執筆:西村 麻美


2022年も下半期に入ったが、今年ほど地政学的リスクが高まり、世界経済、資本市場に影響を与えた年はないように感じる。
2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻からエネルギー価格高騰に端を発し、西側各国でコスト・プッシュ・インフレになり、米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月にゼロ金利政策を解除して25bps(0.25%)利上げ、5月に50bps(0.5%)の利上げを行った。
6月10日に発表された米国の5月のCPI(消費者物価指数)が市場予想を上回った。これを受けて、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では75bps(0.75%)の大幅利上げを決定し、パウエルFRB議長は7月のFOMCでも大幅利上げを行う公算が大きいとコメントした。2022年末までに政策金を3.4%まで上昇すると見込まれている。
次いでスイス中銀が50bps(0.5%)、イングランド銀行が25bps(0.25%)の利上げを発表した。欧州中央銀行(ECB)は11年振りに7月に50bps(0.5%)の利上げをするとの見方が強く、日本を除く主要国ではインフレ抑制のために金融引き締めに転じている。
一方、金融緩和を継続する日本では、TOPIX(東証株価指数)の年初来騰落率は▲4.96%と比較的に堅調に推移している。円安、中国上海のロックダウン解除は日本企業にとってポジティブであり、東証プライム銘柄は2023年3月期も最高益を更新すると予想される企業も多くあり、増益基調である。
金利先高観からグロース株市場からは資金流出が続き、ナスダック総合指数の年初来騰落率は▲26.36%、東証マザーズ*の年初来騰落率は▲32.33%である。

*東証マザーズは4月に東証グロースに再編されたが、指数のデータの継続性を考慮して東証マザーズを使っている。


東証マザーズの指数は下落基調であるが、中には明らかに下げ過ぎているよう銘柄もあり、短期的なキャピタル・ゲインを目指さないのであればグロース株を長期的なキャピタル・ゲイン目的で安く買えるチャンスなのではないだろうか?
2020年に始まったコロナ対策の大規模な流動性供給でマザーズ市場に資金が沢山流入していた時には考えられない程グロース株のバリュエーションが低下している。グロース株の下落局面は短期的なキャピタル・ゲインを目指さないのであれば、テンバガー候補の銘柄を割安で買える大きなチャンスであると言える。
一番難しいのは底値の見極めである。グロース株が割安であるかを見極める方法はPEG(Price Earnings Growth)レシオを使う事が多い。
一般的に使われるPERに成長性の要素を加味したバリュエーションである。PEGレシオで割安とされる水準(1倍以下)で買うという方法もある。


PEGレシオ=PER÷純利益の成長率(EPSの成長率)

2倍以上割高
1~2倍適正水準
1倍以下割安

このレポートでは、近年IPOをしたグロース株で金利先高観測からファンダメンタルは良好にも関わらず必要以上に売られ過ぎているテンバガー候補銘柄をピックアップし紹介したいと思う。


銘柄選択の基準として

•時価総額は300億円以下。
•中長期的に大きな成長が見込める事業を手掛けている事。
•上場後黒字を維持している事。
•営業利益率が高い事、ここでは営業利益率12%以上とした。
•PEGレシオが適正水準か割安である事。

以上の条件を基に長期的にテンバガーを達成しそうな銘柄を5銘柄東証グロース市場から選択した。


Sun Asteriskの株価情報

株価
(2022/6/29)
上場来高値比 企業HP
992円 ▲79.2% https://sun-asterisk.com/

Sun Asterisk 企業概要

2013年3月創立。2020年7月東証マザーズ上場。Sun Asterisk(Sun*)は顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)による新規事業開発を支援。新規事業を立ち上げたい企業や既存事業の拡大をしたい企業を顧客とし、デジタルを活用した新たな事業創造のために、事業アイデアの創出からプロダクトの開発と運用まで、ワンストップでサービスを提供している。SIerやソフトウェア開発企業とは違いデジタル技術を活用する価値創造に特化している。また、IT人材の発掘、育成、紹介も行っている。2021年9月にデジタルコンテンツ制作を手掛けるTrys(トライス)を買収、100%子会社とした。Sun*の取引先企業はソフトバンク、LINE Pay、楽天、NEC、伊藤忠、ローソン、LIXIL、イオンリテールといった一部上場企業からマネーフォワード、Voicy等のベンチャー企業までと幅広くクライアント数は200社以上。


