【銘柄注目ポイント!】
1Qは出荷の後ろ倒しにより低調な決算だったが、2Qに会社計画を達成するか!?
株価 (2022/8/10) |
時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
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44,410円 | 6.9兆円 | 70.4% | 37.2% | 33.8% |
PER (実績) |
PER (予想) |
PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
15.8倍 | 13.2倍 | 5.3倍 | 3.78% | 8.7倍 |
2023年3月期1Q決算
東京エレクトロンの2023年3月期1Q決算の結果は
売上高 | 4,737億円 | (前年同期比4.8%増、前四半期比16.1%減) |
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営業利益 | 1,175億円 | (同17.1%減、同30.3%減) |
四半期純利益 | 881億円 | (同12.2%減、同30.5%減) |
売上高は前年同期比微増であったが、四半期純利益は前年同期比12.2%、前四半期比30.5%減と大幅減であった。
売上総利益率は同4.4pt低下、同3.0pt低下の42.3%、営業利益率は同6.6pt低下、同5.0pt低下の24.8%であった。
前四半期比かなりの減収減益についてWebExでの決算説明会で売上減は前倒しの計上に加えて上海のロックダウンに伴う出荷の後ろ倒しにより売上計上時期が2Qずれた為であり、半期計画に変更はないとの説明があった。
営業利益率については1Qの売上高減少に加えて開発投資を継続している事、中期経営計画で目標としていた売上高とROEを2年前倒しで達成した事に対して特別賞与を支給した事等から低下したとの事である。
セグメント別では、SPE(半導体製造装置)は
売上高 | 4,640億円 | (前年同期比6%増、前四半期比15.5%減) |
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セグメント利益 | 1,335億円 | (同12.6%減、同30%減) |
セグメント利益率 | 28.8% | (同6.1pt低下、同6pt低下) |
FPD(フラットパネルディスプレイ製造装置)は
売上高 | 96億円 | (前年同期比31.4%減、前四半期比38%減) |
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セグメント利益 | ▲6億円 | (同137.5%減、同166.7%減) |
セグメント利益率 | ▲6.4% | (同18.2pt減、同12.8%減) |
FPDのセグメント利益がマイナスになった事に関しては物流の混乱等により売上の計上タイミングが一部後ろ倒しになった事も影響している。
SPE部門の地域別売上高は前四半期比マイナスのために全地域で売上減であったが、その中でも中国と韓国のメモリ向けの売上がそれぞれ前四半期比20.9%減、11.3%減と売上減が大きかった。
SPE部門の新規装置のアプリケーション別売上の内訳は、新規装置売上高が前四半期比16.7%減の3,567億円となり、そのうちDRAM向けの売上が前四半期1,070億円、構成比25%から571億円、構成比16%に低下した。不揮発性メモリ向けの売上は前四半期に728億円、構成比17%であった。
売上は若干低下し713億円となったが、構成比は20%と上昇した。ロジックファウンドリ、その他向け売上は前四半期に2,483億円、構成比58%であった。同じく売上は若干低下し2,283億円となったが、構成比は64%に上昇した。
フィールドソリューション売上は前四半期比11.7%減の1,095億円となった。(フィールドソリューションの売上はSPE、FPD等それぞれの製品の売上として計上されている。)
売上変動の大きいSPEの改善案件が1Qは減少した事もあり売上は減少したが堅調に推移した。またパーツビジネス(スペアパーツの提供、リペア等)も顧客の高い稼働率を受けて堅調に推移した。
2022年8月時点のCY2022の事業環境に関する見方を修正した。5月時点では半導体前工程製造装置 (WFE)市場は前年比2割程度の成長を予測していたが、前年比5~15%程度の成長と下方修正した。
マクロ経済の減速懸念、部材不足や物流の混乱による影響、大幅な為替変動を考慮してCY2022の市場想定を修正。
