【決算ポイント】2Qは金融事業の下支えで黒字を確保。しかし市場環境は厳しく業績的にも厳しいものになりそう。
株価 (2022/11/14) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
2,645円 | 7,200億円 | 4.7% | N/A | N/A |
PER(実績) | PER(予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
1.8倍 | N/A | 0.70倍 | N/A | N/A |
SBIホールディングス:2023年3月期2Q決算結果
収益 | 4,702億円 | 前年同期比40.7%増 |
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税引前利益 | 527億円 | 同▲51.8% |
四半期純利益 | 379億円 | 同▲57.3% |
親会社の所有者に帰属する四半期利益 | 79億円 | 同▲89.7% |
2Q単体の決算結果は
収益 | 2,322億円 | 前年同期比17.9%増 |
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税引前利益 | 292億円 | 同▲11.7% |
四半期純利益 | 103億円 | 同▲78.4% |
売上は上半期として過去最高を更新した。金融サービス事業の収益が大幅に伸長(前年同期比81.3%増の4,031億円)したことが大きく貢献した。連結税引前利益は、金融サービス事業は堅調であったものの、投資事業においてベトナム上場銘柄であるTPバンク(グループ持分比19.9%)等の一部海外上場銘柄の株価下落に伴い今上半期累計で約314億円の公正価値評価損を計上したことに加え、暗号資産市場の低迷や一部取引先の破綻等により、暗号資産事業の今上半期累計の税引前損失が約128億円(内、ロシアでのマイニング事業で約70億円、B2C2で約40億円の損失を計上)となったことが大きく影響し、前年同期比51.8%減の527億円となった。親会社所有者に帰属する四半期利益は同89.7%減の79億円。直接投資先のベトナムTPバンク株式の公正価値評価損が今上半期累計で284億円となったことや、出資比率が高い暗号資産事業子会社における損失が大きかったことが主な要因であった。なお、両損失とも主に海外子会社で発生したものであり、税金費用の引き下げ効果が限定的であったことも影響した。
セグメント別業績の内訳は
セグメント名 | 収益 | 前年同期比 | 税引前利益 | 前年同期比 |
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金融サービス事業 (証券、保険、銀行等) | 4,031億円 | 81.3%増 | 696億円 | 18%増 |
資産運用事業(レオスCW、モーニングS、SBI AM等) | 84億円 | 3.0%増 | 13億円 | ▲31.3% |
投資事業(PE投資等) | 299億円 | ▲63.1% | 48億円 | ▲91.9% |
暗号資産事業 | 205億円 | 31.8%増 | ▲128億円 | 前年同期は▲138億円 |
非金融事業(バイオ、Web3.0関連等) | 144億円 | 41.3%増 | 5.8億円 | 黒字転換 |
証券事業
金融事業セグメント好調の要因はFX事業を展開するSBI証券の子会社SBIリクイディティ・マーケットの貢献が大きい。上半期のドル円相場は、4月1日の1ドル122円台から9月30日の144円台へと急速な円安ドル高が進行し、店頭FX取引の取引金額は業界全体でも前年同期比で約2.4倍に上昇した。SBIリクイディティ・マーケットでも取引が大幅に増加し、上半期として過去最高の147億円の営業収益を達成した。SBI証券は一桁台の減収減益で営業収益は808億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は173億円であった。海外の証券事業は、タイのインターネット専業証券会社は業界最低水準の手数料の提供により初心者及び若年層の取引が拡大し、2021年3月期の通期黒字化以降、収益基盤固めが進み、2023年3月期2Qの累計の税引前利益は2億円となった。カンボジアの唯一の日系総合証券会社はIPOや上場公募社債引受などにおいて、業界のリーディングファームの位置づけで2022年12月期3Q累計税引前利益は2,900万円であった。
銀行事業
新生銀行は、法人営業やストラクチャードファイナンスの残高増に伴う金利収入等の好調を背景に、税引前利益(J-GAAP)は前年同期比11.4%増の305億円、SBIホールディングスにおけるIFRS取り組みベースの税引前利益は約260億円であった。住信SBIネット銀行は、住宅ローン事業を中心に堅調に拡大。J-GAAPでは経常利益が前年同期比35.8%増の143億円となったが、債券評価額の下落の影響を受け、SBIホールディングスにおけるIFRS取り込みベースの持分法による投資利益は前年同期比▲70.7%の13億円となった。韓国のSBI貯蓄銀行は、優良資産拡大に伴い基礎的収支が順調に拡大したものの、市況の悪化に伴う有価証券関連利益の縮小や韓国内の金利上昇による利息マージンの低下により、税引前利益は前年同期比▲20.1%の147億円となった。 住信SBIネット銀行が推進するネオバンク事業を含むBaaS事業(Bank as a service、従来金融機関が提供してきた銀行の機能やサービスをモジュール化し、さまざまな企業が自社のサービスに組み込んで利用できるようにする仕組み)は2023年3月期上半期において3億円の黒字化を達成した。