuber文化は日本から始まった新しいエンタメとして海外では認識され、日本ではやや飽和気味の印象があるが海外ではまだ成長余地が大きいと考えられている。イギリスの市場調査会社Business Research Insightsの予測によると世界の VTuber 市場規模は、2022 年に 2 億 3 億 8,710 万米ドルで、予測期間中の CAGR は 70.59% で、2031 年までに 29 億 2,704 万米ドルに達するとの事である。

 

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
1,727円1,073億円54.7%35%33.4%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
21.1倍9.1倍12.4倍0.5倍0.00%

 

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