短期的に軽微な調整はあるが、社会のデジタルシフトの進展による中長期的な成長に対する見方に変更はなしとした。
FPD製造装置市場(TFTアレイ工程向け)に関しては変わらず前年比微増を見込んでいる。車載など新たなアプリケーションやモバイルの新技術採用に伴う投資が増加しており、LCDからOLEDへの移行は小型パネルから進行しており、今後は大型パネルへの展開も期待している。
2023年3月期会社予想
売上高 | 2兆3,500億円 | (前期比17.3%増) |
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営業利益 | 7,160億円 | (同19.5%増) |
当期利益 | 5,230億円 | (同19.7%増) |
一株当たり配当金 | 1,678円 | (中間751円、期末927円) |
1Qは売上計上の後ろ倒しにより減益であったが、従前予想の過去最高の売上高、利益達成の見通しを維持した。SPEとFPDの通期売上高の内訳はSPEが2兆2,950億円、FPDが550億円を予定している。前述したように売上計上の後ろ倒しはあったが半期計画に変更はなく2QのSPE売上高は1Q比38.3%増の4,933億円を予定している。(フィールドソリューション売上は含んでいない。)
アプリケーション別のWFE市場環境に関しても5月時点から修正した。ロジック/ファウンドリは前年比 10~20%の増加と見ている。(5月時点では前年比25%増加)
情報通信技術の推進に伴うアプリケーションの拡大により、積極的な投資が継続し、市場成長を牽引、また GAA/Nanosheet、Backside PDNなどの技術開発の進展。
DRAMは前年比5%程度の減少と見ている。(5月時点では前年比15%増加)
PCやスマートフォンの短期的な調整局面により、見方を変更した。サーバー向け高速CPUのリリースによるDDR5の拡大、微細化の進展。不揮発性メモリは前年比 10%程度の増加と5月時点と変わらず。SSDの採用の進捗と搭載容量の増加により投資が拡大。低コスト・大容量化に向け、200層レベルの多層化が進むとの見方をしている。
2019年5月に発表した中期経営計画の財務目標の“売上高 2兆円超、営業利益率 29.9%、ROE 37.2%”を二年前倒しで2022年3月期に達成したために新中期経営計画(2027年3月期まで)を発表した。
財務目標は“売上高3兆円以上、営業利益率35%以上、ROE30%以上”とした。
今期の研究開発、設備投資計画は従前計画を維持した。
研究開発費は前期比20.1%増の1,900億円で注力分野および持続的成長を見据えた投資の予定である。設備投資は同31.1%増の750億円で先端技術開発・増産対応への積極的な投資の予定である。減価償却費は同25.3%増の460億円を予定している。コータ/デベロッパ、サーフェスプレパレーションの開発棟を熊本県合志市に建設予定で費用は300億円を予定している。
エッチング装置の開発棟を宮城県黒川郡に建設予定で費用は470億円を予定している。
投資判断
8月8日の決算発表が低調だった事を受けて翌9日に東京エレクトロンの株価は売り込まれて前日終値比8.2%下落した。8日にナスダックで米半導体メーカーのエヌビディアが5~7月期の売上下方修正を発表した事により急落した事も売りに拍車をかけたようだ。
エヌビディアの画像処理半導体は、ゲームユーザーに好まれる高価格帯PCに使われる主要部品であり、確かにソニーの決算内容を見る限り直近のコロナの巣籠需要からのゲーム需要サイクルはピークアウトした印象を受けた。また東京エレクトロンも決算説明会資料で指摘していたが、PCやスマホは短期的に調整局面にあると思われる。
2Qの業績が会社計画を下回るかを確認するまでは需要減とは言い難いと考えている。地政学的リスクから物流の混乱が起き、出荷計画にずれがあるのは不可避であるが、東京エレクトロンは今期も最高益を更新する可能性は高いと考えている。
しかし、株価パフォーマンス的には米国、欧州の金利動向、マクロ経済に左右されるだろう。8月10日の終値ベースで株価バリュエーションは予想PERが13.2倍、PBRが5.3倍、EV/EBITDAが8.7倍と割安である。
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プロフィール
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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