株価 (2022/5/24) |
時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
---|---|---|---|---|
4,220円 | 5,157億円 | 11.9% | 8.1% | 1.1% |
PER (実績) |
PER (予想) |
PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
10.3倍 | 25.8倍 | 0.8倍 | 3.38% | 15.5倍 |
2022年3月期通期決算
東京センチュリー(TC)の2022年3月期通期の決算結果は
売上高 | 1兆2,779億円 | (前期比6.5%増) |
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経常利益 | 905億円 | (同15.9%増) |
当期純利益 | 503億円 | (同2.3%増) |
増収増益の好決算だった。
売上高は前期比778億円(6.5%)増加し1兆2,780億円、売上総利益は、スペシャルティ事業のACG(Aviation Capital Group)で減損損失が発生する等で減益となったが、国際事業や国内オート事業の増益により同3.0%増加の2,071億円となった。
営業外収益で持分法による投資利益が前期比3倍近くだったために経常利益は同15.9%の905億円であった。
持分法適用会社はNTTとの合弁会社のNTT・TCリースが2QFY20より計上、日本通運との合弁会社の日通リース&ファイナンスを2QFY21より計上し始めた。
特別損益は投資有価証券売却益の減少等により同29億円の利益減少となる11億円の損失、法人税等は同72億円増加の307億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同2.3%増加の503億円となった。
12月決算会社である主な海外子会社・海外関連会社の期中平均の為替レートは、1USD=109.90円であった。
財務面に関しては、株式会社格付投資情報センター(R&I)より取得している格付「A」の方向性が、安定的からポジティブに変更された。
また、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社より取得している格付「BBB」のアウトルックが、ネガティブから安定的に変更された。
資金調達需要が大きいTCにとって格付けの向上は調達コストの低減につながりポジティブである。
事業セグメント別の経常利益およびROAは
国内リース事業分野
経常利益 | 339億円 | (前期比35億円増) |
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ROA | 2.4% | (同0.3pt増) |
国内オート事業分野
経常利益 | 192億円 | (同78億円増) |
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ROA | 3.1% | (同1.3pt増) |
スペシャルティ事業分野
経常利益 | 295億円 | (同88億円減) |
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ROA | 1.3% | (同0.5pt減) |
国際事業分野
経常利益 | 190億円 | (同83億円増) |
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ROA | 3.7% | (同1.6pt増) |
純資産合計は、前期末比1,072億円(15.6%)増加し7,956億円となった。
主な要因は、利益剰余金が331億円増加したこと及び為替換算調整勘定が619億円増加したことである。
この結果、自己資本比率は前期末に比べ1.7ポイント上昇し11.9%となった。
事業分野ごとの要因は以下の通り。
国内リース事業分野
NTT・TCリースおよび日通リース&ファイナンスの持分法による投資利益を主因に増益した。
国内オート事業分野
NCSではリース収益の拡大に加え、中古車マーケット高騰のタイミングを逃さず、機動的な売却実現により過去最高益を更新した。
NRSではレンタカー売上は、前期比横ばいとなったものの、昨年来取り組んでいるコストコントロール、また顧客サービスの向上の施策強化が奏功して黒字転換を実現した。
スペシャルティ事業分野
ACGは航空旅客需要減退に伴う航空会社の業績低迷および航空機の市場価額の下落による減損計上等により大幅減益となり赤字に転落した。(FY20のACGの当期純利益は154億円、FY21の当期純損益は▲71億円、また減損を251億円計上)
不動産は安定的なインカムゲインに加え、売却益増加などにより増益であった。
その他は船舶において、好調な海運市況を背景とした売船収益の増加などにより増益であった。
国際事業分野
アジアではオートリースを中心としたモノ価値に依拠した優良資産積上げなどが奏功し増益であった。
営業投資有価証券の評価損益が62億円増加したことにより増益した。
米州、欧州ではコロナの影響によるIT機器の需要増加を背景にCSIのFMVリースに係る物件売却収益などが堅調に推移し増益であった。
2023年3月期予想
2023年3月期会社計画の業績予想は
経常利益 | 1,000億円 | (前期比10.5%増) |
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当期利益 | 200億円 | (同60.2%減) |
2020年2月公表の新・第四次中期経営計画の最終年度の2023年3月期の目標として経常利益1,300億円、親会社株主に帰属する当期純利益800億円としてきたが、ロシアのウクライナ侵攻による影響を大きく受けたACGの業績が未達となることから下方修正した。
ACGはロシアの航空会社向けに約6億ドル(2022年3月末時点リース機体8機、融資・融資保証の合算)のエクスポージャーを有しているが、リース機体8機については将来キャッシュ・フローの見積りが困難となったため、帳簿価額の全額である約460億円(約3.8億ドル、1USD=120円で換算)を2023年3 月期の特別損失(減損損失)に計上する見込みである。
ACG はロシアの航空会社向けエクスポージャー約6億ドル(2022年3月末時点リース8機、融資・融資保証の合算)に対してこれをカバーする保険を付保しており、保険会社に請求権を行使済である。
しかし、現時点で保険金回収の可能性および回収時期の見通しをつけることが困難であることから、請求済みの保険金につきましては、2023年3月期通期連結業績予想に含めていない。
アナリストによる投資スタンス
既に決算発表前からACGのロシアの航空会社向け投融資残高6億円からの損失計上は株価にある程度織り込まれていたために決算発表後に株価は大きく反応しなかった。
ACGのロシア関連の特別損失は一過性の事であり、アフターコロナ需要を見据えたエアラインによる機体調達の動きが活発化している。
エアラインとのリース契約も順調に進捗している。
オート事業分野では半導体不足のために自動車各社が減産しているなか中古車市場が高騰している中で車両売却により利益の最大化、また国際事業分野も好調である。
NTTグループ、三菱地所、アドバンテッジパートナーズなど、有力パートナーとの協業を着実に拡大しており、中長期的な利益成長のストーリーは不変である。
現在の株価バリュエーションは今期の特別損失計上により予想PERが25.8倍と若干割高に感じるが、PBRは0.8倍とやや割安に感じる。
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プロフィール
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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