「ダウの犬 (Dogs of the Dow)」と呼ばれる投資戦略をご存じでしょうか?

何か特別な投資戦略を想像されるかもしれませんが、実は日本でも人気の高い、高配当株投資です。

NYダウを構成する30銘柄のうち、配当利回りの高い10銘柄への均等投資を毎年繰り返すという極めて単純な投資手法です。選んだ10銘柄のうち、株価の低い5銘柄のみに投資を行う「ダウの子犬(Small dogs of the Dow)」という戦略もあり、長期的にはいずれもS&P500を上回るパフォーマンスが確認されています。

投資初心者を中心に人気の高配当株投資ですが、個別株に投資する場合、その企業の業績や配当政策の変化により、期待していた配当を受け取れないリスクがあります。この点は、個別企業情報を入手するのが難しい米国株投資においては大きなハードルとなりかねません。この問題を解決するのが、個別銘柄ではなく、高配当株ETF(Exchange Traded Funds)を使ったポートフォリオ投資です。

高配当株ETFは、50銘柄、100銘柄など多数の銘柄で構成されるポートフォリオ投資となるため、仮に1つの企業が減配しても、ポートフォリオ全体に与える影響は限定的です。また、自ら個別銘柄を選ぶ努力が不要な省力投資でもあります。

この記事では、日本で取引可能な高配当米国株ETFを予算別で紹介します。
なお、ETFの詳しい説明については以下の記事をご覧ください。

 

目次

  1. 日米国高配当株比較
  2. 米国高配当ETF
  3. 予算別投資戦略
  4. まとめ

1. 日米高配当株比較

日本で高配当銘柄とは年3%以上の配当利回りを得られる株式を指すのが一般的です。もちろん3%を超える配当を実施する企業もあり、例えばJT(2914)は6%、あおぞら銀行(8304)やソフトバンク(9434)も予想配当利回りが5.5%を上回る人気の高配当銘柄です(2023年7月18日時点の予想利回り)

東証プライム市場に上場する全銘柄の加重平均配当利回りは約2.3%なので、先に挙げた高配当銘柄の配当利回りは実に平均値の2倍以上です。配当は株式値下がり時のクッションにもなり、投資に対する安心感を得やすいのも人気の理由でしょう。

(出所: JPX 2023年6月平均利回り https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/03.html)

それでは、米国株の配当利回りがどのくらいかご存じでしょうか?

配当利回りの高低の判断に使われることの多い10年物国債利回りは、日本国債の約0.5%に対し、米国国債は約3.8%と3%を上回る差があります。東証プライム上場企業の利回りから考えれば、5%を超える配当利回りを期待されるかもしれません。

実は、NYダウの平均利回りは約2.2%、S&P500は約1.6%、NASDAQ100は約0.7%に過ぎず、いずれも東証プライム市場を下回ります。金利差を考慮すれば、日本株の水準を大きく下回っていると言えるでしょう。米国企業は自社株買いに熱心なことに加え、成長率の高い企業では、株主は配当還元よりも、追加投資によるビジネスの成長に期待する面が強いため、配当利回りは低めになりがちです。(出所: 投資の森 https://nikkeiyosoku.com/stock_us/dividend/, Slick Charts https://www.slickcharts.com/nasdaq100/yield)

そんな事情もあり、足もとの高配当株のパフォーマンスは、日本株に軍配が上がります。(出所: NEXT FUNDS ETFゼミ 「高配当株ETFの魅力の日米比較」 https://nextfunds.jp/semi/article921.html)

日本株の一直線の上昇に対し、米国株が足もと横ばいとなっている大きな理由は、利上げによる配当利回りの魅力の低下です。米国では急速な利上げの結果、株価の変動リスクがないMRFなどの商品でも十分に魅力的な利回りを得られます。下のチャートは、高配当株の配当利回りと、短期金利の差を示しています。日本株の配当利回りが短期金利を5%程度上回るのに対し、米国株では足もと短期金利を下回っており、高配当株の魅力が低下している状況と言えます。

(出所: NEXT FUNDS ETFゼミ 「高配当株ETFの魅力の日米比較」 https://nextfunds.jp/semi/article921.html)

高配当株にはいわゆるバリュー株に多く、大きな値上がりを期待しづらい点も考えると、日米の高配当株の値動きの差も理解しやすいでしょう。

もちろん個別株で見れば、米国株にも配当利回りが高い銘柄が存在します。

NYダウの構成銘柄で言えば、通信のベライゾン(VZ)は6.97%、化学のダウ(DOW) 5.66%、半導体製造のインテル(INTC) 5.48%などです。

(出所: トウシル楽天証券 2022/12/23 https://media.rakuten-sec.net/articles/-/40051?page=3)

また、配当利回りもさることながら、驚かされるのは米国企業の長期的な増配へのコミットメントの強さです。例えば生活用品メーカーのP&G(PG)は68年、化学のスリーエム(MMM)は63年、医薬品のジョンソン&ジョンソン(JNJ)は60年間連続増配を続けています。(出所: Fintos!  https://fintos.jp/page/91813)