Sun Asterisk 株価関連情報

公募価格700円
初値1,209円(2020/7/31、公募価格+72.7%
上場来高値4,765円(2020/9/3、上場来高値時の予想PER207.8倍
上場来安値829円(2022/6/20、上場来安値時の予想PER20.9倍
年初来騰落率▲52.82%
株価
(2022/6/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
992円 374億円 66.7% 22.4% 12.8%
予想PER PER EV / EBITDA PEGレシオ 配当利回り
25倍 5.4倍 18.3倍 1.6倍 N/A


Sun Asterisk ビジネスモデル

サービスラインは①クリエイティブ・エンジニアリング事業と②タレント・プラットフォーム事業の二つがある。

①クリエイティブ・エンジニアリング事業

クリエイティブ・エンジニアリング事業は400を超える新規事業立ち上げ、DXの実績を有している。エンジニア、UXデザイナー、ITコンサルタント、ビジネスコンサルタント、事業開発ディレクター、プロダクトオーナーなど、1,500名以上のプロフェッショナルが新規事業立ち上げやDXをサポートしている。新規事業の立ち上げにはDXの経験豊富なコンサルタントが要件定義を行う。プロダクトのリリースはエンジニアやUI/UXデザイナーが行い、事業立ち上げ後は1,300名のエンジニアが在籍するベトナムの開発拠点で開発、運用を行う。売上原価の90%は人件費が占める。売上高として計上されるのは完成品に対する対価ではなく、エンジニアの稼働時間に応じた対価である。
SIerが手掛けるシステム構築等のようにプロジェクトの工数が事前見積もりより長くなり赤字といった事がない。また、解約率が低い事も特徴である。2015年1月から2022年3月までの87ヵ月間の月次平均解約率は3.44%と低い。Sun*の提供しているサービスはクライアントにとって資産価値のあるインフラ的なストック・ビジネスである為に解約率が低く、またサービスに満足して継続していると推測される。クリエイティブ・エンジニアリング事業は長期の顧客事業の成長と対価が連動するストック型ビジネスである。Sun*では3か月以上継続する契約をストック型、3か月未満の契約をフロー型と分類している。
ベトナムに開発拠点を持っている理由であるが、ベトナムではIT人材の育成を国策としていて、IT関連の教育を展開している大学が30校近くあり、エンジニアになる人は毎年5万人ほどいると言われている。Sun*ではベトナムの理系大学と産学連携してIT人材を育成しており、開発子会社で雇用、あるいは日本企業に紹介も行っている。

②タレント・プラットフォーム事業

タレント・プラットフォーム事業はIT人材の発掘、育成、紹介をしている。国内で運営するプログラミング・スクールの卒業生を企業に派遣、紹介している。またASEANの大学、ブラジルの大学と提携し、大学にプログラムを提供し、プログラムの卒業生を日本企業に紹介し、採用時の成功報酬を収益計上する。


Sun Asterisk 業績推移、KPI

過去3年の通期及び直近の四半期業績は以下の通りである。

(出典:Sun Asterisk社有価証券報告書)

