【NTTグループの決算ポイント】
着実にNTTデータの海外事業が伸びておりドコモより利益成長率が高い!
株価 (2022/8/23) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
3,787円 | 13.4兆円 | 34.9% | 13.9% | 13.1% |
PER(実績) | PER(予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
11.8倍 | 11.3倍 | 1.6倍 | 3.17% | 3.8倍 |
NTTグループ:2023年3月期1Q決算結果
営業収益 | 3兆689億円 | 前年同期比6.1%増 |
---|---|---|
営業利益 | 5,034億円 | 同3.5%増 |
四半期純利益 | 3,686億円 | 同8.4%増 |
海外営業利益率 | 6.1% | 同2.1pt改善 |
営業収益、四半期純利益ともに1Qとして過去最高を更新した好決算であった。営業収益は国内外のSI収入増や円安メリットにより増収となった。四半期純利益は営業増益に加え法人税等の一過性の増益要因もあり増益となった。前期に引き続きNTTデータのグローバル・ソリューション事業の利益成長が大きく貢献した。
営業利益ベースの各事業セグメントの貢献内訳は
総合ICT事業 | 9億円 |
---|---|
地域通信事業 | ▲81億円 |
グローバル・ソリューション事業 | 226億円 |
その他(不動産、エネルギー等) | 9億円 |
セグメント間取引消去 | 7億円 |
地域通信事業は減益であったが他事業は増益貢献をした。
ドコモの決算結果は
営業収益 | 1兆4,218億円 | 前年同期比1.0%減 |
---|---|---|
営業利益 | 2,837億円 | 同0.3%増 |
四半期純利益 | 2,051億円 | 同3.4%増 |
設備投資 | 1,306億円 | 同16.7%減 |
ドコモのコンシューマー通信事業はahamo等の戦略的なマーケットシェア拡大戦略により減収減益となったが法人事業とスマートライフ事業が利益成長を牽引した。法人事業では企業のDX投資需要からくるソリューションの大型化が目立った。スマートライフ事業の金融決済(dカード)は順調に取り扱い残高を伸ばし、第二の柱であるマーケティングを拡大する方針で花王とデータドリブンのCRM事業を7月より開始した。
コンシューマー通信事業の5Gの契約数は前年同期比157%増加の1,378万契約となった。ahamoに関しては大容量のデータ通信をしたいユーザー向けに「ahamo大盛」を6月より開始した。また6Gの実証実験を富士通、NEC、ノキアと開始した。ドコモの営業利益はNTTグループの営業利益の56.4%を占めた。
NTTデータの決算結果は
受注高 | 6,227億円 | 前年同期比5.6%増 |
---|---|---|
売上高 | 6,774億円 | 同14.6%増 |
営業利益 | 2,575億円 | 同21.7%増 |
四半期純利益 | 397億円 | 同27.9%増 |
営業利益率 | 8.5% | 0.5pt上昇 |
受注高は海外事業の規模拡大及び為替の影響により増加した。国内事業の新規受注は前年同期の大型案件の反動で1Qは低調だったが海外は北米の法人向け案件、EMEA(欧州、中東、アフリカ)・中南米ではスペインを中心に欧州での案件獲得により大きく伸びた。売上ベースでは国内、海外ともに好調であった。国内では法人・ソリューションが好調だった。製造業、流通・サービス向け案件及びペイメントサービスの規模拡大の案件などが貢献した。 NTTデータの営業利益は前期に2,000億円と突破し大きく伸びており、NTTグループの営業利益の51%を占めた。
NTTとNTTデータは海外事業を統合し2022年10月に共同出資で海外事業会社を設立するが出資比率はデータが55%、NTTが45%とデータ主導になる。海外事業統合により戦略の一体化、M&A、IT基盤の統合、コーポレート機能の統合、トータルサービスの提供、クロスセルの深化など2025年度に300億円のシナジー効果を創出、海外EBITDA率10%を目標としている。(2022年度のNTTデータのEBITDA率は7.3%、NTTは7.0%であった。)
NTTグループ:2023年3月期予想
通期の会社計画の業績予想は従前予想を維持した。
営業収益 | 12兆6,000億円 | 前期比3.6%増 |
---|---|---|
営業利益 | 1兆8,200億円 | 同2.9%増 |
当期純利益 | 1兆1,900億円 | 同0.8%増 |
EPS | 340円 | |
一株当たり年間配当金 | 120円 | 前期115円 |
増収増益を予定している。全事業セグメントで増益を予定している。今期に関しても増益貢献が一番大きいのはNTTデータになる見込みである。継続的に行っている自己株式取得であるが、今期も2023年3月末までに4,000億円の自己株式の取得する予定である。
アナリストによる投資判断
通信企業の中でのNTTグループの圧倒的な優位性は変わらず、中長期的な成長ストーリーは不変である。為替の影響もあるがNTTデータの海外ビジネスの伸びがめざましい。NTT本体とデータの海外事業の統合によりNTTグループの中期経営目標の2024年3月期に海外営業利益率7%の達成はほぼ確実に達成可能であるだろう。現在の株価バリュエーションは予想PERが11.27倍、PBRが1.58倍、EV/EBITDAが3.8倍、配当利回りが3.17%と割安な状況である。2023年度のNTTの目標であるEPS370円を使っての予想PERは10.23倍である。
執筆日:2022年8月23日
投資アイデアをチェック!
他の投資家が何に注目しているか、どんなアイデアを出しているか、アイデアブックで確認してみましょう!
執筆者プロフィール
株式会社pafin
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。