【決算ポイント】一過性の損失計上は大きいが、国内外ともに順調に事業ポートフォリオを拡大している。

 

SBIホールディングスの株価情報

株価

(2022/11/14)

時価総額

自己資本比率

ROE

ROIC

2,747円

7,479億円

4.6%

N/A

N/A

PER(実績)

PER(予想)

PBR

配当利回り

EV/EBITDA

1.8倍

N/A

 0.75倍

N/A*

N/A

*2023年3月期の期末配当予想額は未定。

SBIホールディングス:2023年3月期3Q決算結果(累計)

収益 6,856億円前年同期比30%増
税引前利益481億円同▲86.9%
四半期純利益360億円同▲89.4%
親会社の所有者に帰属する四半期利益80億円同▲97.8%

3Q単体の決算結果は  

収益2,153億円前年同期比11.5%増
税引前利益▲46億円赤字転落、前年同期は2,642億円
四半期純利益▲19億6,700万円赤字転落、前年同期は2,569億円
親会社の所有者に帰属する四半期利益1億円前年同期比99.9%減

 

収益は、前年同期比30.0%増の6,856億円となり、3Qとして過去最高を更新。金融サービス事業の収益が大幅に伸長(同92.4%増の6,376億円)したことが大きく貢献した。金融サービス事業の税引前利益は同58.4%減の1,136億円だった。ただし、前年同期の現SBI新生銀行連結子会社化に際して計上した一時要因(負ののれん発生益等1,956億円)の影響を除くと、同46.1%の増益であった。

連結税引前利益は、金融サービス事業は堅調であったものの、投資事業においてベトナム上場銘柄であるTPバンク(グループ持分比率:19.9%)等の一部海外上場銘柄の株価下落に伴い第3四半期累計で約460億円の公正価値評価損を計上した。更に3Qにに海外未上場銘柄において約157億円の為替差損が発生した。加えて、暗号資産市場の低迷や一部取引先の破綻等により、暗号資産事業の第3四半期累計の税引前損失が約173億円(内、マイニング事業で約90億円、
B2C2で約50億円の損失を計上)となったことが大きく影響し、前年同期比86.9%減の481億円であった。(前年同期の現SBI新生銀行連結子会社化の際の一時要因の影響を除くと、同71.9%の減益であった。)

親会社所有者に帰属する四半期利益は同97.8%減の80億円であった。直接投資先のベトナムTPバンク株式の公正価値評価損が第3四半期累計で354億円となったことや、出資比率が高い暗号資産事業子会社における損失が大きかったことが主な要因であった。 

 

セグメント別業績の内訳は

セグメント名収益前年同期比税引前利益前年同期比
金融サービス事業 (証券、保険、銀行等)6,376億円92.4%増1,136億円▲58.4%
資産運用事業(レオスCW、モーニングS、SBI AM等)136億円9.1%増22億円▲25.8%
投資事業(PE投資等)▲26億円赤字転落(前年同期は1,395億円)▲332億円赤字転落(前年同期は1,052億円)
暗号資産事業243億円▲24.9%▲173億円赤字転落(前年同期は34億円)
非金融事業(バイオ、Web3.0関連等)201億円29.6%増▲10億円76億円赤字が縮小(前年同期は▲86億円)

証券事業

FX事業を展開するSBI証券の子会社SBIリクイディティ・マーケットの好調は継続している。為替市場のボラティリティの高まりを背景に、FX関連事業は3Q累計で前年同期比21.7%増の226億円の営業収益を達成した。SBIリクイディティ・マーケット傘下のSBI FXトレードにおいても、積極的なキャンペーン展開などが奏功し、前年同期比で大幅な増収増益を達成した。

SBI証券は営業収益は微増の1,266億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は微減の299億円であった。NISA口座の開設を通じて投資未経験者を多く獲得している。iDeCoの顧客累積数で業界トップである。3Qに外国株式の売買代金は過去最高を更新、収益も高い水準を維持した。三井住友カードとの提携によるクレジットカードでの投資信託積立サービスや全自動AI投資「SBIラップ」等のストック型ビジネスは堅調に推移している。 IPO引受関与率は業界トップの98.7%。3Qより不動産金融事業を強化し不動産投資会社くリアルと資本業務提携を発表した。