直近3期の通期決算における当期利益のCAGR(年平均成長率)は46.9%と高い。月次平均顧客単価(ARPU)及びストック型顧客数は順調に成長している。先月発表された2022年12月期1Qの決算であるが、売上高は前年同期42.9%増の26億円と四半期売上として過去最高を記録した。しかし、上半期の先行投資を販管費で計上とベトナムの子会社の為替差損1億3,000万円を営業外費用で計上(円建て預金40億5,900万円の期末為替レートによる評価替えで為替差損が発生)したために営業利益は同26.7%減の3億500万円、四半期純利益は同59.5%減の1億3,400万円であった。大幅減益となった1Q決算が発表された5月11日の翌日12日はストップ安売り気配となり、以来株価は右肩下がりとなり6月20日に上場来安値の829円を付けた後は20%位戻している。
果たして1Q決算はそんなに悪い決算結果であっただろうかと決算内容を精査したが、そこまで悲観的になる必要はないと考えている。上場して2年の成長企業であり、先行投資をするのは将来の成長の為に必要な事である。海外に子会社を持っている以上は急速な円安による為替差損を計上するのは避けようがないリスクである。また、タレント・プラットフォーム事業の売上高が前年同期比3.1%減の288万円であったが、これは入国制限と入社月のズレによるものであった。ファンダメンタルはあくまで好調である。1Qは売上は四半期売上として過去最高を記録し、月次平均顧客単価は前年同期比19.4%増と順調に伸びており、ストック型売上も同32.3%と順調に伸びている。Sun*のビジネスモデルは、ユーザー中心設計であり、クライアントとは継続的な品質向上、事業成長という共通の目的がある。小さい予算でスタートするためにプロダクトやサービスの成長と共に収益が向上していくという特徴がある。また主力の新規事業のゼロイチの立ち上げとクリエイティブの組み合わせはプレーヤーが少なくほぼ競合はないと言っても良い。
売上原価の90%が人件費であるが、Sun*のビジネスモデルを考えると業績が赤字に転落する程の設備投資をするとは考えづらい。積極的な人材投資や研究開発投資をしながらも、粗利率50%、営業利益率15%の確保を目指している。1Qの営業利益率に関しては11.7%と目標としている15%を割り込んでしまったが、これは上述したように先行投資とベトナム子会社の開発メンバーの人件費がベトナム・ドン建てであり、ベトナム・ドン/円の為替レートがかなり円安にふれているからである。円安については主要国と日本の金利差によるものであるが、ベトナム・ドンは米ドルの動きと連動する米ドル・ペッグに近く、米ドル/円の動きに近いのが実情であるが、一方的に円安水準が長期的に続くとは考えづらい。


Sun Asterisk 投資判断

DX市場には大別すると二つの要素があり、デジタイゼーション(業務プロセスのデジタル化、コストの最適化、基幹システム刷新等による業務の効率化)とデジタライゼーション(事業のデジタル化、デザイン思考によるアイディア創出)に大別されるが、Sun*のクリエイティブ・エンジニアリング事業は後者のデジタライゼーションである。少し古いデータになるが、マーケット調査会社の富士通キメラ総研によると2019年度では7912億円だった国内のDX市場は、2030年度にはおよそ3.8倍の規模に拡大し3兆425億円に達するとしている。
デジタライゼーションでゼロイチの事業立ち上げから開発、運用をワンストップで提供できる企業は日本国内にはほぼないと言ってよく、競合はいないと考えている。豊富な実績とストック型ビジネスの積み上げで中長期的に高い利益成長が期待できる。またタレント・プラットフォーム事業の海外からの高度IT人材の紹介も国内では高度IT人材は圧倒的に不足しており、ますます需要が高まると思われる。中長期的に高い利益成長が期待できるDX銘柄のSun*の場合バリュエーション的にPEGレシオ1倍割れの割安なレンジまで株価が下がるとは考えづらくPEGレシオ2倍以下であれば良い買い場ではないかと考える。


TDSEの株価情報

株価
(2022/6/29)
上場来高値比 企業HP
1,100円 ▲85.7% https://www.tdse.jp/

TDSE 企業概要

2013年創業。2018年東証マザーズ上場(現在東証グロース)。旧社名はテクノデータサイエンス・エンジニアリング株式会社。AIノウハウをコアバリューとするデータサイエンティストや様々な業界、業務に精通した知識及びビッグデータ活用技術を有するエンジニアをはじめとするプロフェッショナル集団である。国内外の最先端の研究所や大学院で研究の実績があるメンバーが中心となり、理系博士号取得者が多数在籍し、DXを推進しデータ経営を目指す企業の業務改革や新事業創造の支援をしている。NTTデータとあいおいニッセイ同和損保が資本参加し(それぞれ発行済み株式数の7.2%)業務提携をしている。TDSEの取引企業はリクルート、日本生命、あいおいニッセイ同和損保、NTTデータ、東京電力パワーグリッド、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、コニカミノルタ、日立製作所、日本航空、電通国際情報サービス等大手が中心である。


