執筆:西村 麻美

株価
(2020/8/7)
時価総額自己資本比率ROEROIC
5,380円1.4兆円29.2%11.29%8.2%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR配当利回りEV / EBITDA
13.97倍15.51倍1.53倍1.48%2.2倍

日本電気株式会社2021年3月期 第1四半期決算短信はこちら


 

2021年3月期第1四半期 決算分析

■2021年3月期第1四半期決算 

売上高5,877億円(前年比10.1%減⤵
営業利益▲103億円(同137億円減
四半期純利益▲50億円(同83億円減

減収、赤字転落の決算だった。

NECは「調整後営業損益」という営業損益から買収により認識した無形資産の償却費、およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標を使っている。

この指標を使うと、 
調整後営業損益が▲58億円(前年同期比134億円減) 
調整後四半期純損益が▲23億円(同81億円減)

フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローマイナス投資キャッシュフロー)は842億円と前年同期より10億円増加した。

これは営業損益は悪化したものの、期末債権残回収及び前受金増などの運転収支が大幅に改善した事と投資有価証券の売却益でプラスとなった。

大型案件の減少やビジネスPCの更新需要が一巡に加えてマクロ経済の悪化により減収となり、費用節減で70億円の増益効果、子会社株式の売却で70億円計上も減収をカバーできずに赤字に転落した。

セグメント別では社会公共セグメントの売上高が前年同期比14.2%減の748億円、社会基盤セグメントの売上高は同6%減の1,227億円、エンタープライズセグメントの売上高は同16.4%減の1,150億円、ネットワークサービスセグメントの売上高は同4.5%増の990億円、グローバルセグメントの売上高は同15.1%減の970億円、その他セグメントは同11.6%減の791億円だった。

ネットワークサービス・セグメント以外全てのセグメントで減収となった。


 

2021年3月期予想

■2021年3月期の会社発表の業績予想 

売上高3兆円(前年比2.1%減⤵
営業利益1,500億円(同17.5%増⤴)
当期利益900億円(同10%減⤵)

5月時点での予想と変わっていない。

今期はコロナ後のニューノーマル需要の獲得に注力するとNECは発表していたが、ハワイ州の主要5空港に、生体認証・映像分析技術とサーマルカメラを組み合わせた感染症対策ソリューションをハワイ州交通局から受注したと7月に発表した。受注金額は導入費や10年間の保守費などを合わせて約3,750万米ドル(約40億円弱)

また、5G関連ではNTTと提携して光、無線技術を活用したICT製品の共同研究及びグローバル展開、また楽天モバイルとスタンドアローン方式の5Gコアネットワークの共同開発を6月に発表している。


 

アナリストによる投資スタンス

株価は3月に下落した後は上昇基調だったが、第1四半期で赤字に転落した事から売られている。株価バリュエーションは予想PERが15.51倍、PBRは1.53倍、EV/BITDAは2.2倍と割安である。

NECは通常第4四半期に業績が偏るため、現時点で通期業績も赤字に転落するとは言いづらい。NTTとの5G関連製品の開発やグローバル展開はかなり大きな受注になるかと予想されるので、ストーリーが崩れていないのなら逆に株価の安い今は買い場になるとも言えるだろう。


 

過去のNECの決算ハイライト

・2020年3月期


 

プロフィール

マーケットアナリスト西村麻実 / Market analyst Mami Nishimura株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


 

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