【注目ポイント!】
世界的にインフレが加速している状況で3Qに会員増100万人は強気過ぎ!?
株価 (2022/7/20) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
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216.44USD | 96,200百万USD | 41.2% | 30.93% | 12.63%* |
PER (実績) | PER (弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
18.3倍 | 18.8倍 | 5.1倍 | N/A | 4.9倍 |
*過去12カ月の実績数値。
2022年2Q決算
Netflixの2022年2Q決算結果は
売上高 | 79億7,000万ドル | (1Q比1.3%増、前年同期比8.6%増) |
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営業利益 | 15億7,800万ドル | (同20%減、同14.6%減) |
四半期純利益 | 14億4,100万ドル | (同9.8%減、同6.5%増) |
希薄化後EPS | 3.20ドル | (弊社予想3.24ドル) |
会員数 | 2億2,067万人 | (1Q比97万人減) |
ネットフリックスは1Q決算発表時に2Qは会員数が200万人減を予想とのガイダンスをしていたが、実際には97万人減少と半分以下の減少におさまった。売上高は前年同期比8.6%増の79億7,000万ドル(約1兆1,000億円)であった。ドル高の影響を除くと会員一人当たりの平均売上高は同7%の上昇であった。営業利益率は同5.4pt低下の19.8%であった。希薄後EPSは市場平均予想、会社予想を上回る3.20ドルであった。
会員減が会社予想の半分以下であった事、EPSが市場平均予想を上回った事から19日の決算発表後にネットフリックスの株価は時間外取引で一時12%上昇と急騰した。翌20日にネットフリックス株は前日終値比7.35%上昇の216.44ドルで引けた。
地域別の内訳を見ると1Qに引き続きアジア太平洋地域が好調であった。為替の影響を除くと、アジア太平洋地域での売上は前年同期比23%の増加であった。会員数は同108万人増と前年同期の102万人増より伸びた。アジア太平洋地域での会員一人当たりの平均売上高は同2%減であったが、これは昨年12月にインドで戦略的な値下げをした事による影響が大きい。韓国、オーストラリアでは会員一人当たりの平均売上高は上昇し、インドを除いたアジア太平洋地域では為替の影響を除くと2Qに4%上昇した。
欧州、中東、アフリカ地域では1Qに引き続き2Qも会員数が減少し、1Qの会員減30万3,000人の倍以上の76万7,000人の減少であった。これは3月に英国とアイルランドで10~17%の値上げをした影響が大きかったのだろう。アメリカとカナダでは1Qの会員減63万6,000人に引き続き2Qは倍の129万6,000人の減少だった。これは1月に米国、カナダ向けサービスを11%~14%値上げをした影響であると思われる。6月のCPI(消費者物価指数)は米国は前年比9.1%、カナダは同8.1%、英国は同9.4%、アイルランドは同9.1%とインフレが加速したために家計費に占める娯楽費の出費を抑える傾向が強くなり解約が大幅増になったと推測される。中南米では1Qに会員数が35万1,000人減少したが、2Qは14,000人の増加に転じた。中南米では会費の値上げはしていない。
EPSが会社予想、市場平均予想を上回ったのは会員数減少が会社予想の半分以下であった事に加えて、自社発行のユーロ建て債券(約50億ドル)の為替による未実現利益2億2,000万ドルを営業外利益で計上した事による。ユーロ建て債券の為替による未実現利益は1Q、2Q合わせて4億6,000万ドルである。
キャッシュフロー及び資本構成であるが、営業キャッシュフローは前年同期比260.9%増の1.03億ドル、フリーキャッシュフローは同107.4%増の1,300万ドルとなった。現預金はNext Gameの買収(6,900万ドル)、保有現預金の為替差損(1億4,500万ドル)等で同1億9,000万ドル減の58億ドルとなった。
2022年通期でネットフリックスは為替が現行レートより大きな動きがなければ、フリーキャッシュフローが10億ドル前後になるとのガイダンスを発表している。現在ネットフリックスは作品の60%は自社制作であり、自社制作を始めて5年以上になるが、製作に莫大なキャッシュを費やしたステージは終わりに近づいている。製作費/コンテンツの償却費用の比率は2019年に1.6倍でピークアウトし、2022年は1.2~1.3倍になるとの会社側はコメントをしている。2Q末の負債総額は143億ドルと会社側のターゲットの100~150億ドルのレンジ内で抑えられている。ネットデット(純有利子負債)は85億ドル、過去12カ月のEBITDAの1.3倍である。ネットフリックスの資本政策は従前と変わらずキャッシュをコアビジネスに再投資する事であり、次にゲームやM&Aに使う事としている。保有現預金の残高は2か月分の売上を最低目標としている。(2Qの売上ベースで53億ドル)
3Qのガイダンスとしてネットフリックスの会員数は100万人の増加、2022年通期の営業利益率は19~20%と従前予想を据え置きしたが、これは2Qのリストラ費用1億5,000万ドルを除いた予想である。
決算発表の数日前にネットフリックスは広告付き低価格プランでマイクロソフトと提携すると発表した。広告付き低価格プランは2023年にローンチの予定との事である。しかし、この新たなプランの実現のためには第三者制作のコンテンツについては改めて契約をし直す必要があり時間がかかるそうである。また共有アカウントの問題についてはラテンアメリカで追加課金のテストを行っている最中との事である。
業績推移
(注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
(注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
投資判断
2Qは会社予想の会員数減の半分で着地したが、3Qに会員数が100万人増との会社予想は強気過ぎの印象があり、恐らく達成は不可能ではないかと推測する。上述したように米国、カナダ、英国、アイルランドでは今年前半に値上げをした地域であるが、これら地域はインフレが加速しており、今年下半期にもっと加速するのではないかと思われる。インフレの加速により家計費に占める娯楽費はなるべく抑えたいと思い安いプランの競合に乗り換える為にネットフリックスを解約するというのは合理的な消費行動である。
1Qの決算メモでも指摘したが、ネットフリックスから一番顧客を取っているのはディズニープラスであると推測している。価格の安さ、配信数、子ども向けのコンテンツの豊富さからディズニープラスは2022年1~3月期に会員数を800万人伸ばしている。ディズニーの決算発表時にディズニープラスについての開示があるが、どの位会員数を伸ばしたかを見るのも今後のネットフリックスの会員数動向を知る上で参考になる。3Qに強気のガイダンスをした反動で未達と3カ月後に発表があれば株価はかなり売り込まれる事が予想される。妥当な株価バリュエーションは予想PER10倍台半ば~後半位と考えている。
投資アイデア
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プロフィール
株式会社pafin
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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