TDSE 主な実績

2013年の創業当初から早稲田大学とビッグデータ活用研究に関する産学連携をしている。2015年より日本マイクロソフトとAzureを利用したIoT分野で協業。2016年フィスコとAI製品「scorobo for Fintech」による銘柄選択レポート提供開始、2017年経済指標予測AI提供開始。(現在はサービス停止)2019年「scorobo for Infrastructure」を活用した社会インフラ向け劣化検知ソリューションを提供開始。同年SBI証券と「scorobo」エンジンを活用したAI 型投資サービスの共同開発で業務提携。2020年東北電力ネットワーク向け架空送電線画像解析AIの導入開始。同年非接触センサーを用いたバイタルモニタリングサービス「ScoroboVital」の実証実験開始。2021年熊本市が「Cognigy」を活用したAIチャットボットを導入し、多言語による観光案内を自動化。2022年はせがわのDX推進支援、AIによる問い合わせ、来店予約の自動対話を実現。


TDSE 株価関連情報

公募価格3,200円
初値6,350円(2018/12/18、公募価格+98.4%
上場来高値7,680円(2018/12/18、上場来高値時の予想PER100.5倍
上場来安値1,040円(2022/2/24、上場来安値時の予想PER16.0倍
年初来騰落率▲14.13%
株価
(2022/6/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
1,100円 24億円 83.3% 9.0% 8.6%
予想PER PER EV / EBITDA PEGレシオ 配当利回り
18.3倍 1.3倍 3.0倍 ▲2.5倍 未定


TDSE ビジネスモデル

TDSEが提供するサービスは①AIノウハウを軸としたコンサルティングサービスと②AI製品等によるサブスクリプションサービスの二つに分類される。

①AIノウハウを軸としたコンサルティングサービス(フロー型)

クライアント企業がビッグデータを活用し、経営課題を解決できるように上流のコンサルティング領域からデータ経営実現に向けた戦略立案を行う。データ解析支援サービスとして上述のコンサルティングサービスにより抽出された課題の分析結果をフィードバックし、解析運用を支援する。また、データ活用人材教育やデジタル戦略システム構築サービスも提供している。

②AI製品等によるサブスクリプションサービス(ストック型)

TDSEではディープラーニング技術など機械学習等を活用した独自のAI製品「scorobo」を多業界向けにサブスクリプションサービスとして提供している。フィンテック領域向け製品「scorobo for Fintech」、デジタルマーケティング領域向け製品「scorobo for Marketing」や「scorobo for SNS」を提供している。自社製品の他に他社AI製品を活用したサービスも展開している。MITメディアラボから誕生したSNS分析AI製品の「Netbase」やChatbotや音声アシスタント等の対話サービスに対して自動応答機能を提供する対話型AIプラットフォーム製品「Cognigy」等である。


TDSE 業績推移

(出典:TDSE有価証券報告書)

2018年の上場以降のTDSEの業績推移である。売上は大きくぶれる事はないが、営業利益のぶれが大きい。2021年3月期は売上は前期とほぼ同じレベルであったが、営業利益は人材の増強やコロナ禍での非対面の営業推進やマーケティングの強化からコスト増となった為に前期比60%減益となった。
しかし、投資有価証券の売却益2億円を特別利益として計上したために当期利益は前期比111%増であった。直近の2022年3月期決算に関してはフロー型ビジネスでは案件の大規模化が進み、またストック型ビジネスではNetbaseの新規顧客獲得が進んだ為に営業利益は前期比4倍と大幅増益となったが、前期は投資有価証券売却益を計上した事から当期利益は前期比22.3%減となった。
なお今期(2023年3月期)の業績予想に関しては売上は前期比17.2%増の20億円、営業利益は同0.9%と微増の2億2,000万円の予想であるが、退任する代表取締役会長の城谷直彦氏に特別功労金として4,000万円を贈呈する予定である為に当期利益はその分減少し、同15.8%減の1億2,400万円の予想である。5月の半ばに前期の決算発表があったが、今期の業績予想が営業利益はほぼ前期比横ばい、当期利益は減益予想と冴えなかった為にズルズルと株価は下げ続けている。


TDSE 投資判断

取材をしてこのレポートを書いている訳ではないのではっきりとは分からないが、一流のデータサイエンティストが多数在籍し、AI、ビッグデータという最も注目される技術を利用した経営サポートを大企業に提供しているが業績の伸びがいまいちであるのは否めない。
AIを経営に活用するのがまだ日本では始まったばかりで本格的な普及に至っていないと考えるべきなのだろうか、あるいは総合的なコンサルティングよりもアクリートやAI CROSSのようにAIを活用したSMS配信サービスなどのように売れるサービスに特化した方がスケールメリットがあり、売上は伸びやすいのであろうか?
時系列のデータを見ると一日の出来高が数千株と流動性が低すぎるので株式分割をして流動性を改善し、IR不足の印象が否めない為に改善する余地は大きそうである。しかし、ポテンシャルは大きく、時価総額が24億円と小さい為に買収される可能性も高く、その際には株価は上昇する為にTDSEは候補銘柄として選択した。