配当水準は保証されたものではありませんが、これだけ長期間に亘り配当が増え続けているという事実には安心感を感じます。米国高配当株投資の真の魅力は、配当増加による配当利回りの上昇期待と長期投資への安心感にあるのかもしれません。

2. 米国高配当ETF

そんな米国株を代表する高配当企業に簡単に投資する方法は、高配当株式指数(Index)に連動するETFに投資することです。

例えば、「S&P500 配当貴族指数 (S&P500 Dividend Aristodrats)」という株式Indexがあります。S&P500に上場する企業のうち、25年以上連続増配している企業のみを対象としたもので、現在66銘柄で構成されています。米国を代表する大企業であり、長期に亘る増配実績を維持している企業で構成されたポートフォリオへの投資なので、安心感は高いと言えそうです。

配当貴族指数に連動するETFの例として、世界最大のETFとして前回紹介したSPYと同じく、ステートストリートが運営する「SPDR 米国高配当株式ETF」Ticker: SDYのような商品が上場しています。日本でもGlobal X社が、「Global X S&P500 配当貴族ETF (2236)」という商品を上場しています。

それ以外でも、約2.8兆円($19.9bn)のファンド規模を誇るブラックロックのDVYは、ダウジョーンズ米国インデックスのうち配当利回りの高い100銘柄で構成された代表的な高配当株ETFです。

また、日本のネット証券の売買ランキングで上位に入る人気のETFとして、S&P500採用銘柄のうち、配当支払上位銘柄80社に投資する9,000億円($6.5bn)超の規模を誇るステートストリートのSPYDや、バンガードのVYMなどが挙げられます。人気のETFは、管理手数料が低い点もおススメのポイントです。

数多い米国高配当ETFから投資するETFを選ぶ際は、組み入れ比率の大きい銘柄や手数料に加え、ファンド規模の大きさを比べてみるといいでしょう。

3. 予算別投資戦略

米国高配当株式に投資できる主なETFを予算別に紹介します。数字の証券コードが入ったETFは東証に上場する商品であり、日本の9:00~15:00に取引が可能です。アルファベットのTickerが入ったETFは、米国上場の海外ETFで、NY市場の取引時間中に取引可能です。

東証には、Global X社の2本のETFが上場されています。いずれも1口、1,000円程度での売買が可能なことから、米国高配当株投資を手軽に体験でき、NISAの空き枠を埋めるにも使い勝手がよさそうです。

残念ながら、2本とも上場して時間が経っていないため、1年分の配当実績がなく、配当利回りを示すことができません。2253は、7月13日に上場したばかりの商品ですが、株式に加え、商業不動産を保有するREITや、パイプラインなどを保有するMLPも投資対象とするユニークな商品です。

5,000円程度の予算があれば、S&P500から高配当銘柄を抽出した前述のSPYDへの投資が可能です。

 ・10,000円以下で投資可能な主な米国株ETF

証券コード

商品名

売買単位

信託報酬

7/13終値

最低投資金額

配当利回り

2236

Global X S&P500 配当貴族ETF

1

0.275%

1,074

1,074

N/A

2253

Global X スーパーディビデンド-US ETF

1

0.475%

999

999

N/A

SPYD

SPDR Portfollio S&P500 High Dividend ETF

1

0.07%

$38.04

5,325

4.79%

※売買単位:口数 
※信託報酬:税抜、年率 
※価格は円

25,000円の予算があれば、海外ETFの選択肢が大きく増加します。先に述べた通り、配当利回りのみならず、組入れ銘柄や、手数料率、ファンドの規模などを比べて判断してください。

東証上場の商品では、NEXT NOTEのETNへの投資が可能です。ETNはETFとよく似た商品ですが、ETFでは運用会社が実際に資産を購入して保有している一方、ETNでは実際の資産の購入はなく、運用会社の信用に依拠した債券である点に違いがあります。

自由度が高いため、インデックスとのトラッキングエラーが発生しにくい点、現金分配がなく、税金の源泉徴収考慮後の配当を再投資する点に特徴があります。配当の再投資は優れた点ですが、管理手数料がやや高めな点がやや残念です。

・25,000円以下で投資可能な主な米国株ETF

証券コード

商品名

売買単位

信託報酬

6/30終値

最低投資金額

配当利回り

2044

NEXT NOTES S&P500 配当貴族(ネットリターン) ETN

1

0.85%

24,835

24,835

N/A

DVY

iShares Select Dividend ETF

1

0.38%

$115.61

16,185

3.71%

HDV

iShares Core HIgh Dividend ETF

1

0.08%

$101.10

14,154

4.18%

SDY

SPDR S&P Dividend ETF

1

0.35%

$123.41

17,277

2.60%

VIG

Vanguard Dividend Appreciation Index Fund

1

0.06%

$162.20

22,708

1.91%

VYM

Vanguard High Dividend Yield Index Fund

1

0.06%

$107.03

14,984

3.14%

       

※売買単位:口数 
※信託報酬:税抜、年率 
※価格は円

4. まとめ

今回は高配当米国株に投資するETFを紹介しました。配当利回りの点では日本の高配当株投資に劣るものの、長期的な配当へのコミット、インデックス構成企業の成長期待などには大きな魅力があります。投資の幅を広げる意味からも、ETFを使った米国高配当株投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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