【IIJの決算ポイント】

法人の旺盛なDX需要により今期も最高益更新予定!

IIJの株価情報

株価

(2022/9/7)

時価総額

自己資本比率

ROE

ROIC

4,645円

4,197億円

46.7%

14.9%

12.0%

PER(実績)

PER(予想)

PBR

配当利回り

EV/EBITDA

26.75倍 

23.97倍

3.98倍

1.26%

 7.1倍

 

IIJ:2023年3月期1Q決算結果

売上高582億円前年同期比9.8%増
営業利益50億円同15.3%増
四半期純利益44億円同26.6%増

最高益を更新した前期に引き続き法人の旺盛なDX需要に支えられ好調な1Q決算であった。営業利益率は前年同期比0.41pt上昇の8.64%となった。前期に引き続き法人の高いDX需要によりNWサービス(除くモバイルサービス)、SI構築、SI運用保守等のトップライン成長により順調に推移した決算であった。NWサービス、SI共に粗利率が前期4Q比で若干低下したが期替わりコスト増の要因によるものであった。

【NWサービス】

IPサービス95.2億円前年同期比1.1%増
アウトソーシング(セキュリティ、ネットワークサーバー等)109.4億円同15.1%増
WAN (広域網ネットワークサービス)66.8億円同3.5%増

前期4Qに引き続きネットワーク更改等の複数年にわたる中規模の複合案件の受注積み上げをした。1Qの獲得件数は9件で35億円であった。2Q以降順次売上に加算される。案件は事業法人向けセキュリティ案件、行政情報基盤システム構築、大手金融機関向けインターネットゲートウェイ強化案件等である。2022年6月より クラウド接続サービス「IIJプライベートバックボーンサービス/Smart HUB」を提供開始し、NWサービス群の複合価値が一層向上する見込みである。アウトソーシングのうちセキュリティ売上は前年同期比22.2%増の61.5億円であった。

 

【モバイル事業】

法人モバイル売上26.3億円前年同期比12.4%増
MVNE売上24.3億円同▲14.7%
IIJmio(個人モバイル)売上53.1億円同▲1.5%

競合変化のなか個人モバイルの獲得ペースが向上し、予算を上回った。楽天モバイルの0円サービス廃止により個人向けMVNOの申し込みが急増した。法人はNWカメラ等IoT用途需要継続積み上げで売上、回線数共に伸長した。1Q22末 モバイル回線数合計は 361.6万(+11.8万QoQ)だったが、 うち個人は+3.6万QoQ(4Q21末 +1.7万QoQ)、法人モバイル(除くMVNE)は +8.3万QoQだった。MVNE(IIJモバイルMVNOプラットフォームサービス 他MVNOへのサービス販売)は新年度接続料改定の転嫁による期初単価低下の影響があり、低下度合いは想定通りであった。

 

【SI事業】

SI構築売上(一時売上、機器販売を含む)76億円前年同期比11.7%増
SI構築受注額108億円同23.1%増
SI構築期末受注残高 156億円同40.7%増
SI運用保守売上166億円同19.1%増
SI運用保守受注額231億円同79.2%増
SI運用保守期末受注残高668億円同18.4%増

 

受注環境は強く、SI構築は1Q22受注 +23.1%、1Q22末受注残 +40.7%だった。FY21に買収、連結子会社化したSIerのPTC社(シンガポール)は予算超過でスタートし、1Q22の売上は 22.3億円、営業利益は 1.0億円であった。受注案件は キャンパスネットワーク更改案件が複数、インターネットゲートウェイ強化案件が複数、 Office365導入等のオフィスIT案件が複数、 大手製造業向け情報システム部門業務フルアウトソース案件、
大手建設事業者向け基幹システムリプレイス案件、 大手金融機関向けNWインフラ受託 等であった。

 

近年は NWサービス群、SIの総合力で複数年が確定のネットワーク案件を継続して獲得している。前期4Qに受注した案件は10~50億円強の案件を5件受注し、期間総額は100億円超になる見込みである。契約期間は3~4年。(NWサービス売上が中心) 案件は都立高校向けインターネット接続環境、全国税務署向けWAN接続等のNW更改・共通基盤構築運用等であった。1Qに受注した案件は2億円強~8億円規模を9件、期間総額は約35億円になる見込みである。契約期間は3~5年。(NWサービス売上が中心)案件は事業法人向け大型SASE案件 複数、大手金融機関向けNWインフラ受託、官公庁向け行政情報基盤システム構築等である。

 

持分法適用関連会社のディーカレットについては2022年2月1日付で暗号資産事業を譲渡し、立ち上がりつつあるデジタル通貨事業にリソース集中・注力する方針である。3Q21は通常分に譲渡関連損失4.8億円を加算で損失は増加し、4Q21はのれん相当額減損11.8億円を計上したが、4Qで譲渡関連損失は終わった。1Qのディーカレットの損益は▲7,800万円であった。

IIJ:2023年3月期予想

通期の業績の計画は従前予想を維持した。1Qの決算発表と同時に10月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割をすると発表したので、EPS、配当金の金額は期初予想より変わった。

 

売上高2,500億円前期比10.5%増
営業利益 272億円同15.5%増
当期利益175億円同11.7%増
EPS96.89円
一株当たり配当金58.51円

 

今期も最高益更新を予定している。複数年にわたるNWサービス、SIの複合案件が増加している。IIJの売上の約72%はストック売上でありスケールメリットで構造的にマージンが拡大する為に最高益を更新する予定である。

アナリストによる投資判断

8月5日の決算発表当日に年初来高値の5,520円をつけたが、週末を挟んで8日月曜日は一転して売られ、8日の終値は5日の終値比7.2%下落し4,715円でひけた。NWサービス、SIの粗利率が前期4Q比で若干低下した事、またNW、SIの複合案件が前期4Qに獲得した案件売上が100億円超だったのが、1Qは35億円と半分以下になった事による失望売りが一部あったのかと推測する。しかし、IIJは業界屈指のインターネット関連技術とサービス開発力を誇るネット接続の草分け企業であり、法人DX需要から業績は安定的に成長するだろう。株価バリュエーションは予想PERが23.97倍、3.98倍、EV/EBITDAが7.1倍と割高感は全くない。

執筆日:2022年9月7日

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執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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