コラントッテの株価情報

株価
(2022/6/29)
上場来高値比 企業HP
832円 ▲58.5% https://colantotte.co.jp/


コラントッテ 企業概要

1997年創業。2021年東証マザーズ上場(現在東証グロース)。磁気式医療機器の卸・小売業。磁石を「N極S極交互配列」にして肩、背中、腰を同時にケアできるサポーターを作成したのをきっかけに医療用具製造許可を取得して医療機器メーカーとしてスタートした。特許やISO取得、海外での医療機器認証も取得しており、海外の販売代理店は韓国、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム、イギリスの8か国にある。また自社運営のECサイト、また国内外のECモールにも出店している。


コラントッテ ビジネスモデル

家庭用磁気治療器の製品開発及び販売を行っている。製造は製造委託先に外部委託している。事業は①コラントッテ事業と②CSS事業の2つの事業に分類されるが、CSS事業はまだ立ち上げ状態である。

①コラントッテ(Colantotte)事業

Colantotteは中核をなす家庭用磁気治療器を展開するブランドで、同製品は装着部位の血行を改善し、こりを緩和する効能・効果を提供する健康用品である。家庭用磁気治療器とは、厚生労働省が指定した第三者認証機関から認証を受けた管理医療機器であります。さらに、韓国での医療機器認証、EUでの医療機器のCEマーキング(製品をEU加盟国へ輸出する際に安全基準条件を満たすことを証明するマーク)及び日本での医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO13485を取得している。製品ラインナップは幅広く首・肩用にネックレスシリーズ、腕用にループシリーズ、腰・背中・膝・肘用にウエアやサポーターシリーズ、その他では枕、インソール、パッチなどのアイテムがある。

商品の価格帯別構成比(2021年9月期時点)

希望小売価格20,000円以上44.6%デザイン性の高い磁気ネックレス
希望小売価格10,000円~19,900円18%磁気ネックレス、磁気ブレスレット等
希望小売価格9,900円以下37.4%磁気ブレスレット、磁気サポーター等

販売チャネルは以下3チャネルを通じている。

•ホールセール(構成比76.1%)
国内はヒマラヤスポーツ、ゼビオ、スポーツオーソリティ、スポーツデポ、アルペン、ビッグカメラ、ヨドバシカメラ等が販売代理店である。海外は代理店は8か国にある。
•リテール(構成比8.1%)
国内に直営店舗18店舗を通じて一般消費者に直接販売。
•EC(構成比15.8%)
日本国内は自社EC、Yahoo!ショッピング、楽天市場、越境EC「Tmallグローバル」「JDワールドワイド」を通じて販売しているが、2021年9月期時点で前年同期比95.4%と高い伸びである。


②CSS(コラントッテ・セーフティ・システム)事業

認知症、独居高齢者の身元確認等が必要な場合の緊急時連絡サービスとしてCSS(コラントッテ・セーフティ・システム)事業を行っている。顧客がCSSに会員登録し、会員固有のID番号及びCSS管理センターのフリーダイヤルが記された緊急時連絡カード、ペンダント、キーホルダーのいずれかを携帯することで、外出先で会員本人が家族等に連絡できない場合でも、警察等からの連絡を受けたCSS管理センターが緊急連絡先に連絡を取るサービスである。2017年1月より月額定額制でCSS事業を開始しており、2021年9月期の当事業の売上高は198万円であった。


コラントッテ 株価関連情報

公募価格1,100円
初値1,385円(2021/7/8、公募価格+25.9%
上場来高値2,005円(2021/7/14、上場来高値時の予想PER39.1倍
上場来安値521円(2022/1/28、上場来安値時の予想PER9.7倍
年初来騰落率18.52%
株価
(2022/6/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
832円 74億円 65.2% 26.87% 15.9%
予想PER PER EV / EBITDA PEGレシオ 配当利回り
12.2倍 3.0倍 6.5倍 0.3倍 1.92%


