執筆:西村 麻美

東京海上ホールディングスの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

海外保険事業が北米を中心に拡大しており、金利先高観測により更に業績拡大!

株価
(2022/5/24)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
7,129円 4.8兆円 14.8% 10.9% N/A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
11.6倍 11.2倍 1.2倍 4.21% N/A


2022年3月期通期決算

東京海上ホールディングスの2022年3月期通期決算の結果は

経常収益5兆8,638億円(前期比7.4%増
経常利益5,674億円(同112.7%増
当期純利益4,205億円(同159.9%増
EPS613.46円
一株当たり配当金255円(前期200円

大幅増益の好決算だった。
グループ全体の修正純利益は前期比45%増の5,783億円と2月公表の通期予想よりも3%上振れした。
国内外・生損保共に順調に推移した。
国内損保は自賠責の料率引下げの影響があったものの、前年のコロナ影響の反動や⽕災の料率改定効果等により増収であった。
海外損保は、レートアップや引受拡⼤等により、北⽶を中⼼に増収した。
国内生保は販売好調の一方で、事業保険の解約増加(想定通り)により、減収した。
海外生保は、レートアップや引受拡⼤等により増収であった。
グループ全体では前年度対⽐では、国内外いずれも保険引受・資産運用共に好調であったことに加え、国内の⾃然災害減少や海外のコロナ反動もあり大幅な増益を確保した。


各事業の事業別修正純利益は


TMNF(国内損保事業)

修正純利益2,038億円(前期比16.3%増
通期予想(2月公表)対比+78億円、前年度対比+284億円

AL(国内生保事業)

修正純利益511億円(同3%減
通期予想(2月公表)対比+31億円、前年度対比▲16億円

海外保険事業

修正純利益2,523億円(同175%増
通期予想(2月公表)対比+53億円、前年度対比+1,607億円

国内損保事業は主に⾃動⾞における発生保険⾦の下振れ、その他新種等における大⼝事故の下振れが、円安に伴う外貨建⽀払備⾦積増の上振れを上回り、2月公表の通期予想対⽐+78億円の2,038億円で着地した。
前年度対⽐では、上記に加え堅調なトップライン成⻑や⾃然災害の減少」等により+284億円の増益であった。
正味収⼊保険料に関しては通期予想を若⼲上回る2兆679億円であった。


損保の種類別概況は以下の通り

火災

⾒込んでいた21年1月の料率改定効果に加え、新規契約の上振れ等により予想を上回って着地。

3,612億円(前期比2.3%増


海上

⾒込んでいたコロナ影響の反動に加え、円安や物流基調(輸⼊価格の上昇等)により、予想を上回った。

735億円(前期比19.8%増


傷害

コロナ影響の反動を⾒込んでいたところ、同影響が想定より⻑引いたことによる旅⾏保険の減収等により予想を下回った。

1,682億円(前期比4.2%増


自動車

⾒込んでいたノンフリート単価の上昇(⾞両保険の付帯率上昇や21年4月の商品改定効果等で+0.9%)等によりほぼ予想通りの結果であった。

1兆1,153億円(前期比0.9%増


自賠責

⾒込んでいた21年4月の料率引下げ(▲6.7%)の影響に加え、⾞販台数が想定を下回ったこと等により予想を下回った。

2,197億円(前期比7.9%減


その他新種

4Qに⾒込んでいた⼤⼝契約の次年度への期ズレ等により予想を下回った。

3,499億円(前期比2.6%増


国内損保事業の発生保険金は4Qに発生した雪災等による⽕災保険の増加を、⾃動⾞・その他新種の減少がカバーし、通期予想対⽐▲33億円の1兆1,937億円となった。
前年度対⽐では、⾃然災害の減少、⽕災保険の大⼝事故減少等を主因に147億円減少した。


国内損保事業のE/I損害率は前期比2.7pt低下の58.1%、事業比率は⾒込んでいた一部のシステムコストの期ズレ等により同0.9pt上昇の32.5%、コンバインド・レシオは同1.9pt低下の90.6%だった。


国内損保事業の資産運用等損益は前期比16.2%増1,979億円であった。
ネット利息及び配当⾦収⼊(インカム)は海外⼦会社からの配当⾦が下振れた一方、政策株式配当⾦の上振れによりほぼ通期予想通りの同17.1%増の1,508億円だった。
売却損益等計(キャピタル)は円安により、⾦融派生商品費⽤と為替差益が発生した。
一方、政策株式売却額の上振れによる有価証券売却損益の増加もあり同13.9%増の834億円であった。