銀行事業

SBI新生銀行は、法人業務における貸出残高の増加による金利収益の増加や融資手数料の増加等により親会社株主に帰属する当期利益(J-GAAP)は404億円(前年同期比+8.0%)であった。SBIホールディングスにおけるIFRS取り込みベースの税引前利益は約447億円であった。


住信SBIネット銀行は、住宅ローン事業を中心に堅調に拡大。J-GAAPでは経常利益が増益となったものの、債券評価額の下落の影響を受け、SBIホールディングスにおけるIFRS取り込みベースの持分法による投資利益は16億9,000万円と前年同期比▲73.1%であった。


韓国のSBI貯蓄銀行は、優良資産拡大に伴い基礎的収支が順調に拡大したものの、韓国国内の金利上昇に伴う利息費用の増加や、延滞増加に伴う貸出償却負担の増加などが影響し、税引前利益は211億円と前年同期比▲16.3%であった。

保険事業

SBIインシュアランスグループの2023年3月期第3四半期累計の連結業績(J-GAAP・速報値)は、グループ全体の保有契約件数の堅調な増加により、経常収益は前年同期比7.1%増の703億円であった。経常収益の増加に伴い、経常利益は同14.5%増の52億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同25.6%増の14億円を計上した。 SBIインシュアランスグループ初となる剰余金の配当(初配)として、2023年3月期末に1株当たり配当金10円を予定している。

 

資産運用事業

資産運用事業セグメントでは、株式・債券市場の市況悪化により、税引前利益は前年同期比で
約8億円の減少となったものの、安定的な収益を維持した。モーニングスターは、「モーニングスター」ブランドの返還に伴い、今年度第4四半期中に約80億円の特別利益の計上を見込む。また2023年3月30日付で「SBIグローバルアセットマネジメント株式会社」へ商号を変更する予定である。 新生インベストメント・マネジメントは、 2023年4月1日付でSBIアセットマネジメントを存続会社とする吸収合併方式で解散を予定している。運用資産残高は3Q末時点で4兆4,805億円で、うち2兆1,194億円は地銀を中心とした機関投資家からの受託運用である。

 

投資事業

3Q累計の投資事業は、TPバンク等の一部海外上場銘柄の公正価値評価により約460億円の評価損を計上したことに加え、日銀が金融緩和策の一部修正を決定したことにより急激な円高が進行し、海外未上場銘柄も10-12月に為替変動に伴う約157億円の評価損を計上したことが影響し、収益は▲26億円、税引前利益は▲332億円であった。ベトナムのTPバンクの株式を20%まで追加取得し2023年2月1日付で持分法適用会社化の予定である。

 

暗号資産事業

B2C2は、1Qに発生した一部取引先の破綻や、3Qに米国で連邦破産法第11条の適用を申請した大手暗号資産取引所FTXトレーディング向けの債権に対する引当を計上した影響等により、3Q累計で約50億円の損失を計上したが、本業の収益は好転している。マイニング事業は、暗号資産市場の低迷や一部取引先の破綻等の影響により上半期を中心に一時的な減損を計上した他、暗号資産価格下落によるマイニングの収益性の低下などにより、 3Q累計で約90億円の損失を計上した。なお、ロシアでのマイニング事業からの撤退は完了した。上記の損失に加え、市場の低迷は取引所ビジネスにも影響し、暗号資産事業セグメントの税引前利益は▲173億円となった。

非金融事業

非金融事業の収益は前年同期比29.6%増の201億円、税引前利益は同76億円改善し▲11億円であった。バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業では、SBIバイオテックで前年同期比でマイルストーン報酬が減少したことや、海外事業会社において商品展開に向けた諸経費が増加した影響で減益となったものの、引き続き収益力の安定化を図る予定である。またこれから潮流となるWeb3時代に向けた様々な取り組みを展開し、知名度獲得に向けたブランディング施策にも注力している。 

SBIホールディングス:2023年3月期予想

業績予想は、投資・証券関連事業は、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きいため、SBIは業績予想の開示は行っていない。

 

アナリストによる投資判断

株式市場、暗号資産市場ともに低迷しているが、業績は金融事業を中心として堅調に推移している。海外投資先のベトナムのTPバンク等の株価下落により公正価値評価損の計上、海外未上場銘柄の為替差損、暗号資産関連の損失は一過性のものであり、国内では様々な企業とのアライアンス、海外では買収という形で事業ポートフォリオを拡大している。株価は年明けから大分上げているが、現在の株価でPBR0.75倍と割安である。

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