執筆:西村 麻美

カプコンの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

3Qに主力のデジタルコンテンツ売上が更に低下

株価
(2022/1/17)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
2,615円 5,583億円 79.1% 17.9% 17.1%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
22.4倍 18.6倍 4.0倍 1.38% 10.3倍


2022年3月期第3四半期決算

カプコンの2022年3月期第3四半期決算(累計)の結果は

売上高882億円(前年同期比35.9%増
営業利益351億円(同43.9%増
四半期純利益267億円(同52.4%増

累計の決算結果だと増収増益に見えるが、第3四半期単独だとどのような結果だったのかを見ると以下のような結果だった。

単位(百万円)2022年3月期1Q2022年3月期2Q2022年3月期3Q3Q決算時累計
売上高48,42321,57218,16888,163
営業利益23,6045,3206,17235,096
営業利益率48.7%24.7%34.0%39.8%
経常利益23,8995,8246,42536,148
純利益17,3404,8794,48926,708

第3四半期単独で見ると売上高は第2四半期よりも更に低下したが、営業利益は第2四半期よりも増加したために営業利益率は9.3pt改善した。第3四半期は営業外収益として関係会社整理益 7億6,100万円を計上した。


累計の事業別の内訳

デジタルコンテンツ事業

売上高704億円
セグメント利益358億円

アミューズメント施設事業

売上高89億円
セグメント利益4.19億円

アミューズメント機器事業

売上高49億円
セグメント利益19億円

その他事業

売上高37億円
セグメント利益15億円


第3四半期単独の事業別の内訳を見ると以下のような結果であった。

デジタルコンテンツ事業の売上が第2四半期より更に約33%低下した。しかしセグメント利益は利益率の高いダウンロード販売が伸びた事からあまり下がらなかった。


デジタルコンテンツ事業は2022年3月期第三四半期の累計結果は総販売本数が2,580万本と前年同期を600万本上回った。デジタルコンテンツ事業の売上高は前年同期比43.9%増の704億5,300万円、営業利益は同44.8%増の358億9,400万円だった。ここでも第3四半期単独の販売本数を見るために以下のようにまとめた。

第2四半期に販売本数が第1四半期よりほぼ半減した後に第3四半期に売上は更7.7%ほど低下した。特に国内販売が大きく落ち込み、逆に海外販売は大きく伸びた。第3四半期に新作タイトルの発売はなかったが、戦略的な価格施策をもとにグローバルでの長期販売を推し進め、211の国・地域に301タイトルを販売した。新作『バイオハザード ヴィレッジ』の売上は570万本を突破した。「Golden Joystick Awards 2021」にて、「アルティメット・ゲーム・オブ・ザ・イヤー賞」を含む4部門を受賞した。

2017年発売の『バイオハザード7 レジデント イービル』も累計販売本数1,000万本を突破するなど、シリーズの過去タイトル等を中心としたリピートタイトルの販売拡大が業績に貢献した。


アミューズメント施設事業は緊急事態宣言の解除による来店客数の回復に加え、既存店の効率的な店舗 運営と新業態での出店効果および最新のキャラクターグッズなどの導入により収益拡大を図り、前年同期比で増収増益となった。売上高は前年同期比28.1%増の89億9,200万円、営業利益は同383.4%増の4億1,900 万円だった。


アミューズメント機器事業は減収減益だった。売上高は前年同期比26.4%減の49億3,700万円、営業利益は同20.5%減の19億3,200万円だった。


その他事業はブランド価値向上に向け、引き続き、主力IPを活用した映像化やキャラクターグッズ展開などに努めた。昨年11月には海外を皮切りに、映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開された。eスポーツにおいては、グローバル規模でのユーザー層の裾野拡大に向けた施策を推し進め、第3四半期においてはチームオーナー制を導入したチームリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2021」を昨年10月から開催したほか、米国で開催したチームリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-US 2021」も熱戦が繰り広げられた。売上高は前年同期比74.2%増の37億8,100万円、営業利益は同79.8%増の15億4,900万円だった。


2022年3月期予想

2022年3月期通期の業績予想に関しては従前予想を維持した。

売上高1,000億円(前期比4.9%増
営業利益420億円(前期比21.4%増
当期利益300億円(前期比20.4%増


アナリストによる投資スタンス

1月26日に決算を発表した翌日に株価は前場で3.4%ほど下落した。海外販売を戦略的に推し進めているようだが、国内での第三四半期のデジタルコンテンツ販売が第2四半期比で約40%減と大幅減だったのが嫌気されているようである。

現在の株価でPERは18.6倍、PBRが4.0倍、EV/EBITDAが10.3倍と割高感は全くないが、第3四半期で国内でのデジタルコンテンツ売上が回復するのか見極めない限り積極的には買えない状況のようである。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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