国内生保事業の新契約年換算保険料は回払変額保険や新商品(介護年⾦保険など)の販売好調により前期比19.8%増の519億円だった。
一方保有契約年換算保険料は事業保険の解約等による減少が、新契約による増加を上回り同1.1%減の8,108億円だった。
事業別利益は、保有契約の利益貢献や為替ヘッジコストの減少といった増益要因を、販売好調に伴う初年度負担の増加等が打ち消し16億円の減益であった。
新契約価値(当該期間中に新たに成立した生命保険契約)は収益性の高い回払変額保険や新商品(介護・がん等) の販売好調により同26.1%増の694億円と過去最高水準を記録した。


海外保険事業は北米のPHLY、Delphi、TMHCCで過去最高益を記録した。
PHLYは収益改善策やレートアップ効果に加え、過年度リザーブの取り崩し等により、自然災害の影響もあったがコンバインド・レシオは94.1%と良好に維持しながら着実に利益を拡⼤した。
Delphiは団体生保でコロナの影響を受けたものの、LTDや損保での改善により生損保合算での損害率は前年同水準を維持した。
収益の柱である資産運⽤は、強みの運⽤⼒を活かした高い利回りや運⽤資産残高の増加により好調であった。
TMHCCはコンバインド・レシオを87.9%と良好な水準に保ちつつ着実に増収し、トップライン・ボトムラインとも好調であった。
北米の3社の利益は前期比81.2%増と大幅増益の2,108億円であった。(為替を除くと62.8%増)


欧州のTMKは収益安定化に向けてこれまで取り組んできたポートフォリオ改⾰やレートアップ等の効果により、主⼒であるロイズ事業のコンバインド・レシオ水準は90%前半となり、一連の経営改⾰が結実し黒字転換に成功し136億円を計上した。(前期は▲124億円)


中南米ではコロナの影響の反動(交通量の回復)に加え、インフレ高進等を背景とする修理費単価の上昇等による自動⾞のロス悪化が⾒られるが、レートアップや引受⾒直し等の取り組みを着実に進めている。
前期比17.0%減の90億円を計上した。
アジア、オセアニアでは豪州での前年の取引信⽤保険のリザーブ積増の反動に加え、アジアでの自動⾞事故頻度の低下等により⼤きく増益の244億円を計上した。(前期は▲60億円)
Pureに関しては年初にテキサス寒波の影響があったものの、収益の柱であるフィービジネスは前年を上回るトップラインの成⻑により順調に推移し同45.9%増の120億円であった。(為替を除くと31.3%増)


2023年3月期通期予想

会社発表の2023年3月期通期業績予想は

経常利益6,000億円(前期比5.7%増
当期利益4,300億円(同2.3%増
EPS634.42円
一株当たり配当金300円

国内損保事業の事業別利益は、⽕災・新種等のトップライン増の一方で、前年度のコロナ影響の反動、⾃然災害を平年並みに予想することによる保険⾦の増加等により、前期⽐▲308億円減益の1,730億円を⾒込んでいる。
国内生保事業の事業別利益は、トップライン拡大に伴う初年度負担増加に加えてヘッジコストや事業費増加により減益を⾒込む同17.9%減の420億円を予想している。
海外保険事業の事業別利益は北米3社の増益、Pureの増益を予定している一方他地域では減益を予定しており合計で同4.2%増の2,630億円の予想をしている。(為替を除くと▲2.9%)


アナリストによる投資スタンス

5月20日の決算発表翌日の21日は好業績が好感されて株価は上昇し前日終値比7.6%高となった。
東京海上の海外事業は北米事業を中心に上手く行っており、既に海外保険事業の利益は国内損保事業と国内生保事業の利益を合わせた位まで利益が拡大している。
米国及び欧州での金利上昇観測は追い風になり他セクターをアウトパフォームするだろう。
バリュエーションは予想PERが11.2倍、PBRが1.2倍と割安になっており、配当利回りは4.21%である。
東京海上に関しては成長分野(スペシャルティ保険事業)への投資を実行し、ポートフォリオの最適化をしている。
金融セクターの中でも抜群の安定感のある銘柄である。


投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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