コラントッテ 業績推移

(出典:コラントッテ有価証券報告書)

コラントッテの業績は順調に拡大している。直近3期の通期決算の当期利益のCAGR(年平均成長率)は15.7%である。2021年9月期に営業利益率は0.24pt低下したが、これは東京オリンピックに合わせてテレビCMを強化した事等による。東京オリンピックでは契約スポーツ選手(卓球の水谷隼選手、伊藤美誠選手)が男女混合ダブルスで優勝したが、二人が身に着けていたコラントッテのネックレスはSNS上で話題になった。今期は北京オリンピックでの契約選手(宇野昌磨選手、鍵山優真選手)の活躍、テレビCMにより更にブランド認知度が向上し、2Q決算において累計売上高は前年同期比33.6%増、累計四半期純利益は同30.3%と成長が加速した。2Q決算が終わり期初計画より業績が上振れした為に通期の当期純利益予想を27.1%上方修正し、6億1,000万円とした。


コラントッテ 投資判断

コラントッテの前期2021年9月期の当期純利益が4億1,000万円で、今期予想が6億1,000万円と45.2%の成長を予定している。現在のコラントッテのPERは12.2倍であり、PEGレシオを計算するとPEGレシオ=12.2÷45.2=0.3倍と超割安である。
家庭用磁気治療器は従来は高齢者向けの商品というイメージであったが、コラントッテの商品はデザイン性が高いアクセサリー・タイプの家庭用磁気治療器が主力商品である。ニッチな市場であるが、健康志向が高まっている高齢化社会ではギフト商品としての需要が高く成長すると思われる。
有名アスリートと契約し、商品を身に着けてもらうという広告宣伝方法は露出が高く費用対効果が高いと推測する。国内のみならずアジアを中心とした海外にも進出しているが、特に中国では大手のECモール二社と契約している事もあり高い成長が期待できるであろう。最近ではワークマンとコラボをして磁気サポーターやウェアを販売するとの発表があったが、メディアでも大人気のワークマンとのコラボはコラントッテにとってのメリットは大きい。
株式市場ではあまり投資家に人気になる銘柄ではないが、利益率も高く着実に成長するであろう銘柄なので超割安なレベルで買っておくのは魅力的であると考える。


トヨクモの株価情報

株価
(2022/6/29)
上場来高値比 企業HP
1,336円 ▲88.1% https://toyokumo.co.jp/


トヨクモ 企業概要

2010年創業。サイボウズの100%子会社としてクラウドサービス事業を手掛ける為にサイボウズスタートアップスとして設立。2014年MBOによりサイボウズより独立。2020年東証マザーズ上場。(現在東証グロース)法人向けクラウドサービスの開発/提供、新サービスの開発と運用に従事している。ITの大衆化を志し、簡単、低価格にこだわる。提供しているサービスは安否確認サービス、サイボウズのkintoneと連携するクラウドサービス、スケジューラー等である。


トヨクモ ビジネスモデル

トヨクモのサービスはクラウドサービスである事から顧客の申し込みから利用までオンラインで完結する。インターネットでの直接販売の比率が2022年1Q時点で63%を占める。提案営業は行わず、ノンカスタマイズのパッケージで無料の使用期間を提供し操作を覚えてもらい契約してもらうというビジネスモデルであるために1契約当たりの獲得コストが低い。サポートはHPの充実、電話、メールにより行う。個別にカスタマイズを行わないためにサポートの負担も少なくなっている。間接コストを最小限に抑えた効率的な事業運営により安価なサービス提供が可能になっている。初期費用はかからず、利用期間に応じて料金が発生するビジネスモデルであり、有償契約数の増加により継続的に収益が積み上がるストック型ビジネスである。

主力商品は「安否確認サービス2」とサイボウズ社の提供する業務アプリケーション構築サービス「kintone」と連携した6種類のクラウドサービスを開発・提供している。この他に社内のスケジュール管理と社外との日程調整が可能なスケジューラーを展開している。「安否確認サービス2」はITreview Grid Awardで8期連続最高評価を受賞した。「安否確認サービス2」は後発であるが、2,800社、150万ユーザーが利用している。kintone連携サービスは契約数6,500を超えるNo.1のkintone連携サービスである。チャーン・レート(解約率)は全体の平均が2022年1Q時点で0.68%であったが、kintone連携サービスは1%をわずかに超える位、「安否確認サービス2」は0.2%台位であった。


