株価 (2022/6/7) |
時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
---|---|---|---|---|
959円 | 1,525億円 | 59.3% | 27.0% | 29.7% |
PER (実績) |
PER (予想) |
PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
14.1倍 | 15.0倍 | 3.5倍 | 2.09% | 7.5倍 |
2022年3月期通期決算
ワコムの2022年3月期通期決算の結果は
売上高 | 1,088億円 | (前期比0.2%増) |
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営業利益 | 130億円 | (同2.9%減) |
当期利益 | 109億円 | (同7.1%増) |
EPS | 67.98円 | ー |
一株当たり配当金 | 20円 | ー |
4Q単独の決算結果は
売上高 | 276億円 | (前年同期比18.3%増) |
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営業利益 | 6億8,400万円 | (同7.9%増) |
四半期純利益 | 13億2,200万円 | (同60.8%増) |
通期決算は売上高、当期利益ともに最高益を更新した好決算であった。
営業利益は4Qに棚卸資産評価損を計上した為に粗利益率低下で僅かに減少した。
4Qの四半期純利益が前年同期比60.8%増と大幅増益となったのは営業外で12億5,900万円の為替差益を計上した事が主な要因であった。
通期の営業利益率は前期比0.4pt低下の12.0%であった。
ブランド製品事業
セグメント売上高 | 526億円 | (前期比7%減) |
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セグメント利益 | 87億円 | (同4%減) |
プロ向けディスプレイ製品やペンタブレット製品、モバイル製品は増収であった。
一方で、エントリーモデルのディスプレイ製品や中低価格帯ペンタブレット製品は減収であった。
米国対中追加関税の売上原価への影響低減 (一部モデルを中国国内製造から他国へ変えた取り組み等により、一部対米輸出モデルにおいて米国税関国境取締局から対中追加関税措置を適用されないことが認められ、その措置に基づいたもの、約+9億円) 等を受けながらも、売上減少や積極的な研究開発投資等によりセグメント利益は減少した。
テクノロジーソリューション事業
セグメント売上高 | 561億円 | (前期比8%増) |
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セグメント利益 | 89億円 | (同4%減) |
一部の製品は中国以外で生産するようになったが、殆どの製品を中国国内で生産している為にサプライチェーンの制限があったにも関わらず、過去最高の売上を達成した。
AESテクノロジーはOEM提供先メーカーからの需要増により増収であった。
EMRテクノロジー他はOEM提供先の製品ポートフォリオの変化等を受けながらも増収を達成した。
棚卸評価損の計上等による粗利率低下や積極的な研究開発投資等によりセグメント利益は減少した。
2023年3月期予想
会社発表の2023年3月期通期業績予想は
売上高 | 1,280億円 | (前期比17.7%増) |
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営業利益 | 137億円 | (同5.2%増) |
当期利益 | 102億円 | (同6.9%減) |
EPS | 64.16円 | ー |
研究開発費 | 67億円 | (同22%増) |
設備投資 | 35億円 | (同112%増) |
減価償却 | 17億円 | (同19%増) |
今期の業績予想は、売上は二桁増予想であるが、当期利益は若干の減益を予想している。
この業績予想の前提として、テクノロジーソリューション事業において、生産サプライチェーンにおける主要部品の調達リスクを一定程度考慮、ブランド製品事業において、ロシア・ウクライナ情勢に鑑み同地域への直接的な出荷による売上は未計上の予定、部材価格上昇の影響を一定程度考慮、テクノロジー・リーダーシップ推進のため積極的な研究開発投資を想定、販管費の最適化は継続としている。
また、想定為替レートとして1USD=120円、1ユーロ=132を前提としている。
今期の事業ごとの予想は
ブランド製品事業
セグメント売上高 | 630億円 | (前期比20%増) |
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セグメント利益 | 90億円 | (同3%増) |
通期の売上高は、下期を中心とした製品ポートフォリオ強化により増加を見込んでいる。
通期のセグメント利益は、ポートフォリオ強化、将来に向けた積極的な研究開発投資等を勘案し、売上レベルに比べて利益レベルが低い。
テクノロジーソリューション事業
セグメント売上高 | 650億円 | (前期比16%増) |
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セグメント利益 | 99億円 | (同11%増) |
通期の売上高は、生産サプライチェーンにおける主要部品の調達リスクを一定程度考慮しつつ、主要顧客との強い関係を維持・発展させるとともに、デジタルペンの新たなユースケースの開拓と実装を図る予定である。
また将来に向けた積極的な研究開発投資等を勘案し、売上レベルに比べて利益レベルが低い。
「Wacom Chapter 3」において株主還元は重要な経営課題として認識しており、2022年5月13日~2023年3月31日の間に自己株式を400万株を上限として(発行済み株式総数の2.52%、20億円を上限とする予定)取得する予定である。
また、2022年5月26日に200万株の自己株式の償却を行った。(消却前の発行済株式総数に対する1.20%)
アナリストによる投資スタンス
5月12日の決算発表の翌日にワコムの株は最高益更新が評価されて上昇し、前日終値比13.7%も上がりしばらくは1,000円台を保った。
しかし、今期の業績予想が若干ではあるが減益を予定している事、また製品の生産地がメインに中国である事からサプライ・チェーンの問題などが嫌気されて再び900円台に下落した。
現在の株価でバリュエーションは予想PERが15.0倍、PBRが3.5倍、EV/EBITDAが7.5倍と割高感は全くない。
ワコムはクリエーター向けのタブレットでは広く知られるが、その他に教育のDX、行政、金融機関、医療機関などでのワークフローのDXに注力しており、実績を積み上げている。
特に教育のDX、ワークフローのDXの市場成長余地は高く長期的成長に期待して保有するのに適した銘柄であると言えよう。
投資アイデア
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プロフィール
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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