【銘柄注目ポイント!】
出品数減、購入頻度減少に加えて不正利用の発生で危機的状況か!?
株価 (2022/6/2) |
時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
---|---|---|---|---|
2,122円 | 3,406億円 | 10.6% | N/A | N/A |
PER (実績) |
PER (予想) |
PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
58.2倍 | N/A | 9.66倍 | N/A | N/A |
2022年6月期第三四半期決算
メルカリの2022年6月期第3四半期決算(累計)の結果は
売上高 | 1,097億円 | (前年同期比42.7%増) |
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営業損益 | ▲46億8,600万円 | (同赤字転落) |
四半期純損益 | ▲77億800万円 | (同赤字転落) |
3Q単体の決算結果は
売上高 | 385億円 | (前年同期比34%増) |
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営業損益 | ▲29億1,200万円 | (同30億円減) |
四半期純損益 | ▲49億8,000万円 | (同44億円減) |
メルカリUSの収益認識の会計方針変更の影響で売上高が増加した。
会計方針変更の影響を除外した3Qの累計の売上高は前年同期比14%増の326億円だった。
2Qの売上高は前年同期比22%増の316億円だった。
売上高は過去最高を達成したが、不正取引の影響もあり3Qはグループ全体で16億円の補填費用を計上した事、また広告宣伝費等の投資を強化した結果前四半期と比較して営業損失が拡大した。
セグメント別の状況は以下の通りである。
メルカリJP事業
売上高 | 224億円 | (前年同期比11%増) |
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調整後営業利益 | 54億円 | (同20%減) |
調整後営業利益率 | 24億円 | (同10pt低下) |
GMV(流通取引総額) | 2,326億円 | (同12%増) |
MAU(月間アクティブ・ユーザー数) | 2,069万人 | (同9%増) |
GMVは出品を促進するキャンペーンの実施やWEBからの購入比率を2Qの8%から3Qの9%へ上昇させるなど、マーケティングとプロダクトの両面からGMVの成長を促進した。
MAUは積極的な新規ユーザの獲得に加え、出品・購入・決済(メルペイ決済)の3つのアクションを促すクロスユース施策に伴うリテンションの改善によって着実に増加した。
調整後営業利益率は前年同期比10ptと大幅に低下したが、この要因は不正利用により支払手数料が3%(7億円)、広告宣伝費(3億円)増加した。
不正利用の影響がなかった場合の調整後営業利益率は28%だった。
今回の決算発表で不正利用について会社側は初めてふれたが、昨年末から不正利用が増加していて、GMV及び費用に大きく影響していると言及した。
メルカリJPにおいては、主に不正に入手したクレジットカード情報を使用してメルカリで商品を購入するケースが発生しており、早期の被害沈静化、予防の観点より広く利用制限を実施した。
本来利用制限の対象にすべきでないユーザにも利用制限がかかってしまった結果、GMVが数%減少し、また、この不正に対する補填金は10億円となった。
メルペイにおいては、フィッシングにより6億円の費用増となった。
電話番号認証の強化やEMV-3Dセキュアを業界内で先駆けて導入したことに加えて、不正ログイン対策や不正利用の検知システムの強化、ユーザへの注意喚起等を行っている。
決済時の追加認証では、生体認証も含め今後も積極的に不正利用対策を実施していく予定である。
不正利用関連の費用については、4Qは3Q同様の費用が発生する予定であるが、来期以降の不正利用に関連する費用は減少する見通しである。
不正利用の影響もあり、メルカリJPは期初に目標としていたGMV成長率+20%以上、調整後営業利益率30%を下方修正し、GMV成長率+13%前後、調整後営業利益率26%前後とした。
下方修正に至った要因として二つの要因をあげた。
一点目は想定を上回る外的環境の変化がある。
昨年10月以降の緊急事態宣言の解除以降在宅時間が減少した事により出品が鈍化した。
出品者と購入者のバランスの悪化により購入頻度が減少した。
二点目は前述した不正利用の増加である。
不正利用に関する対策は既に様々な施策を取っているが、出品の鈍化の解決の為にメルカリShopsの事業者から出品を増加する予定でいる。
メルカリUS事業
売上高 | 9,230万ドル | (前年同期比5%減) |