トヨクモ 株価関連情報

公募価格2,000円
初値9,020円(2020/9/24、公募価格+351.0%
上場来高値11,190円(2020/9/28、上場来高値時の予想PER714.5倍
上場来安値1,254円※(2022/6/20、上場来安値時の予想PER35.4倍
年初来騰落率▲33.19%

※2020年12月末を基準日として1対2の株式分割を行った為に上場来安値は分割前基準であれば2,508円である。

株価
(2022/6/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
1,336円 135億円 69.0% 21.8% 18.3%
予想PER PER EV / EBITDA PEGレシオ 配当利回り
37.7倍 8.8倍 21.1倍 1.5倍 0.52%


トヨクモ 業績推移

(出典:トヨクモ有価証券報告書)

トヨクモの業績は順調に拡大している。直近3期の通期決算の当期利益のCAGR(年平均成長率)は58.4%と高い。2019年12月期に12.75%だった営業利益率は2021年12月期に26.52%と約2倍に改善した。トヨクモの高い当期利益の伸びは契約獲得コストの低さ、30%近くと高い営業利益率、1%以下のチャーン・レートのストック型ビジネスである事から新たな契約が積み上がれば利益も伸びるという構造である。法人向けサービスであるものの、簡単、初期費用不要な低価格のサービスであるために中小企業でも取り入れやすく、特に災害が多い日本では安否確認サービスは必要度が高いサービスである。安否確認だけではなく、情報集計の機能、掲示板機能、特定のメンバーだけでのディスカッション機能も備えておりこれからも高い伸びが期待できるだろう。


トヨクモ 投資判断

2022年12月期の会社発表の業績予想によると当期純利益は前期比25.5%増の3億6,000万円である。しかし、おそらく上振れするのではないかと思っている。数日前にトヨクモの有償契約数が10,000件を突破し、2年前の5,000件から倍増したとの発表があった。5,000件の契約獲得までに9年8ヶ月を要したため、4倍以上のスピードで契約数を伸ばした。1Qに今までkintoneを通じてオンライン上でコミュニケーションが取れなかった相手との情報共有をノーコードで実現する機能「Toyokumo kintoneApp認証」を「フォームブリッジ」と「kViewer」に追加した。これにより、従来kintoneでの情報共有が困難だった外部の顧客や会員に対して、メールアドレスさえあれば情報共有・コミュニケーションを取ることが可能となった。前期末にリリースされた社内外の人達とのスケジュール共有を簡単にする日程調整ツールの「トヨクモ スケジューラー」も好調で有償契約の獲得に寄与している。
トヨクモの場合は広告宣伝費を年間5億円と予算を決めており、ストック売上が伸び、チャーン・レートが1%以下と低い為に、営業外損失や特別損失などがない限り利益は30%~40%以上伸びるイメージを持っている。現在の株価でPEGレシオを計算すると1.5倍である。今期通期の当期利益が上振れする可能性もあり、現在のPEGレシオ1.5倍でもかなり割安であり、中長期的に見て魅力的な買い場であるように思える。業務アプリは競合の多いマーケットではあるが、トヨクモの簡単、低価格にこだわる戦略は裾野が広く中小、零細企業でまだまだ普及する余地は大きいと思われる。
また災害の多い日本において安否確認サービスの需要は大きい。商品の海外市場向けバージョンはまだ本格的にリリースしていなかったが、kintoneの海外での成長から一部商品の英語版のリリースを始めたばかりである。簡単、低価格にこだわったトヨクモの商品は海外市場でも一定の成功をおさめる事ができるのではと期待する。


CINCの株価情報

株価
(2022/6/29)
上場来高値比 企業HP
1,238円 ▲70% https://www.cinc-j.co.jp/


CINC 企業概要

2014年創業。2021年東証マザーズ上場。(現在東証グロース)CINCはデジタルマーケティングの分野で日本語のキーワードを独自のデータ収集技術により取得し、機械学習やAIの研究開発に取り組むデータソリューション・カンパニーである。自然言語処理技術やAIを用いたSaaSプロダクトの開発・提供するソリューション事業とビッグデータをもとにしたコンサルティングの提供のアナリティクス事業を展開している。


