執筆:西村 麻美

サイゼリヤの株価情報


株価
(2022/4/19)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
2,316円 1,132億円 59.9% 2.0% N/A%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
63.8倍 14.7倍 1.3倍 0.78% 5.9倍


2022年8月期第2四半期決算

サイゼリヤの2022年8月期第2四半期決算(累計)の結果は

売上高692億円(前年同期比10.1%増
営業利益▲4,600万円(前年同期は▲7億8,200万円)
四半期純利益50億円(同▲5億6,500万円)

2022年1月にまん延防止等重点措置が発出され、売上高が減少したことなどにより、営業利益は前回予想を下回る結果となった。

営業利益は赤字であったが(しかし前年同期よりも赤字は縮小)、補助金収入が75億円あり、また為替差益を4億2,800万円計上したために四半期純利益は黒字を確保する事ができた。
売上原価率が0.2pt改善したために売上総利益がその分上昇し63.1%となり、販管費率は1.0pt改善した。

店舗数は国内純減10店舗、海外純増13店舗の純増3店舗の1,556店であった。
国内店舗数は1,079店舗、海外店舗数は477店舗、海外店舗数比率30.9%であった。
国内の全店の上半期の累計売上高、客数、客単価は105.3%、103.2%、102.0%だった。
国内の既存店の上半期の累計売上高、客数、客単価は104.3%、102.2%、102.1%だった。


セグメント別業績の内訳は以下の通りである。

売上高営業利益
国内サイゼリヤ460億円▲27億円
豪州(製造子会社)22億円▲3,900万円
海外店舗(アジア)232億円26億円
連結消去▲21億円1億2,600万円
合計692億円▲4,600万円

上記の内訳を見ると売上高は国内店舗が海外店舗の倍位あるが、営業黒字なのは海外店舗のみである。

海外店舗の営業利益率は11.2%であるが、国内はコロナの感染拡大が始まり緊急事態宣言を出すようになってからはずっと営業赤字である。
2020年8月期第2四半期決算では営業黒字を確保したが以降は赤字を計上し続けている。
しかし、コロナ禍になってからもテイクアウトや商品開発等の努力により客単価は伸びている。


サイゼリヤの国内店舗の業績推移

2020年8月期第2四半期決算売上高574億円営業利益14億円
2020年8月期通期決算売上高953億円営業損益▲56億円
2021年8月期第2四半期決算売上高437億円営業損益▲33億円
2021年8月期通期決算売上高862億円営業損益▲72億円


2022年8月期予想

会社発表の2022年8月期の業績予想は

売上高1,480億円(前年同期比17.0%増
営業利益36億円(前期は▲23億円
当期純利益77億円(前期は336.1%増
EPS158.36円
年間配当金1株当たり18円

第2四半期が終わった時点で通期の業績予想を従前予想より修正した。
売上高を1.3%、営業利益を48%、当期純利益を10.5%それぞれ下方修正した。
それでも営業レベルでは黒字を確保する予定である。


通期業績予想の内訳は以下の通りである。

国内店舗海外(店舗、豪州製造子会社)
売上高1,030億円450億円
既存店売上前年比119.2%97.3%
営業利益0億円アジア34億円
豪州製造子会社2億円
店舗数純増2店舗純増27店舗
粗利益率62.1%

※為替の前提レート:AUD80.18、EUR129.69、USD109.90


サイゼリヤは製造直販システムを確立して20年の優れた経営の外食チェーンであり、ほぼ全ての食材を自社内で調達製造し、物流も自社で賄っている為に他の外食チェーンのように昨今の円安による製品原価の急増は避けられると考える。

しかし、原油価格の高騰により店舗及び加工工場での光熱費増加、及び配送トラックのガソリン代の増加は避ける事が出来ない。
場合によっては更なる下方修正もあり得るだろうと思われる。


アナリストによる投資スタンス

創業のポリシーである低価格にこだわり過ぎて経営的に苦しくならないかが懸念材料であり、他のファミリーレストランチェーンに比べてあまりに低価格過ぎるので全品一律10%値上げなどの施策をとってもよいのではないかと個人的には思う。

現在の世界的なコストプッシュ・インフレは短期的に解消するとは思えず、低価格にこだわる経営からの転換が必要な気もする。
また、サイゼリヤは上海に152店舗持っており、2022年8月期第二四半期時点で上海の店舗が全海外店舗の約半分の営業利益を稼いでいたために影響は多大である。
今までのところ3週間ロックダウンが続いており、サイゼリヤの店舗も営業停止しているが、ロックダウンの長期化は大きなリスクになりえるだろう。

4月13日に決算発表後、営業赤字が嫌気されて軟調に株価は推移している。
それ以前も2月の下旬のロシアのウクライナ侵攻以降株価は右肩下がりである。
現在の株価で予想PERが14.7倍、PBRは1.3倍、EV/EBITDAが5.9倍とバリュエーションは割安である。


投資アイデア

他の投資家が何に注目しているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。