基本情報
企業概要
インフォコムは東京都渋谷区に本拠地があるシステム・インテグレーター(SIer)。
2001年に日商岩井系SIer「インフォコム」と帝人系SIer「帝人システムテクノロジー」が合併。2002年JASDAQ上場。2018年東証一部上場。
帝人株式会社(持株会社)が株式の55.1%を保有する帝人グループのIT戦略部門であるが、帝人からのシステム受注は全体の3割程度である。
近年は電子コミック事業の成長が高く、2020年3月期の営業利益ベースで電子コミック事業が6割、ITサービス事業が4割。
株式関連情報
株価 | 3,040円(2020/6/18) |
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発行済株式数 | 57,600,000株(うち自己株式2,865,223株) |
上場市場 | 東証一部 |
時価総額 | 1,663億円 |
従業員数
1,171名 (2020年3月31日時点)
財務データ
2016/3 | 2017/3 | 2018/3 | 2019/3 | 2020/3 | |
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売上高(百万円) | 40,316 | 41,768 | 45,774 | 51,728 | 58,375 |
営業利益(百万円) | 4,427 | 4,776 | 5,829 | 6,889 | 8,221 |
当期利益(百万円) | 728 | 3,261 | 4,640 | 4,783 | 5,543 |
EPS(円) | 26.64 | 119.28 | 84.85 | 87.46 | 101.32 |
純資産(百万円) | 21,148 | 23,665 | 28,360 | 32,707 | 36,159 |
BPS(円) | 769.42 | 861.50 | 516.08 | 595.05 | 653.82 |
※2019年3月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施
事業別の概要
ITサービス・セグメント
ITサービス・セグメントでは大きく3事業を手掛けている。
①医療機関向けパッケージ・サービス
― 就業管理、診療情報、薬剤情報、放射線画像・手術・看護管理など広範囲な領域で医療従事者や患者向けのソリューションを提供。
②一般企業・官公庁・自治体向けサービス・ビジネス
- ERP・RPA、クラウドサービス、ビジネスパッケージを提供。
③大手企業向けシステム・インテグレーションを提供。
中期経営目標としてITサービスの中では、①のヘルスケアに注力している。インフォコムはSIerとしてスタートしたが、労働集約型で利益率の低いSI事業から脱し、利益率の高いパッケージ・サービスの提供、しかも成長率の高いヘルスケア業界にフォーカスしている。
ネットビジネス・セグメント
国内最大級の電子コミック配信サービス「めちゃコミック」をはじめとした、デジタルコンテンツの配信サービスを運営。
電子コミック市場
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2019年に紙のコミック市場は2,387億円、電子コミック市場は2,593億円と電子コミック市場が紙のコミック市場を上回った。
2018年から2019年に電子コミック市場は29.5%成長した。なお、電子コミックの市場推計は定額読み放題を含めた「販売額」であり、広告収入は含まれない。
「めちゃコミ」
めちゃコミを運営するのはインフォコムのネットビジネス事業が分社化した子会社アムタス。めちゃコミは、2006年よりサービスを開始し、最新の人気コミックから定番コミックまで、いつでもどこでもすぐ読めるマルチデバイス対応の電子コミック配信サービス。
電子書籍専用端末やアプリインストールは不要で、「検索して」「タップして」「すぐ読める」の3ステップで手軽に楽しめることから、顧客満足度で1位を獲得するなど、国内電子書籍市場においてトップクラスの利用者数(2020年3月末時点で総会員数1,170万人)を誇っている。
めちゃコミの成功は独占先行配信作品の拡充、テレビCMやネット広告の積極展開、ビッグデータ分析に基づいた各種施策の実施など様々な取り組みの相乗効果により、会員数拡大とサイトの利用が促進されたことによる。
事業セグメント別内訳
2019年3月期 | 2020年3月期 | ||
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ITサービス・セグメント | 売上 | 242.3億円 | 253.9億円 |
うちヘルスケア売上 | 98.0億円 | 107.8億円 | |
営業利益 | 24.8億円 | 32.5億円 | |
営業利益率 | 10.3% | 12.8% | |
