【銘柄注目ポイント!】
2Qは1Qより赤字幅が大分縮小。iRobotの買収が中長期的に貢献か?!
株価 (2022/8/11) | 時価総額(百万ドル) | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
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140.64USD | 1.43兆USD | 31.3% | N/A | N/A |
PER (実績) | PER (予想) | PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
N/A | *N/A | 11.06倍 | N/A | 29.94倍 |
*弊社予想通期EPSがマイナスでPERの計算ができないためにN/A
2022年2Q決算
Amazon.comの2022年2Q決算結果は
総売上高 | 1,212億3,400万ドル | (約16兆2,900万円、前年同期比7%増、前四半期比4%増) |
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営業利益 | 36億6,900万ドル | (同58.6%減、同9.6%減) |
四半期純損益 | ▲20億2,800万ドル | (赤字転落、同47%増) |
希薄化後EPS | ▲0.2ドル | (弊社予想▲7.02ドル*1) |
フリーCF *2 | ▲234億8,700万ドル | (前年同期121億4,600万ドル) |
*1 弊社予想希薄後EPSは株式分割を考慮していない数字であり、1対20の株式分割を考慮すると0.35ドル。
*2 Amazon.comのフリーCFの定義は営業CF―有形固定資産の購入+有形固定資産の売却による収入とインセンティブ
総売上高は前年同期比7%増と伸びたものの営業利益はガソリン価格の高止まりによる物流コスト増、人件費の上昇圧力により営業黒字は確保したものの前年同期比60%近く減少した。
ドル高による売上高への影響が▲36億ドルで、為替を除くと総売上高は前年同期比10%の伸びであった。
また出資しているEVメーカーのRivian Automotiveの株価下落に伴い39億ドルの評価損を計上した事等により1Qに続き2Qも最終赤字を計上した。1Qに比べて赤字幅は18億1,600万ドル改善した。
セグメント別概況
EC 北米
売上高 | 744億3,000万ドル | (前年同期比10%増) |
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営業費用 | 750億5,700万ドル | (同16.5%増) |
営業損益 | ▲6億2,700万ドル | (前年同期31億4,700万ドル) |
インターナショナル
売上高 | 270億6,500万ドル | (前年同期比11.9%減) |
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営業費用 | 300億4,000万ドル | (同5%減) |
営業損益 | ▲17億7,100万ドル | (前年同期3億6,200万ドル) |
AWS
売上高 | 197億3,900万ドル | (前年同期比33.3%増) |
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営業費用 | 140億2,400万ドル | (同32.1%増) |
営業損益 | 57億1,500万ドル | (同36%増) |
セグメント別に見ると4Q21以降ECの部分は北米、インターナショナル共に物流コスト増等で営業損益は赤字を計上しているが、AWS(Amazon Web Service、企業向けのクラウド・インフラ事業)は営業利益が36%増となり営業利益率は前年同期比0.6pt上昇の28.9%となった。
巣籠需要の剥げ落ちと物流コストや人件費増でEC事業の不調は続いているが、実店舗売上は同12.4%増の47億2,100ドル、サードパーティー販売者向けサービス(手数料、フルフィルメント、配送費等)は同9%増の273億7,600万ドル、Amazon Prime等のサブスクリプションサービスは同10%増の87億1,600万ドル、広告サービスが同17.5%増の87億5,700万ドルと好調が続いている。
アマゾンはPrime Videoにも注力しており、2021年にMGMを84億5,000万ドル(約1兆円)で買収 すると発表し、約1年後に買収が成立したが、この買収により「ジェームス・ボンド」シリーズ、「ロッキー」シリーズ、「ロボコップ」シリーズ等を手に入れた。
また「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの新作が9月からPrime Videoで配信される予定である。
アマゾンは8月5日にロボット掃除機「ルンバ」で知られるナスダック上場のiRobotを17億ドル(約2,285億円)で買収すると発表した。
iRobotは近年類似した商品が中国を中心とした新興企業から販売されている事等を受け業績が悪化していた。iRobotのROEは2019年度には13.1%、2020年度には18.3%、2021年度には4.2%まで低下し、2022年に入り最終損益は赤字に転落していた。
業績は悪化したものの、世界的に未だに大人気商品であるルンバをピーク時の2020年度の年間営業利益1億4,600万ドルの約11倍の価格で買収したのはアマゾンにとっては安い買い物だった印象がある。
またiRobotにとってもアマゾン傘下に入った事で経営が安定し双方win-winの買収だっただろう。アマゾンはAmazon Roboticsというロボット開発を手掛ける子会社を持っており新製品開発や人気既存製品のアマゾン上での販売等のシナジーが期待される。
3Qのガイダンスであるが、総売上高は1,250億~1,300億ドル、あるいは前年同期比13%~17%増を想定している。これはドル高の総売上高への影響▲3.9%を前提とした数字である。
営業利益は0~35億ドルとしている。(前年同期は49億ドルの営業利益であった。)
投資判断
2Qは1Qよりも最終赤字が減少したが、コストの部分の改善とRivian Automotiveの株価の回復は残念ながら短期的には望めないと考えている。
しかしECの部分以外のセグメントはAWSの高い利益率と成長を投資家は変わらず評価しており、AWS以外の部分の売上も順調に伸びている。
最終損益が今期黒字に転換するのは望めないにしても赤字幅は改善して行くと思っている。
長引くロシア、ウクライナの戦争が終結し、高止まりするエネルギー価格が下がればコストはかなり低下し黒字に転換するだろうと思われる。
ファンダメンタルが回復するのは中々厳しい状況にはあるが、株式分割と自社株買いが好感されて1Qの決算発表時より大分株価は戻している。
業績推移
(Amazon.comの決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
(注:アルファベット社決算結果に基づき株式会社pafin作成)
投資アイデア
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プロフィール
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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サムネイル画像クレジッ:Silver Wings/Shutterstock.com