執筆:西村 麻美

東京海上ホールディングスの株価情報

株価(2021/6/2) 時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
5,245円 3.62兆円 14.2% 4.6% N / A
PER(実績) PER(予想) PBR 配当利回り EV/EBITDA
22.61倍 11.54倍 0.99倍 4.42% N / A


2021年3月期通期決算

経常収益 5兆4,619億円 (前期比0.1%減
経常利益 2,667億円 (同26.7%減
当期純利益 1,618億円 (同37.7%減

減収減益決算だった。正味収⼊保険料は、国内がコロナの影響や⾃賠責の料率引下げ等により減収したものの、自動⾞・⽕災の料率改定効果や新種の拡大等による増収によりカバーし、0.6%の増収だった。海外は、コロナの影響や利益重視の引受による減収を、各拠点におけるレートアップ等でカバーし、現地通貨ベースで7.7%の増収だった。(しかし、為替込みでは0.3%の減収だった。)

生命保険料に関しては、事業保険の解約による保有保険の減少等により4.5%の減収、海外に関してTMHCCでのメディカルストップロスのレートアップ、引受拡大等により、現地通貨ベースで6.5%の増収だった。(為替込みでは0.4%の増収だった。)

連結純利益は、コロナの影響や各種準備⾦の負担増加を主因に、前期⽐979億円減益の1,618億円となり、通期予想対⽐では、各種準備⾦等の負担増加により下振れて着地した。実⼒を⽰す修正純利益は、異常危険準備⾦等の影響を控除し、前期⽐494億円増益の3,361億円と、ほぼ通期予想通りに着地した。


通期の事業別利益の内訳

国内損保事業 1,093億円 (前期比35.6%減
国内生保事業 464億円 (同35.3%増
海外保険事業 399億円 (同47.7%増

国内損保事業は、保険引受利益は、既経過保険料の増加や発生保険⾦の減少の⼀⽅、各種準備⾦の負担増加により、前期⽐554億円の減益(各種準備⾦の増減影響を除くと+1,331億円の増益)だった。資産運用等損益も、有価証券売却益や配当⾦の減少により、前期⽐118億円の減益だった。当期純利益は、前期⽐605億円減益の1,093億円だった。(通期予想対⽐では、各種準備⾦の負担増加により下振れての着地だった。)E/I損害率は、⾃然災害の減少やコロナによる外出⾃粛の影響等により、前期⽐5.5pt低下の60.8%、事業費率は、消費税増税を主因とした⼿数料率の上昇の⼀⽅、社費率の低下により、前期⽐0.8pt低下の31.6%だった。これらの要因等によりコンバインド・レシオは、前期⽐6.2pt低下の92.5%となった。

国内生保事業は、新契約年換算保険料は、コロナ下での対⾯販売⾃粛の影響を、新たな医療保険や回払変額保険の販売好調でカバーし、前期⽐6.9%の増収だった。(通期予想対⽐でも、上記商品の販売好調を主因として上振れて着地した。)当期純利益は、前期のシステム開発費増加の反動や為替ヘッジコストの減少を主因に、前期⽐121億円増益の464億円だった。(通期予想対⽐では、新契約年換算保険料の上振れに伴う、初年度負担の増加を主因に、若⼲の下振れだった。)

海外保険事業は、正味収⼊保険料は、コロナの影響(▲620億円)や利益重視の引受に伴う減収を、順調なレートアップ等でカバーし、現地通貨ベースでは前期⽐+1.0%の増収(通期予想対⽐でも、レートアップ効果等により上振れて着地した。)特に好調だったのが主力の北米市場ではPhiladelphia Insurance Companiesは引受減により減収だったものの、Delphiは損保ビジネスの引受拡大により増収、TMHCCは、コロナの影響があったものの、更新契約のレートアップ(+約15%、A&H、Surety、Creditを除く)等により増収だった。欧州、中東、アフリカでは減収、中南米では引受拡大により現地通貨ベースでは増収だったものの、為替込みでは減収だった。アジア、オセアニアではコロナに伴う新⾞販売の減少を主因に減収だった。海外生保はタイ、シンガポールの好調により増収だった。


2022年3月期通期予想

経常利益 4,400億円 (前期比65.0%増
当期利益 3,150億円 (同94.7%増
EPS 454.36円

上記会社計画は、正味収入保険料については3兆7,600億円、生命保険料については9,300億円を見込んでいる。また、今年度発生の自然災害に係る正味発生保険金については、国内は740億円、海外は520億円を見込んでいる。市場金利および株式相場については、主に国内は2021年3月末、海外は2020年12月末から大きくは変動しない前提としている。(2021年3月末のドル/円レート110.71円、日経平均株価は29,178円)

東京海上ホールディングスは、投資・還元余⼒をより分かりやすく⽰すべく、移動制約資本を控除したESRに改定した。リスク量算出においては、引き続き99.95%VaR(AA格基準)に基づくモデルを使用した。新しいESRにおけるターゲットレンジは、100%〜140%とする。株主還元の⼀⽅、下期の利益貢献や株価の上昇等により、2021年3月末のESRは127%(ターゲットレンジ内)となった。

5月20日の決算発表日に東京海上の株価は5.3%も下落した。今期は大幅増益予定であるにも関わらず株価がかなり下落した。

一つ考えられる要素は3月半ばにFRBが自己資本規制である補完的レバレッジ比率(SLR)に関する緩和措置を延長せず、期限の3月末で終了すると発表したことを受け、金融セクターが軟調に推移しているが、北米事業の比率が高い東京海上も影響を受けているのは確かであろう。また、東京海上は東京オリンピックのスポンサー企業であるが、おそらく中止になる可能性が高い事も影響しているかもしれない。


アナリストによる投資スタンス

株価バリュエーションは予想PERが11.54倍、PBRが0.99倍と割安になっており、配当利回りは4.10%である。景気回復、金利上昇圧力が強い中、東京海上に関しては長年にわたる優れた経営のトラックレコードがあり、バリュエーションも割安である事から下値は限られているのではとの印象を受ける。


東京海上ホールディングスに関する投資アイデア

他の投資家が東京海上ホールディングスをどのようにみているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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