ネットビジネス・セグメント | 売上 | 274.9億円 | 329.8億円 |
うち電子コミック売上 | 266.7億円 | 326.4億円 | |
営業利益 | 43.9億円 | 49.5億円 | |
営業利益率 | 16.0% | 15.0% |
なお、ネットビジネス・セグメントの2020年3月期の営業利益率の低下は広告費増とインフラ増強の費用によるものである。
財務状況
過去3年のキャッシュフロー状況
(単位:百万円) | 2018/3 | 2019/3 | 2020/3 |
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営業キャッシュフロー | 5,680 | 5,671 | 7,355 |
投資キャッシュフロー | ▲686 | ▲1,024 | ▲2,472 |
財務キャッシュフロー | ▲747 | ▲1,105 | ▲1,546 |
現金及び現金同等物期末残高 | 16,630 | 20,177 | 23,491 |
2018年3月期の営業キャッシュフローが2019年3月期の営業キャッシュフローより若干多いのは固定資産売却益を110億円計上しており、その分税引前当期純利益が膨らんだ事による。
投資キャッシュフローが2020年3月期に倍増(前年より倍投資用途にキャッシュフを使った)したのは連結子会社化した㈱スタッフプラス(介護業界人材紹介サービス会社)及び㈱ピーナトゥーン(韓国の電子コミック制作、配信会社)の株式の取得による支出が大きい。
現金及び現金同等物は2018年3月期から2020年3月期にかけ41%増加した。
有利子負債
インフォコムは借入がない。バランス・シート上に利払いのあるものとしてリース債務を計上しているのみである。
経営戦略
2018年3月期から2020年3月期の中期経営計画として、電子コミックとヘルスケアを重点事業としてあげていたが、結果として電子コミック売上326億円、ヘルスケア107億円をあげる事業に成長した。
引き続き電子コミックとヘルスケアを重点事業としていく事に変わりなく、その為に以下の施策を講じる予定である。
■電子コミック
― オリジナルコミックの拡充、AIの活用による機能強化、アプリ版のめちゃコミックの展開等による会員数の拡大に取り組み、年20%以上の継続を目指す。また、連結子会社になったピーナトゥーンによる韓国での電子コミック配信事業も強化する。
■ヘルスケア
- 医療機関向け既存事業のラインナップ拡充、介護人材サービスの推進、健康管理サービスの展開に加え、東南アジアにおいて病院向けシステムの展開に取り組む。東南アジア進出に関しては単独ではなく、シンガポール拠点のヘルスケアに特化したベンチャー・キャピタル”Health X Capital”と組んでの事業開発である。
主な経営指標
2018/3 | 2019/3 | 2020/3 | |
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自己資本比率 | 73.8% | 74.6% | 74.4% |
配当性向 | 22.4% | 25.2% | 30.6% |
営業利益率 | 12.73% | 13.31% | 14.08% |
総資産回転率 | 1.2回 | 1.2回 | 1.2回 |
EBITDA | 5,861百万円 | 6,991百万円 | 9,391百万円 |
ROA | 16.9% | 16.8% | 18.0% |
ROE | 17.9% | 15.7% | 16.2% |
ROIC | 12.2% | 14.9% | 15.9% |
過去3年間、インフォコムは電子コミックとヘルスケアを重点事業として事業経営した結果、営業利益率は12.73%から14.08%と135bps(ベーシス・ポイント)改善し、EBITDAは58億6100万円から93億9100万円へと60%成長した。また、ROICは12.2%から15.9%へと370bpsも改善した。
投資判断
インフォコムはBtoBのSI事業、BtoCの電子コミック事業の両方を手掛けるユニークな成長企業である。
2021年3月期から本格的に海外展開をするが、ヘルスケアに関してはコロナウィルスの影響で事業計画が後ろ倒しになるリスクはある。
一方電子コミック事業は既にトップクラスの利用者数だが、潜在顧客を取り込むためのマーケティングの強化、アプリ版の本格展開で計画達成率は高いと思われる。
株価は3月半ばに一旦下落したものの、すぐに回復して上昇しているが、予想PERが29倍、EV/EBITDAが14.3倍、PBRが4.6倍と成長株としては全く割高な印象はない。
プロフィール
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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