【銘柄注目ポイント!】
EC事業の大幅コスト増と投資企業の株価下落で7年ぶりに赤字を計上!
株価 (2022/5/12) | 時価総額 (百万ドル) | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
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2,138.61USD | 1,170,000百万USD | 32.6% | N/A | N/A |
PER (実績) | PER (弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
N/A | *N/A | 8.71倍 | N/A | 20.15倍 |
*弊社予想通期EPSがマイナスでPERの計算ができないためにN/A
2022年1Q決算
Amazon.comの2022年1Q決算結果は
総売上高 | 1,164億4,400万ドル | (前年同期比7.3%増) |
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営業利益 | 36億6,900万ドル | (同58.6%減) |
四半期純利益 | ▲38億4,400万ドル | (赤字転落) |
希薄化後EPS | ▲7.56ドル | (前年同期15.79ドル) |
フリーCF | ▲186億2,700万ドル | (同264億1,000万ドル) |
売上は伸びたものの営業利益は原油を中心とした倉庫運営費増、物流コスト増、人件費増等により大幅に減少した。
出資しているRivian Automotiveの株価下落に伴い76億ドルの評価損を計上した事等により最終損益は赤字に転落した。
アマゾンはフリーキャッシュフローを最重要KPIとしているが、業績の悪化と共に前四半期に比べて赤字幅が約二倍となり▲186億2,700万ドルであった。
パンデミックの沈静化によりネットショッピングの巣籠需要が剥げ落ちたところにロシア、ウクライナの戦争開始後の原油高を中心とするコストプッシュインフレにコストの大幅増加、またマクロ経済の悪化による株価下落の影響をもろに受けた決算結果となった。
4月28日の決算発表後にアマゾン株は時間外取引で9%下落の後29日には前日比14%安と大幅に下落した。
セグメント別概況
EC 北米
売上高 | 692億4,400万ドル | (前年同期比7.6%増) |
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営業費用 | 708億1,200万ドル | (同16.2%増) |
営業損益 | ▲15億6,800万ドル | (前年同期34億5,000万ドル) |
インターナショナル
売上高 | 287億5,900万ドル | (前年同期比6.2%減) |
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営業費用 | 300億4,000万ドル | (同2.2%増) |
営業損益 | ▲12億8,100万ドル | (前年同期12億5,200万ドル) |
AWS
売上高 | 184億4,100万ドル | (前年同期比36.6%増) |
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営業費用 | 119億2,300万ドル | (同27.7%増) |
営業利益 | 65億1,800万ドル | (同51%増) |
セグメント別に見ると4Q21同様ECの部分は北米、インターナショナル共に物流コスト増等で営業損益は赤字を計上したが、AWS(Amazon Web Service、企業向けのクラウド・インフラ事業)は営業利益が51%増と大幅増益となり営業利益率は前年同期比4.5pt上昇の35.3%となった。
EC事業の不調が目立つ決算であったが、AWSは絶好調であった。
「アマゾンプライム」を中心とするサブスクリプション・サービスは11%増の84億1000万ドルだった。
2月に米国でプライム会員の年会費を17%引き上げたが、会員数の拡大が続いた。
会社発表の2022年2Qのガイダンスは売上高が1,160億~1,270億ドル(前年同期比3~7%増)を予想している。
この予想売上高はドル高によるマイナスも考慮したものである。
営業損益は▲10億ドル~30億ドルを予想している。(前年同期は77億ドルの営業利益であった。)
業績推移
(Amazon.comの決算資料に基づきクリプタクト社作成)
業績予想
(Amazon.comの決算結果に基づきクリプタクト社作成)
投資判断
EC事業に関してはフルフィルメントに関して設備や人員の増大よりも生産性を重視する施策を取ると会社側はコメントしているが、ロシア、ウクライナの戦争も終結しておらず、中国でのロックダウンの長期化から世界的に物流は混乱したままであり改善には自社の努力のみでは及ばない要素もあるだろう。
Amazon.comはEC事業、AWSは切り離す事が出来ず、AWSの高成長はEC事業で築いた巨大なサーバーがあってこそ実現できる頻繁な技術アップデートや価格競争力であるが、EC事業は世界情勢及びマクロ経済の正常化まで回復するには難しいと考える。
投資アイデア
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プロフィール
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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サムネイル画像クレジッ:Silver Wings/Shutterstock.com