ネオバンク構想の事例はJALとの「JAL Neo Bank」、Tマネー(ツタヤグループ)との「T NEOBANK」、ヤマダ電機との「「ヤマダNEOBANK」、オープンハウスグループとの「おうちバンク」、高島屋との「高島屋NEOBANK」が既に事業を開始しているが、第一生命保険や松井証券など、複数の大手事業者とネオバンク事業を検討している。海外の銀行はロシアにフルライセンスを有する商業銀行を買収し2017年に完全子会社化したが、市場環境や現地の情勢などに鑑み、SBIグループの損益に大きな影響のないよう、大幅に業務を縮小し慎重に事業を運営している。カンボジアではカンボジアの中堅マイクロファイナンスを買収し商業銀行化し、2020年にに銀行としてのフルライセンスを取得し、銀行開業後、初の通期決算となる2021年12月期において黒字化達成した。 変動激しい市場環境において、慎重に良質な貸出残高を積み上げており、2期連続となる通期黒字決算も確実である。2022年12月期3Q累計税引前利益は5億円であった。
保険事業
SBIインシュアランスグループの2023年3月期上半期の連結業績(J-GAAP)は、グループ全体の保有契約件数の堅調な増加により、経常収益は前年同期比9.3%増の479億円、親会社株主に帰属する中間純利益は同29.4%増の14.9億円を計上した。SBIインシュアランスグループの保有契約合計数の推移は2016年3月末~2022年9月末の年平均成長率(CAGR)は15.3%であった。
資産運用事業
資産運用事業セグメントでは、株式・債券市場の市況悪化により、税引前利益は前年同期比で約6億円の減少となったものの、安定的な収益を維持し、収益は前年同期比3.0%増の83億円、税引前利益は同▲31.3%の13億円となった。モーニングスターが子会社化した新生インベストメント・マネジメントの業績は2022年10月から資産運用事業セグメントの業績に反映される。モーニングスターグループは順調に運用資産を拡大し、運用資産残高は4.5兆円に迫る。うち、地域金融機関を中心とした機関投資家からの運用受託額は2兆1,665億円である。(2022年9月末現在)
投資事業
2023年3月期上半期における投資事業は、 TPバンク等の一部海外上場銘柄の公正価値評価により約314億円の評価損を計上したことが大きく影響し、収益は前年同期比63.1%減の299億円、税引前利益は同91.9%減の48億円であった。2023年3月期上半期の投資先の公正価値評価の変動による損益及び売却損益は、海外上場銘柄で大きく評価損を計上しているものの、未上場銘柄の評価益によって黒字を維持した。公正価値評価の変動による損益及び売却損益は上場銘柄は▲200億円、未上場銘柄は267億円であった。ベトナムのTPバンクは、 第2四半期でも
株価低迷により多額の評価損を計上したが、業績は過去最高を大幅更新中である。IPO、M&Aの実績は上半期に11社のIPO・M&Aが実現した。
暗号資産事業
収益は前年同期比31.8%増の205億円であったが暗号資産市場の低迷や一部取引先の破綻等の影響により、暗号資産事業セグメントの税引前利益は▲128億円(内、マイニング事業で約70億円、B2C2で約40億円の損失を計上した。)ビットポイントジャパンを2022年7月1日付で連結子会社化したことにより、2Qより同社の業績が、当事業セグメントの業績に寄与した。B2C2は、先物やオプション取引のサービスを拡充することにより、低迷する暗号資産市況の中での収益力の強化を目指す方針である。 ロシアでのマイニング事業ついては、撤退に向けて協議をしている。
非金融事業
収益は前年同期比41.3%の144億円、税引前利益は黒字転換し5億8,400万円となった。(前年同期は▲59億7,800万円)バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業では、5-ALA関連事業の商品力の強化や、SBIバイオテックのマイルストーン収入などにより利益が拡大した。非金融セグメントではWeb3.0を含む多様な事業を展開する中で、現代アートへの関心の高まりを背景にSBIアートオークションが税引前利益が前年同期比32.0%増3.13億円を計上するなど、既に安定的に黒字化を達成する事業も存在している。
SBIホールディングス:2023年3月期予想
業績予想は、投資・証券関連事業は、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きいため、SBIは業績予想の開示は行っていない。
アナリストによる投資判断
1Qは約300億円強の損失を計上した事により親会社の所有者に帰属する四半期利益は▲24億円と赤字に転落したが、2QはFX事業を展開するSBI証券の子会社SBIリクイディティ・マーケットの大幅増収増益等の金融事業の下支えがあり黒字を確保した。しかし、暗号資産市場、株式市場ともに低迷しており、暗号資産事業、投資事業等は下半期も厳しい環境が継続しそうで株価はしばらく低迷が続くだろう。現在の株価でPBRは0.7倍である。
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執筆者プロフィール
株式会社pafin
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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