【銘柄注目ポイント!】
1Qに過去最高益を大幅に更新。上海工場の停止の影響が2Qにどの位出るか?
株価 (2022/4/22) | 時価総額 (百万ドル) | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
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1,005.05USD | 104,000,000百万 USD | 51.6% | 20.43% | N/A |
PER (実績) | PER (予想) | PBR | 配当利回り | EV / EBITDA |
205.1倍 | 82.3倍 | 34.4倍 | N/A | 107倍 |
2022年1Q決算
テスラの2022年度1Q決算結果は
総売上高 | 187億5,600万ドル | (前年同期比80.5%増) |
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営業利益 | 36億300万ドル | (同6倍) |
四半期純利益 | 33億1,800万ドル | (GAAPベース、同7倍) |
希薄化後EPS | 2.86ドル | (GAAPベース) |
過去最高益を大幅に更新する決算だった。
総売上高187億5,600万ドルのうち168億6,100万ドルは自動車事業からの売上で、regulatory credits(排出規制規則に基づき売買されるクレジット)は6億7,900万ドルであった。
1Qの営業利益率(regulatory creditsも含む)は前年同期比13.5pt上昇の19.2%となった。
自動車事業のみの粗利益率は同6.4pt上昇の32.9%だった。
フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローマイナス設備投資額)は22億2,800万ドルと同7.6倍になった。
1Qの生産台数は前年同期比69%増の30万5,407台、出荷台数は同68%増の31万48台となった。
「モデルS/X」「モデル3/Y」の出荷台数内訳は「モデルS/X」が14,724台、「モデル3/Y」が29万5,324台と量販車がけん引した。
1Qの好決算はサステナブル社会の実現への世界的な関心から販売台数の大幅な増加、販売価格の値上げ、原材料コストの上昇はあったものの一台当たりの製造コストの低下、regulatory creditsの売上増等から営業利益率は大幅に上昇した。
製造コスト削減の具体的内容であるが、社内での電池生産や原材料確保のためにサプライヤーの分散などを行った。
ギガファクトリー(生産工場)の状況であるが、1Qは世界的なサプライ・チェーンの問題と輸送、人手不足等の制約から稼働率はフル稼働にはならなかった。
本社をテキサス州オースティンに移転し、オースティンのギガファクトリーは4月上旬にオープンしたが、自社開発大容量車載電池の「4680」を初搭載した「モデルY」の生産をした。
カリフォルニア州フリーモントのギガファクトリーでは「モデルS」「モデルY」の生産能力は年間10万台、「モデル3」「モデルY」の生産能力は年間50万台である。
中国の上海ギガファクトリーの生産能力は年間45万台以上であるが、Q1の稼働率は高かったものの、コロナ拡大によるロックダウンにより工場、サプライ・チェーンともに一時的に停止した。
ドイツのベルリンのギガファクトリーは3月にオープンし、「モデルY」の生産を開始した。
完全自動運転のソフトウェアのアップデートは継続しており、ベータ版のリリースは3月にカナダで始まり、米国でのリリースは年内を予定している。
太陽光発電事業は1Qの設置量は半導体不足と輸入原材料の遅れから前年同期比48%減の48MWとなった。
蓄電池事業の配備量は家庭用蓄電池のPowerwallの好調により同90%増の846MWhとなった。
発電及び蓄電事業の1Qのセグメント粗利益は▲72百万ドル、粗利益率は▲11.7%であったが、2021年2Q、3Qでは黒字を確保しており、1Qの赤字は半導体を中心とする部材不足によるものである。
サービス、その他事業の粗利益はずっと赤字続きであったが、1Qにとんとんに限りなく近い▲0.6%となった。
好業績によりバランスシートも大幅に改善した。
1Q末時点の現預金及び短期有価証券の残高は前年同期比5%増の180億ドルとなった。
1Q末時点の総負債額(車両とエネルギーのプロダクト・ファイナンスを除く)は同98%の8,800万ドルまで低下した。
有利子負債の大幅減は21億ドルの債務返済による。
1Q末の負債資本倍率は0.89倍、インタレストカバレッジレシオは60.4倍となった。
決算発表後のwebcastでマスク氏は2022年の出荷台数については2021年の93万6,222台の50%増の140万台を達成する見込みとコメントした。
ベルリンとオースティンの新工場が本格稼働すると生産能力は年間150万台以上可能である。
半導体不足とサプライ・チェーンの問題により過去数四半期の間、生産能力以下の稼働率であったが、その状況は2Qも継続すると考えているとのコメントであった。
2Qの生産台数に関しては1Qよりやや低下すると考えているが、年後半は2新工場の本格稼働と共に大幅に伸びると考えているとの事である。
また部品のサプライヤーに関しては、部品によっては20~30%の価格アップを言ってくるために価格上昇をせざるを得ない状況である。
アナリストによる投資スタンス
テスラの株価バリュエーションについては既存の自動車メーカーと比較するのは無意味であると考えている。
テスラはまず既存自動車メーカーと違いディーラー等を通じての販売をしていなく、直販Webサイトによる予約受付でのみ販売している。
また広告費も使っていない。
常に需要が供給を上回っている為に広告を必要としていないのもあるが、マスク氏自身がSNSを通じてブランディングをしており、Twitter上では最も影響のある人物のマスク氏の言動に世界中が注目している。
テスラ社のミッションはサステナブルなクリーン・エネルギーへの移行を加速する事であり、自動車事業はその一つに過ぎない。
太陽光発電や蓄電といったエネルギー事業、完全自動運転のソフトウェアなど複数の事業を手掛けている。
エネルギー事業に関しては将来的には自動車事業を上回るものにするという計画をマスク氏は持っている。
自動車以外の事業の損益も黒字に近づいてきているために現実味を帯びてきている。
株価下落時は魅力的な買い場になると考える。
業績推移
(注:テスラ社決算資料に基づきクリプタクト社作成)
業績予想
(注:テスラ社決算結果に基づきクリプタクト社作成)
投資アイデア
他の投資家が何に注目しているか、アイデアブックでご確認いただけます。
プロフィール
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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