CINC 株価関連情報

公募価格3,080円
初値3,950円(2021/10/26、公募価格+28.25%
上場来高値4,120円(2021/10/27、上場来高値時の予想PER95.6倍
上場来安値1,157円(2022/6/23、上場来安値時の予想PER25.5倍
年初来騰落率▲38.47%
株価
(2022/6/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
1,238円 41億円 72.7% 16.9% 12.8%
予想PER PER EV / EBITDA PEGレシオ 配当利回り
27.5倍 3.0倍 10.5倍 1.7倍 N/A


CINC ビジネスモデル

CINCの事業は①ソリューション事業と②アナリティクス事業から構成される。

①ソリューション事業

ソリューション事業では「Keywordmap」「Keywordmap for SNS」を主軸にマーケティングにおける調査、分析、運用を支援するソフトウェアの開発・販売をSaaS型で行っている。「Keywordmap」シリーズはCINCが運営するクローラー(Webサイトの情報を収集する自動巡回プログラム)やデータサービスプロバイダーを通じて取得したデータを自然言語処理、機械学習、深層学習技術と統計学を用いて解析を加えながら分析用のデータを提供するプロダクトである。市場分析、競合調査、改善点抽出までweb戦略に必要となる調査分析の効率化支援ツールである。「Keywordmap for SNS」は消費者の潜在的な欲求、購買行動を促す隠れたニーズの分析、アカウントの傾向把握、投稿管理といったSNSマーケティングに必要な情報の抽出とアカウント運用の最適化を実現する業務効率化支援ツールである。「Keywordmap」シリーズはマーケターのプロとして業務を推進するアナリティクス事業のコンサルタント及びデータアナリストに日々活用されており、彼らの声を新サービスの開発や新機能開発に取り入れて進化を遂げている。

②アナリティクス事業

アナリティクス事業では「Keywordmap」シリーズを活用し、ビッグデータの解析を基盤としたマーケティングソリューションを提供している。CINCのデータアナリストが「Keywordmap」シリーズが保有するビッグデータを中心に多量で多様なデータを定量的、客観的に調査・分析し、クライアントの市場における需要、供給の状況や競合他社の戦略について的確に把握することで、クライアントのデジタルマーケティングの戦略立案、施策実行、効果測定までを統合的にサポートしている。


CINC 業績推移

(出典:CINC有価証券報告書)

CINCの2020年10月期は期初の段階では積極投資を行う予定であったところにコロナ禍に突入してしまい新規顧客の獲得が計画を下回り、投資削減が充分でなかった。事業別ではソリューション事業は赤字を計上した。これは2019年にリリースしたKeywordmap for SNSの売上が充分に上がらなかった一方でサーバー代、新規人員採用の人件費等の固定費が嵩んだ事等から赤字となった。2020年10月期の決算は例外的であるために直近3期の当期利益のCAGRを計算するのは適切ではないだろう。しかし次の期はしっかり成長路線に戻っている。先日発表した2022年10月期2Q決算結果(累計)は売上高は前年同期比46.4%増の8億5,200万円、営業利益は同25.7%増の1億3,500万円、四半期純利益は同22.0%増の8,600万円であった。通期の業績予想に対して四半期純利益の進捗率は57.3%と順調である。


CINC 投資判断

6月13日に2Q決算を発表し、決算内容自体は悪くなかったが、ソリューション事業の6カ月平均解約率が上昇し、直近で2.4%と2021年の平均1.5%前後からかなり悪化した事が嫌気され6月14日は株価は売られ込まれて前日終値比11%安まで下落したがその後は値を戻した。解約率に関してはCINCでは既にカスタマーサクセス(CS)・チームの人員の拡充、CS工程の削減、CS品質をモニタリングして改善提案を行う等の施策を実行しているために6月以降の解約率は低下する見込みである。解約率を1%台に抑える事が出来ればCINCのプロダクトは利益率が高く、デジタルマーケティングとビッグデータ、AIの相性は経営コンサルティング的なビジネスよりも良く、これからも高い伸びが期待できる。デジタルマーケティングとAIの組み合わせの似たようなサービスを提供している企業はあるものの利益を出し続けている企業は少なく、CINCは経営的に優れていると言えよう。CINCの現在のPEGレシオは1.7倍であるが、1.0倍まで株価が下がるとは考えづらく2倍以下であれば魅力的な買い場であると考える。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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