執筆:西村 麻美

ローツェの株価情報


株価
(2022/7/20)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
8,210円 1,419億円 50.1% 33.7% 14.1%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
11.1倍 7.8倍 2.8倍 1.34% 5.5倍


2023年2月期1Q決算

ローツェの2023年2月期1Q決算の結果は

売上高217億円(前期比50.2%増
営業利益50億円(同76.6%増
四半期純利益51億円(同90.1%増

増収増益の好決算だった。主力の半導体関連装置は、製造装置需要の大幅拡大に加え、部品納期の長期化の影響から早期発注傾向が強く、受注高及び受注残高は高水準を継続した。FPD関連装置は前期末の受注増加により納入が増加し売上が増加した。ベトナム生産工場の生産効率の改善と為替メリットにより営業利益率は前年同期比3.5pt上昇の23.2%となった。

地域別売上の内訳は中国が72億円と53億円の米国を抜き首位になった。次いで台湾の35億円、韓国の22億円、日本の18億円であった。開示資料ベースだと明記されていないが、中国はおそらく浙江晶盛機電であると思われる。アプライド・マテリアルズ、TSMC、サムソン・ディスプレイは長い事上位顧客を継続している。

セグメント別内訳では半導体関連装置の売上は前年同期比84%増の182億円、FPD関連装置の売上は同10%増の22億円、ライフサイエンス事業は同48%減の4,400万円となった。

半導体関連装置の売上に関しては、中国向けはN2パージウエハストッカの売上増加、製造装置メーカー向けEFEMの販売が好調であった。アプライド・マテリアルズ向けの売上は前四半期比若干減少したが、好調が続いた。TSMC向けではウエハソータの販売が好調であった。

受注に関しては1Qの受注高は前四半期を約14億円上回る高水準であった。1Q末の受注残高は過去最高を更新した。生産能力を徐々に増強しているが、部品長納期化の影響により長い製品納期は依然変わらない状況である。


2023年2月期予想

会社発表の2023年2月期の業績予想は従前予想を維持した。

売上高887億円(前期比32.4%増
営業利益247億円(同56.4%増
当期利益182億円(同41.6%増
EPS1,051.16円
期末配当金1株当たり110円

前期に引き続き最高益更新を予定している。

事業環境は、中国でのロックダウンやロシア・ウクライナ情勢の影響などにより足元の事業環境に減速感が広がっている。しかし、5G関連、IoT、データセンター、スマートフォンの高機能化、メタバースなどの新たな半導体需要がある。カーボンニュートラルやSDGsの観点から、グリーン投資による半導体需要は継続している。経済安全保障の観点から各国・地域で半導体産業への大型補助金投入、各社半導体工場の設備投資計画は進行中である。また自動車や家電製品等への半導体不足が継続している。

事業環境は変化しているが、顧客からの発注に特に影響なく、主力搬送装置の受注・販売は堅調な推移を見込んでいる。半導体をはじめ各種部品の入手困難な状況、長納期部品の調達コスト増加傾向は継続している。この状況に対応するためにローツェではグループ内での生産体制を強化している。ベトナムはA10新工場建設と従業員の採用を継続し、中国の子会社は現地でEFEM生産、量産体制づくりを加速している。

ベトナムA10工場建設工事の進捗状況は予定通り進捗しており、2022年8月末に竣工予定、9月稼働開始の予定である。生産はユニット製品(ロボット・ロードポート・アライナなど)、生産能力2倍を予定している。

中国子会社でのレンタル工場の工事は上海市のコロナ感染拡大対応のロックダウンに伴い1か月半中断し、6月より再開し、9月半ばに引き渡し、10月に稼働開始予定である。

TSMCの熊本進出に合わせてローツェの九州工場のクリーンルームエリアを二倍にする拡張工事を2022年8月から11月末に予定している。九州工場ではTSMCのみならず国内半導体設備投資需要に対応の予定である。


アナリストによる投資スタンス

7月11日の決算発表の翌日に株価は前日終値比9%下落した。決算内容は良好で受注残高が過去最高を更新し、大口顧客からの受注は拡大しているが、米国株市場でハイテク株を中心に下げた事から日本株も半導体銘柄を中心に下落した影響での急落であった。

しかし、フィラデルフィア半導体指数(SOX)はその後上昇基調であり、ローツェの株価も上昇している。会社予想では今期も最高益を更新する予想であり、生産能力増強や中国子会社でのEFEMの組み立て等必要な施策を講じているが、株価は業績よりも米国の金利動向に左右される動きになっている。半導体銘柄全般に株価バリュエーションは低下しているが、ローツェの予想PERは7.8倍、PBRが2.8倍、EV/EBITDAが5.5倍と超割安である。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社pafin
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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