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調整後営業損益 | ▲4,040万ドル | (前年同期▲2,050万ドル) |
GMV | 2億9,900万ドル | (前年同期比6%減) |
MAU | 566万人 | (前年同期比11%増) |
メルカリUSでは認知度の向上を目的としたマーケティング施策が奏功し、新規ユーザ数が伸長、1月単月でMAUが過去最高の590万人を達成した。
前期3Qは米国政府による現金給付の影響でGMV成長率が前年同期比+99%と大きく成長した反動に加えて、インフレなどの外部要因もあり、前年同期比 GMV成長率は▲6%で着地した。
GMVが前年同期比でマイナス成長となった影響で、売上も前年同期比▲5%となった。
調整後営業損益の赤字増加の要因18.4百万ドルを投資した大規模なブランディング活動を実施したこと等によるものである。
米国においても不正利用は起きたが、対策を実施した結果、金額的な影響は軽微なものに留まった。
メルカリUSにおいても期初の目標であったGMV+20%から▲3%へと下方修正した。
下方修正に至った要因であるがインフレによる単価の上昇と配送料金の値上げによる購入鈍化と同一プラットフォームにおける年間 600ドル以上の売上に対して新たに確定申告が課される税制の変更が 2022年1月より施行された事であると会社はコメントしている。
メルカリUSの戦略としては、配送料金の値上げや税制の変更による負担を軽減する施策に加えて、主にcasual sellersと呼ばれるユーザ層の強化に向けて、出品の簡便化などのプロダクト施策や、新規出品者の利用を促進するCRM施策などを総合的に推進する予定である。
メルペイについては「決済」「与信」「ふえるお財布」の3つの分野で事業を展開している。
2021/6より与信を中心とした収益基盤の強化に着手しており、1Qに続き、3Qも調整前営業黒字となった。
4Qも調整前営業黒字を想定しており、収益基盤が確立したと考えている。
今回の決算より売上高推移の開示を始めた。
メルペイのトータル売上高は前年同期比40.7%増の63.9億円、メルカリ外売上高(メルカリJPからの決済業務委託関連の売上高を控除した売上高)は同66.2%増の37.9億円だった。
メルペイの与信分野の進捗であるが、本人確認済み利用者数が与信事業の成長に貢献するとメルペイでは考えており、本人確認比率は3Q末時点で85.6%であった。
ソウゾウでは、「メルカリShops」の本格提供を2021年10月7日より開始し、提供している機能が限定的な中でも、中長期の成長に必要な出店数や出品数が着実に増加した。
本格提供後6ヶ月で累計出店数が20万を突破するなど、好調に利用が進捗した。
出品カテゴリーについても、メルカリユーザから購入希望の高い食品やハンドメイド、アパレルなどが人気カテゴリーとなっており、想定通りの需給のマッチングを創出している。
中長期での成長及びメルカリJPとのシナジー創出を意識した機能改善にフォーカスするとともに、新規出店獲得に向けた規律ある投資を予定している。
2022年6月期予想
会社発表の2022年6月期通期業績予想は
売上高 | 1,470億円 | (前期比38.5%増) |
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営業損益 | ▲45億円 | (赤字転落) |
当期最終損益 | ▲86億円 | (赤字転落) |
アナリストによる投資スタンス
2Qの決算発表時に稼ぎ頭のメルカリJPにおいて出品数の鈍化、購入頻度の減少が問題視されたが、3Qに入りロシア、ウクライナの紛争による原油高を始めとしたインフレが特にメルカリUSにおいて単価の上昇と配送料金の値上げによる購入鈍化という形になって影響が既に出ている。
またメルカリJPにおいては不正利用による被害がかなりの額になっており、利用制限を実施した事による機会損失が発生したようである。
会社側は4Qで事態は収束すると見ているが、もし収束しなければメルカリの信用が損なわれてユーザー離れに繋がるリスクもある。
メルカリの手数料は10%と競合に比べて高いが会社側の分析の出品数の減少の原因は在宅時間の減少ではなく、手数料が安い競合他社へユーザーが流れている可能性も否定できない。
メルカリの成長は鈍化したと見ている投資家もいるためか4月28日に3Q決算を発表してからも株価は右肩下がりである。
通期予想は赤字のためにPBRしか計算できないが、現在の株価でPBRは9.66倍である。
投資アイデア
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プロフィール
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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