執筆:西村 麻美

SBIホールディングスの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

新生銀行TOBが成立し、業績は絶好調で株価は上昇基調

株価
(2022/6/1)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
2,635円 6,461億円 5.2% 49.4% N/A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
2.0倍 N/A 0.7倍 N/A* N/A

*今期の配当金は未定のために配当利回りはN/A。


2022年3月期通期決算

SBIホールディングスの2022年3月期通期決算の結果は

収益7,636億円(前期比41.1%増
税引前利益4,127億円(同194.0%増
当期純利益3,669億円(同352.4%増
希薄化後EPS1,285.90円
一株当たり配当金150円

新生銀行TOB成立後の通期決算は過去最高益を更新する決算であった。(新生銀行が無くても最高益更新であった。)
ROEは前期比33.4pt上昇の49.4%であった。
新生銀行の連結子会社化に伴う当社連結業績への影響額は、2022年3月期第3四半期に計上した負ののれん発生益等に2022年1月~3月分の期間損益を加算した金額(税引前利益2,126億円、親会社所有者に帰属する当期利益2,367億円)となる。
年間の全利益の取り込みは2023年3月期からとなる。


セグメント別の税引前利益は

金融サービス事業2,829億円(前期比227.5%増
アセットマネジメント事業1,460億円(同97.1%増
バイオ事業▲118億円(前期は▲86億円

金融サービス事業の大幅増益は新生銀行を3Qより「金融サービス事業」に含めたことに伴い、負ののれん発生益(買収した企業の純資産よりも取得対価が低い場合の、取得対価と純資産とのマイナスの差額)を2,638億円計上したことの要因によるものである。
アセットマネジメント事業の増益は企業への投資において認識されるFVTPL(Fair Value Through Profit or Loss、資産を公正価値評価した際に、差額を損益にする)で測定する金融資産から生じる収益の増加の為である。
バイオ事業に関しては5-ALA関連商品の需要から増収であったが、税引前利益は損失が拡大した。


SBI証券の2022年3月期通期の業績は、オンラインでの国内株式取引の売買手数料引き下げ等の施策の段階的推進により、委託手数料は前期比9.7%減少となったものの、引受・募集・売出手数料や金融収益など株式委託手数料以外のビジネスが寄与し、営業利益は前期比0.5%増の619億円であった。
しかし営業外で受取利息減、支払利息増、21/3期に計上した関係会社売却益がなくなり当期利益では前期比13.2%減の400億円となった。
口座数は2021年12月にインターネット証券初の800万口座を突破した。
委託個人売買代金シェア44.1%と他社を大きく引き離し一位であった。
IPOの引受実績は、SBI証券の引受関与率は97.5%であった。
オープンアライアンスは順調に進み、顧客の囲い込み戦略は成功している。


住信SBIネット銀行の2022年3月期通期の業績は、住宅ローン事業の堅調な拡大等に伴い、経常利益は前期比828%増の232億円、当期純利益は同448%増の171億円であった。
連結ROE(株主資本ベース)は1.1pt上昇の11.8%となった。  


SBIインシュアランスグループの2022年3月期通期の連結業績は、グループ全体の保有契約件数の堅調な増加により経常収益は前期比2.0%増の884億円、経常利益は同53.8%増の59億円、当期純利益は同16.8%増の8.9億円と全ての段階で過去最高を更新した。
経常利益の増益幅に比べて当期純利益の増益幅が小さいのは固定資産等処分、減損損失等の特別損失を4億1,700万円計上したためである。


SBIホールディングスの格付けであるが、2022年4月に格付投資情報センター(R&I)によりA-(安定的)の格付を取得した。
また、SBI証券の格付けもR&IよりA(安定的)、韓国のSBI貯蓄銀行の格付けも韓国信用評価他一社よりA(安定的)を取得した。
信用格付けの向上により今後の資金調達コストの低減につながるだろう。


2023年3月期予想

2023年3月期の業績予想は、投資・証券関連事業は、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きいため、業績予想の開示は行っていない。


今期の事業展望であるが、金利上昇局面を見据え、銀行分野およびノンバンク分野へ経営資源を傾斜配分し、収益力を徹底強化する予定である。
今後のゼロ金利政策からの転換を見据え、デットビジネスの比重を拡大する。
有価証券運用に関してはインカムゲインを重視し外国債を中心とするポートフォリオへ再構築する。
また海外ビジネスであるが、東南アジアにおいて金融サービス分野への早期投資が実を結んでいるが(カンボジアの中堅マイクロファイナンスを買収し、銀行ライセンスを取得したが、2021年12月期に黒字を達成し、2022年度も黒字トレンドを維持している。
タイにおいてインターネット専業証券会社を設立したが、2021年12月期に通期黒字を達成し、2022年度も引き続き黒字拡大中である。)日本で資金調達をし、東南アジアでの投融資を拡大する予定である。


また買収した新生銀行であるが、SBIグループと新生銀行はノンバンク領域を中心に、国内外でのM&Aを相互連携しながら積極的に推進する予定である。
新生銀行グループが2020年9月に買収したUDC Finance Limited社(ニュージーランド、 オークランド)は、強固な個人・法人顧客の営業基盤と営業体制を有し、個人向けオートローン、法人向け(運輸、林業、建設業等)資産担保ファイナンス、及びオートディーラーに対する在庫ファイナンスに強みを持つ、ニュージーランド最大手のノンバンクであるが、海外事業を新生銀行グループの主要事業へと成長させることを目指す。
新生銀行グループは既に、アジア・オセアニア地域で銀行・ノンバンク事業への参入を推進中である。
また国内に関しては、新生銀行は多様な資産を対象とするストラクチャードファイナンスのノウハウを保有しており、SBI、新生銀行、地域金融機関でプロジェクトの組成、運営に取り組む予定である。


アナリストによる投資スタンス

SBIは買収した新生銀行の連結化で決算を例年より遅い5月27日に発表したが、決算内容、今期の事業戦略共に良かったが株価はあまり反応していない。
金利先高観測で株価はもっと上昇しても良いはずであるが、現在の株価でPBRは0.7倍と割安である。


投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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