執筆:西村 麻美

 

【銘柄注目ポイント!】

YouTube広告の伸びは鈍化したものの、主力の検索連動型広告は二桁増を維持。

株価
(2022/8/12)
時価総額(百万ドル)自己資本比率ROEROIC
122.65USD1,590,000百万USD71.9%29.22%24.6%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR配当利回りEV / EBITDA
22.8倍22.8倍6.3倍N/A14.9倍

AlphabetはGoogle、Calico、GV(旧称Google Ventures)、Google Capital、X、Google Fiber、Nest Labsの持株会社。

 

2022年2Q決算

Alphabetの2022年2Q決算結果は

総売上高696億1,100万ドル(約9兆5300億円、前年同期比13%増、前四半期比2.5%増
営業利益194億5,300万ドル(同0.5%増、同3%減
四半期純利益160億200万ドル(同8.3%減、同2.6%減
希薄化後EPS1.21ドル *(弊社予想28.22ドル、株式分割後ベース1.41ドル)

* アルファベットは2022年7月15日に1対20の株式分割を実施した。

売上高、EPS共に市場予想を下回る決算であった。決算発表後の時間外取引でAlphabet株は一時4%以上上昇した。以降アルファベットの株価はナスダック指数の回復とともに上昇基調である。ドル高が総売上高に▲3.7%影響があった。

営業利益率は前年同期比3.0pt低下の28%となった。増収ではあったが、研究開発費の大幅増加等コストが前年同期比18%増となった事により営業利益率は低下し、営業外の収支が前年同期26億2,400万ドルから▲4億3,900万ドルと悪化したために四半期純利益は同8.3%減となった。

 

セグメント別売上高

グーグル検索、その他の広告収入406億8,900万ドル(同13.5%増
YouTube広告73億4,000万ドル(同5%増
グーグル・ネットワーク広告82億5,900万ドル(同8.7%増
その他グーグル65億5,300万ドル(同1.0%減
グーグル・サービス計628億4,100万ドル(同10.1%増
グーグル・クラウド・コンピューティング62億7,600万ドル(同35.6%増
その他事業1億9,300万ドル(同0.5%増
為替ヘッジによる利益3億7,500万ドル(前年同期は▲700万ドル
総売上高696億8,500万ドル(同13%増
トラフィック取得コスト(TAC)122億1,400万ドル(同12%増
総売上高に占めるTAC割合17.53%(前年同期は17.66%

セグメント別営業損益

グーグル・サービス227億7,000万ドル(前年同期比1.9%増
グーグル・クラウド▲8億5,800万ドル(前年同期は▲5億9,100万ドル
その他▲16億8,600万ドル(同▲13億9,800万ドル
コスト未配分▲7億7,300万ドル(同193億6,100万ドル
営業損益合計194億5,300万ドル(同13%増

セグメント別ではYouTube広告の伸びが鈍化したのが目立った。TikTokに対抗してショート動画を昨年7月より開始したがYouTube広告の伸びにはつながっていないようである。昨年4月にアップル社が開始したiPhone上のターゲティング広告の制限に加えてロシアでの全ての営業活動を停止した事もYouTube広告の伸びの鈍化の大きな要因であると思われる。

グーグル・クラウド・コンピューティングの売上は前年同期比36%近く伸びたもののセグメント損失は拡大した。競合のマイクロソフトのクラウド・コンピューティング“Azure”は4~6月期に売上が同40%伸びた。しかし、主力の検索連動型広告の売上(総売上高の58%)は同13.5%増と好調を維持した。3Qのガイダンスは決算発表後のWebcastでの説明会でも具体的な数字の言及はなく、ドル高のネガティブなインパクトは3Qで更に大きくなると述べるにとどめた。

また従業員数増加については2Qに1万人以上増加し、殆どがテクニカルな人員の採用増であったと述べた。

また、1Qに発表したサイバーセキュリティ企業のMandiantの買収(54億ドル、約7,200億円)の手続きが今年中に完了しGoogle Cloud事業に統合されるが、Mandiantの従業員数がアルファベットの従業員数に上乗せされる。

 

投資判断

ターゲティング広告の規制はYouTube広告にとってネガティブ要因であり、YouTube広告の伸びは鈍化したが、主力の検索連動型広告は二桁増を維持しており、このセグメントが鈍化しない限りはアルファベットに弱気な見方をする必要がないと考えている。

直近発表になった米国の経済指標を見る限りインフレ圧力が大分緩和され、消費者センチメントも予想以上に改善したようでリセッション入りする可能性が低下したように思われる。

今期のEPS予想平均5.19ドルで現在の予想PERは23.6倍と割高感はない。しかし株価はファンダメンタルよりも金利動向やリセッション入りするかに左右されており、積極的に買える局面ではないと考えている。

 

業績推移

(注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

 

業績予想

(注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

 

投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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