執筆:西村 麻美

 

【銘柄注目ポイント!】

通期の純利益が前期比7.7倍と大幅増益を達成。

株価
(2022/1/26)
時価総額
(百万ドル)
自己資本比率ROEROIC
937.4USD941,403M46.8%18.28%14.4%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR配当利回りEV / EBITDA
191.3倍92.8倍23.9倍N/A138.83倍

 

2021年度第4四半期決算

テスラの2021年度第4四半期決算結果は

総売上高177億ドル(前年同期比65%増
営業利益26億ドル(同354%増
四半期純利益23億ドル(同760%増
希薄化後EPS2.05ドル 

過去最高益を達成する好決算だった。総売上高177億ドルのうち159億ドルは自動車事業からの売上で、regulatory credits(排出規制規則に基づき売買されるクレジット)は3億1,400万ドルであった。4Qの営業利益率(regulatory creditsも含む)は前年同期比9.3pt上昇の14.7%となった。2021年通期の利益率は12.1%となった。自動車事業のみの粗利益率は30.6%だった。フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローマイナス設備投資額)は27億ドルと前年同期比49%増加した。

 

2021年通期の生産台数は前期比83%増の93万422台、出荷台数は同87%増の93万6,222台となった。「モデルS」「モデル3」の出荷台数内訳は「モデルS」が24,980台、「モデル3」が91万1,242台と量販車がけん引した。

営業利益の大幅増加は一台当たりの生産コストの引き下げと出荷台数の大幅増加が原材料費の値上げやロジスティックス費用の増加を上回った事による。

好決算によりバランスシートも大幅に改善した。4Q末時点の現預金は3Q末比で15億ドル増の176億ドルとなった。現預金増は主にフリーキャッシュフローの増加による。2021年末時点の総負債額(車両とエネルギーのプロダクト・ファイナンスを除く)は14億ドルまで低下した。

世界的な半導体不足を受けて2022年は新型モデルを導入する予定はない。4Qの生産台数を基に計算したランレート(年間ベース)は122万台である。EVの競争力はサプライ・チェーンと生産台数によって決定されるために今年も生産能力を50%以上拡大する予定である。

4Q決算のウェブキャストでマスクCEOはサプライ・チェーンの問題はあったが、ほぼ計画通り生産をする事ができたとコメントした。半導体不足は世界的な問題であるが、テスラはソフトウェアを書き換え、また一台当たりの半導体の数を減らして対応した為に他社に比べると影響は大きくなかった。

 

4Q決算、2021年通期で完成車メーカーとしてテスラは最高の営業利益率を達成した。トヨタの2022年3月期1Q時点の営業利益率は12.6%、中間決算時営業利益率は9.9%だった。半導体不足から同業他社が減産に追い込まれている間にカリフォルニア州フリーモント、中国上海の工場の年間の稼働率を約90%近い稼働率を保った。

 

アナリストによる投資スタンス

テスラの株価バリュエーションについては高過ぎるという指摘は常々ある。しかし、半導体不足という危機的な状況でも機動的に対応して最高益を達成したのは強力なリーダーシップを持つマスク氏のトップダウンの経営スタイルだからこそ成し遂げられた偉業とも言えるであろう。株価下落時は魅力的な買い場と言っても良いかもしれない。

 

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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サムネイル画像クレジット:Hadrian/Shutterstock.com