【決算ポイント】アリババ株式の売却で3四半期ぶりに黒字を計上したが、アームのIPOは大分先になるだろう。

 

 

ソフトバンクグループの株価情報

株価

(2022/11/11)

時価総額

自己資本比率

ROE

ROIC

6,953円

10.77兆円

25.7%

N/A

N/A

PER(実績)

PER(予想)

PBR

配当利回り

EV/EBITDA

N/A

N/A

1.29倍

0.63%

N/A

SBG:2023年3月期2Q決算

売上高 (累計)3兆1,825億円前年同期比6.7%増
税引前利益2,926億円同▲72%
四半期純利益▲1,291億円赤字転落

2Q単体の決算結果は

売上高1兆6,104億円前年同期比7.1増
税引前利益1兆1,622億円黒字転換(前年同期は▲2,455億円)
四半期純利益3兆336億円黒字転換(前年同期は▲3,979億円)

ソフトバンクグループの2Q決算結果は過去最大の赤字決算の1Qから一転し最終損益が3兆336億円の黒字となった。保有していたアリババの株式売却により3四半期ぶりの黒字決算であった。

事業概況

2Qの売上高(累計)の主なものは

  売上 セグメント利益 
ソフトバンク事業(SBGが40%保有)2兆8,099億円前年同期比3.1%増4,293億円前年同期比▲19.3%
アーム事業1,837億円*同13.9%増356億円同4.8%増

*注: 米ドルベースの売上高は、非常に好調なライセンス収入を計上した前年同期比6.1%減だったが、為替効果で円ベースでは増収となった。

SBKK事業は売上高は微増だったが、セグメント利益はモバイルサービスの通信料値下げの影響を受けたコンシューマ事業の減益に加え、ヤフー・LINE事業、法人事業も減益となったことにより前年同期比19.3%減少した。

アームのロイヤルティー収入は前年同期比22.2%増(米ドルベース)であった。要因はスマートフォン向けチップのロイヤルティー単価上昇と、高性能車への搭載チップ数の増加が増収に貢献した。一方非ロイヤルティー収入が前年同期比35.8%減(米ドルベース)となった。要因は半期ベースでアーム史上最高の売上を記録した前年同期に比べれば減収となったものの、引き続きアームライセンスへの需要は強く前年同期に次ぐ高水準の売上を記録した。前年同期には、過年度に大口顧客との間で契約が締結された複数の大型案件の売上が計上された。米ドルベースのセグメント利益は減収の影響により減益になったものの円建てでは増益となった。

投資損益

 持株会社投資事業からの投資損益3兆5,247億円
 SVF事業からの投資損益▲4兆3,535億円
 その他の投資損益▲207億円
投資損益合計▲8,495億円

持株会社投資事業からの投資損益はアリババ株式を利用した先渡売買契約のうち242百万ADRを対象とした契約を早期現物決済した結果、合計5兆3,716億円の利益を計上した。早期現物決済の過程でアリババに対する議決権保有割合が20%を下回ったため、同社は当社関連会社から除外した。関連会社から除外後の株価下落に伴い、引き続き保有するアリババ株式に係る投資の未実現評価損失1兆771億円を計上した。1Q中にはTモバイル株式21.2百万株を24.0億米ドルで売却 した。

SVF事業からの投資損失は4兆3,535億円であった。
・SVF1(投資期間は2019年9月12日に終了):実現益(純額)33億円、未実現評価損失(純額)1兆8,458億円をそれぞれ計上した。
・SVF2:実現益(純額)8億円、未実現評価損失(純額)2兆216億円をそれぞれ計上した。
世界的な株価下落傾向を背景に多数の公開投資先の株価が下落し、未公開投資先も多数の銘柄で公正価値が減少した。

上半期にSVF1および2で主にUber、KE Holdingsを含む7銘柄の全株式を合計36.0億米ドルで売却した。(SVF1:30.3億米ドル、SVF2:5.7億米ドル)

SVF1:投資額894億米ドルに対しリターン(売却額等+保有投資の公正価値)1,029億米ドル、活動開始来累計利益は135億米ドルである。上半期の累計の投資損失は152億USD(2兆83億円)であった。公開投資先の公正価値は前四半期末比10.3%減少。Coupangなど一部銘柄の株価が回復したものの、GoTo、SenseTime、DiDiなどの株価下落が影響した。未公開投資先の公正価値は前四半期末比6.4%減少。未公開投資先の公正価値算定に用いた評価手法に応じて、直近取引における株式評価額低下や業績の低迷などを反映し、公正価値が減少した。

SVF2:投資額498億米ドルに対しリターン352億米ドル、活動開始来累計損失は146億米ドルである。上半期の投資損失は146億米ドル(1兆9,344億円)であった。公開投資先の公正価値は前四半期末比29.2%減少。主にWeWork 、AutoStoreの株価下落が影響した。未公開投資先の公正価値は前四半期末比9.8%減少した。。未公開投資先の公正価値算定に用いた評価手法に応じて、業績の低迷などを反映し、多数の銘柄で公正価値が減少した。

厳しい市場環境下でSVF事業では投資を大幅に縮小した。前年同期のSVF1、SVF2の投資額合計296.7億米ドルであったが、今期上期では投資合計額は25.0億米ドルとなった。(SVF1:2.6億米ドル、SVF2:22.4億米ドル、新規および追加投資の合計)

財務状況

SVFからの投資(FVTPL)の帳簿価額は12兆6,905億円(前期末比2兆2,191億円減少)SVF1は前期末比1兆683億円減少、SVF2は前期末比9,736億円減少した。

 投資有価証券の帳簿価額は7兆3,626億円(前期末比4兆2,772億円増加)2Q末に、引き続き保有するアリババ株式の帳簿価額4兆4,848億円を新たに計上した。

 持分法で会計処理されている投資は8,479億円(前期末比4兆3,866億円減少)アリババを持分法適用関連会社から除外し、アリババの連結簿価4兆5,721億円が減少。アリババ株式は公正価値で投資の成果が測定されるFVTPLの金融資産として「投資有価証券」に計上した。

負債状況はSBGの有利子負債が前期末比8,231億円減少資金調達を行う100%子会社の有利子負債が前期末比1兆9,930億円減少した。

資本の増減は親会社の所有者に帰属する純損失1,291億円を計上し、利益剰余金が減少した。継続的な自社株買いを実施で上半期に5,231億円取得した。為替換算レートが前期末から円安となったことにより在外営業活動体の為替換算差額が2兆6,471億円増加した。これらの結果自己資本比率は前期末21.0%から2Q末25.7%に上昇した。

SBG:2023年3月通期業績予想

SBGは業績予想は行わない。通信子会社のSBKKの2023年3月期業績予想は売上5兆9,000億円(前期比3.7%増)、営業利益は1兆500億円(同6.5%増)、当期純利益利益は5,400億円(4.3%増)を予定している。Zホールディングスの2023年3月期予想は売上1兆7,240億円(同10%増)、調整後EBITDA3,315~3,400億円(同0.0~2.6%増)を予定している。

 

アナリストによる投資判断

厳しい市場環境の中アリババ株式の売却で3四半期ぶりの黒字を確保し、また負債も削減し財務状況は改善した。しかし現在の米中関係、また市場環境を考えるとSBGの保有企業は3Q以降も評価損を計上せざるをえないであろう。アームの上場は市場環境が改善してからになると思われ、しばらくは厳しい状況が続くだろう。

 

 

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執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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