執筆:西村 麻美

スクウェア・エニックスの株価情報


株価
(2022/5/20)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
6,190円 7,405億円 74.4% 19.4% 14.1%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
14.5倍 N/A 2.6倍 N/A N/A


2022年3月期通期決算

スクウェア・エニックスの2022年3月期通期決算結果は

売上高3,653億円(前期比9.8%増
営業利益593億円(同25.5%増
当期純利益510億円(同89.3%増
EPS426.82円
一株当たり配当金129円


第4四半期単独の決算結果は

売上高916億円(同16.2%増
営業利益91億円(同47.1%増
四半期純利益112億円(同30.3%増

売上、各利益段階で過去最高を更新した好決算だった。
通期の営業利益率は前期比2.0pt上昇の16.2%、4Q単独の営業利益率は前年同期比2.1pt上昇の10.0%だった。
第3四半期単独決算の四半期純利益の伸びは前年同期比7.3倍と大きく伸びた。
MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)の業績の伸びが貢献した決算であった。
特に2021年12月に発売された『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)の拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』、『ドラゴンクエストX オンライン』の販売が大きく寄与した。


デジタルエンタテインメント事業(HDゲーム、MMO、スマートデバイス、PCブラウザーゲーム)の売上高は前期比6.0%増の2,796億円、セグメント利益は同16.7%増の590億円だった。
内訳はHD(High-Definition:ハイディフィニション)ゲームが871億円、スマートデバイス、PCブラウザーゲームが1,303億円、MMOは622億円だった。
HDゲームは複数の新作タイトルを投入したものの前期に発売した⼤型タイトル「FINAL FANTASY VII REMAKE」に及ばず前年同期⽐で減収減益だった。
MMOは月額課金会員数が大幅に増加したことに加え、拡張パッケージの発売により、前期比で増収となった。
スマートデバイス・PCブラウザ等をプラットフォームとしたコンテンツに関しては、既存タイトルが弱含んだが会計方針の変更により前年同期比で増収だった。


アミューズメント事業に関しては、前期は緊急事態宣言を受け、国内店舗は臨時休業した事から前期比で増収、黒字転換した。
アミューズメント事業の売上高は前年同期比33.6%増の459億円、セグメント利益は同20億円だった。(前期は▲16億円)


出版事業は電⼦書籍等のデジタル販売が増加、また紙媒体の販売も「その着せ替え人形は恋をする」の大ヒット等により堅調に推移したことから前期⽐で増収増益だった。
出版事業の売上高は前期比8.2%増の290億円、セグメント利益は同4.6%増の122億円となった。


ライツ・プロパティ等事業は有⼒IPの新規キャラクターグッズ販売が好調により、前年同期⽐で増収増益となった。
ライツ・プロパティ事業売上高は前期比48.1%増の140億円、セグメント利益は同76.9%増の39億8,000万円となった。


2021年5月に発表した中期経営計画の進捗についても開示した。
海外のスタジオ(北米のHDゲーム開発スタジオ、カナダのHDゲーム開発スタジオ、モバイルゲーム開発スタジオ)、主要IP(「TOMB RAIDER」シリーズ、「Deus Ex」シリーズ、「Thief」シリーズ、 「Legacy of Kain」シリーズ等)の売却に関してEmbracer Group AB(本社スウェーデン)と株式譲渡契約を締結した。
(譲渡額3億USD)海外のスタジオ及び一部IPの売却に至った目的は1)経営資源の最適配分、2)海外パブリッシング機能の再編、3)重点投資領域(ブロックチェーン、AI、クラウド)への投資を推進し、新規事業の⽴上げ、 収益化を加速する目的である。


2月にブロックチェーン・エンタテインメント事業部を新設した。
資産性ミリオンアーサー1stシーズン終了は3月に終了したが、NFTビジネスの実績、⼿応えを踏まえ、2ndシーズンの制作を決定した。
ゲームコンテンツを新たにサービス内に統合、既存事業で培った開発・運営のノウハウを活かし、NFTビジネスにおける「収益構造」、「遊びの幅」、「NFT保有体験」の可能性にチャレンジ。
他複数プロジェクトも企画・開発進⾏中である。


2023年3月期予想

Embracer Group ABに海外のスタジオ及び一部IPを売却予定のために業績への影響を精査する必要があることから、未定とし業績予想は発表していない。


アナリストによる投資スタンス

5月13日に決算発表の後週明けの16日は好決算及び事業ポートフォリオ再編のための資産売却、ブロックチェーン・エンタテインメント事業部の新設等が評価されて株価は上昇し、前営業日比8%上昇した。
上場ゲーム会社の中で次世代事業にいち早く着手し、また事業ポートフォリオの再編に取り組むスクエア・エニックスの経営姿勢は競合よりも高く評価されて然るべきであろう。
現在の株価でPBRは2.6倍である。


投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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