執筆:西村 麻美

 

【銘柄注目ポイント!】

ターゲティング広告の規制でYouTube広告の伸びが鈍化、しかし下落局面は買いのチャンス?!

株価
(2022/4/26)
時価総額
(百万ドル)
自己資本比率ROEROIC
2,373USD1,580,000百万 USD71.1%%32.07%27.37%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR配当利回りEV / EBITDA
21.2倍19.8倍6.3倍N/A14.2倍

AlphabetはGoogle、Calico、GV(旧称Google Ventures)、Google Capital、X、Google Fiber、Nest Labsの持株会社。

 

2022年1Q決算

Alphabetの2022年1Q決算結果は

総売上高680億1,100万ドル(前年同期比23%増
営業利益200億9,400万ドル(同22%増
四半期純利益164億3,600万ドル(同8.3%減
希薄化後EPS24.62ドル(前年同期26.29ドル)

売上高、EPS共に市場予想を下回る決算であった。
決算発表後の時間外取引でAlphabet株は一時6%下落したがその後値を戻した。
四半期純利益は前年同期比8.3%減少した。
売上高、営業利益ともに二桁増であったが、営業外でエクイティ投資関連の損益が悪化し11億6,000万ドルの損失を計上した事により純利益減となった。
セグメント別ではYouTube広告の売上高はアナリスト予想平均では75.1億ドルの予想であったが実際は68.7億ドルと予想を下回った。
YouTube広告の不振は昨年4月にアップル社が開始したiPhone上のターゲティング広告の制限に加えてロシアでの全ての営業活動を停止した影響があると推測する。
YouTube広告だけでなくグーグル・ネットワーク広告もターゲティング広告の制限の影響を受けた。
EUでは、ターゲティング広告規制などを含む「デジタルサービス法案」が欧州議会を通過したが、この影響を受けて1Qのグーグル・ネットワーク広告の売上は22年4Q比12%減少した。
決算発表後のwebcastでの説明ではロシア、ウクライナの紛争はGoogleに取って逆風であり、前年同期の巣籠需要による好業績でハードルが高かったとの説明があった。

 

セグメント別売上高

グーグル検索、その他の広告収入396億1,800万ドル(前年同期比24.3%増
YouTube広告68億6,900万ドル(同14.4%増
グーグル・ネットワーク広告81億7,400万ドル(同20.2%増
その他グーグル68億1,100万ドル(同4.9%増
グーグル・サービス計614億7,200万ドル(同20.1%増
グーグル・クラウド・コンピューティング58億2,100万ドル(同43.8%増
その他事業4億4,000万ドル(同122%増
為替ヘッジによる利益2億7,800万ドル(同355%増
総売上高680億1,110万ドル(前年同期比23%増
トラフィック取得コスト(TAC)119億9,000万ドル(同23.5%増
総売上高に占めるTAC割合17.63%(前年同期は17.56%)

 

セグメント別営業損益

グーグル・サービス229億2,000万ドル(前年同期比17.3%増
グーグル・クラウド▲9億3,100万ドル(前年同期は▲9億7,400万ドル)
その他▲11億5,500万ドル(同▲11億4,500万ドル)
コスト未配分▲7億4,000万ドル(同▲9億9,000万ドル)
営業損益合計200億9,400万ドル 

 

YouTubeとTikTokとの競争激化はマーケットで言われてきているが、TikTokにぶつけて 開始したYouTubeショートの再生回数が一日当たり300億回を上回り前年同期比4倍になったと Webcastで説明をした。
クラウド・コンピューティングの1Qの売上は前年同期比43.8%増であったが、競合のマイクロソフトのクラウド・コンピューティング“Azure”の1Qの売上は同46%増であった。

 

2022年2Qのガイダンスを会社側は発表しなかったが、2Qの業績に影響を与える不安要素はロシア、ウクライナの状況である。
3月上旬よりGoogleはロシア国内での全ての広告(検索広告、YouTube、ディスプレイ広告)の販売を停止している。
戦争が長引く程Googleの業績への影響は大きくなる。
具体的なロシア国内での売上の開示などはないが、欧州企業も若干ではあるが広告支出を減らしており、マクロ環境の不透明感が強まっている状況である。

 

1Qの決算と同時に700億ドル相当の自社株買いを発表した。
アルファベットは過去2年の間に計810億ドル超の自社株買いを実施した。

 

投資判断

YouTube広告、ネットワーク広告の両方にとりターゲティング広告の規制はネガティブ要因である。
しかし減益になるほどの深刻な事態ではないであろう。
ロシア、ウクライナの状況は世界的にエネルギー資源高、食料品高等によるインフレをもたらしており、特に地理的に近い欧州企業への影響が大きい。
昨日ナスダックは年初来安値を更新したが、アルファベット株に関しては過剰に悲観的になる必要はないと考えている。
弊社予想の今期EPS119.67ドルで現在のPERは19.8倍と割安になっており、むしろ下げの局面は魅力的な買い場であると思われる。

 

業績推移

(注:アルファベット社決算資料に基づきクリプタクト社作成)

 

業績予想

(注:アルファベット社決算結果に基づきクリプタクト社作成)

 

投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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サムネイル画像クレジット:achinthamb/Shutterstock.com