執筆:西村 麻美

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの株価情報


株価
(2022/2/18)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
1,867円 1.1兆円 25.3% 15% 7.4%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
22.0倍 19.7倍 3.1倍 0.88% 13.5倍


2022年6月期第2四半期決算

PPIHの2022年6月期第2四半期決算(累計)の結果は

売上高9,177億円(前年同期比7.6%増
営業利益436億円(同11.5%減
当期利益301億円(同7.6%減


第2四半期単独の決算結果は

売上高4,722億円(前年同期比8.7%増
営業利益276億円(同5.5%増
当期利益177億円(同9.6%増

累計決算では増収減益だったが、2Q単独決算だと増収増益であった。ゲルソンズ新規連結、国内外の新規出店、業態転換が貢献した事に加えて2Qでは人流の回復、マーチャンダイジング強化やイベント需要の積極的な取り込みが奏功し、既存店売上も昨年対比で回復した。(上期累計+100.3%)


営業利益は累計では前年同期比▲11.5%であったが、2Q単独では同14%増となり四半期ベースでは過去最高を記録した。要因は特にディスカウントストア事業で期初にあげたPB強化やプライシングの最適化といった施策が進捗し、粗利率が改善した事が貢献した。またゲルソンズの新規連結も貢献した。


事業セグメント別の状況は以下の通りである。

国内ディスカウント事業

累計売上高5,532億円(前年同期比4.6%増
累計セグメント利益171億円(同12.5%増

人流回復に加えて期初より注力してきた各種施策も進捗し、苦戦した1Qを補い増収増益で着地した。化粧品、酒類等のMD(マーチャンダイジング)強化、ハロウィン等のイベント需要の取り込みにより上期の既存店昨対は100.9%へ回復した。2Qの粗利率は1Q比0.2%増、前2Q比0.3%増。MD強化の取組の結果、化粧品の売上は2Q累計で前2Q比122%、酒類の売上は2Q累計で前2Q比108.5%となった。


GMS事業

累計売上高2,441億円(前年同期比5%減
累計セグメント利益120億円(同32.6%減

対1Q比で売上、営業利益ともに前年比マイナス幅は縮小した。1Qに不振であった衣料品も昨年対比プラスに転じるなど回復基調にある。既存店昨年対比は上期累計98.8%(1Q98.1%=>2Q99.5%)であったが、コロナ前の水準を超えて着地した。(2019年2Q累計比2.1%増)2Qには価格訴求を強化し、客数は回復基調になった。(客数昨年対比は1Q99.1%=>2Q99.9%)堅調な食品に加えて、11月下旬から衣料品も昨年対比プラスに転じ粗利率も前年比マイナス幅は縮小した。(1Q▲1.5%=>2Q▲0.4%)個店経営強化に向けた人材育成も引き続き注力し、接客レベルの認定制度を新設。高単価、高粗利商材を接客販売できる人材を育成している。New GMSへのリニューアルは2Qで3店舗実施した。


海外事業

累計売上高1,259億円(前年同期比76.8%増
累計セグメント利益80億円(同42.9%増

海外事業はゲルソンズの新規連結に加えて既存事業も堅調に推移し増収増益を達成した。アジア事業では7~9月期に2店舗出店した。新規出店と並行して日本の食を更に現地マーケットに浸透させるコンテンツ作りも強化している。引き続き自社出店に伴うカニバリゼーションの影響や一時的な出店コストはあるが、既存店の営業利益率は10%以上を維持している。北米事業は堅調に推移した。2Qで総利益率が改善した事で営業利益は2Q累計で前年比フラットに戻した。ゲルソンズが増収増益に寄与した。(のれん償却費控除前)売上トップラインが伸長すると共に原価高騰へも売価管理の徹底などで対応し粗利を確保し、販管費も予算内にコントロールした。PPIC(PPIHが運営する農産物の輸出促進組織)の取り組みとしては鮮度向上、コスト改善に向け産地直送エリアを拡大した。(2Qに北海道からシンガポール、香港へ直送開始した。)2Qにマカオとタイのバンコク東部に出店した。マカオでは出店してから3週間の間に5.8億円の売上を計上した。バンコク東部では出店してから1か月で2.5億円の売上を計上した。


PB強化は着実に進捗し、売上構成比は14%強まで伸び、粗利率は0.4%上昇した。2月のブランド・リニューアル以降約1,100 SKU(stock keeping unit)をリリースした。PB売上に占めるリニューアル商品の割合は既に三割強まで拡大した。メディアでのプロモーションや店頭での販売強化との相乗効果によりPB売上は2Q累計で前年比120%を達成した。


2022年6月期予想

通期の業績は従前の予想を維持した。

売上高1兆8,700億円(前年同期比9.4%増
営業利益850億円(同4.5%増
当期利益576億円(同7.0%増

1Qの減益を2Qにかなり取り戻した。ディスカウント事業はかなり回復したが、問題はGMS事業である。GMS事業で客数は2Qにかなり回復したが、下半期は粗利率向上に注力する予定である。地域商圏での競合店と戦い抜くために各エリアに更に権限委譲できる体制に変更する予定である。海外事業に関しては堅調であり、北米事業に関しては為替のメリットも上乗せされ、アジア域では新店オープン効果がかなり大きく、中長期にわたって成長余地が大きいだろう。


アナリストによる投資スタンス

2Qで業績がかなり回復したために決算発表後は基本上昇基調である。問題は国内のGMS事業であるが、個店ごとの裁量が他企業より大きく、現場主導でかなり早いペースでPDCAを回すために、ここから大きく悪化するとは考えづらい。アジアを中心に積極出店による中長期的な利益成長のストーリーは不変である。現在の株価で予想PERは19.7倍、PBRは3.1倍、EV/EBITDAは13.5倍と成長企業としては割安な印象を受ける。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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