基本情報
企業概要
2012年設立。東京都港区に本拠地を置く個人、小規模企業向け決済機能付きECプラットフォーム「BASE」運営企業。
連結子会社であるPAYはPAY.JPというオンライン決済サービスを運営。同じく連結子会社のBASE BANKはBASEを利用するショップオーナーに対して資金調達サービスを提供。
2019年10月東証マザーズ上場。
株式関連情報
株価 | 9,940円(2020/9/14) |
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発行済株式数 | 20,433,400株(うち自己株式0株) |
上場市場 | 東証マザーズ |
時価総額 | 2,030億円 |
従業員数
148名 (2019年12月時点)
財務データ
2018/12 | 2019/12 | |
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売上高(百万円) | 2,352 | 3,849 |
売上高(百万円) | 2,352 | 3,849 |
営業利益(百万円) | ▲791 | ▲441 |
当期利益(百万円) | ▲854 | ▲459 |
EPS(円) | ▲118.45 | ▲38.73 |
純資産(百万円) | 1,737 | 3,158 |
BPS(円) | ▲428.98 | 154.71 |
BASEの考えるECショップ
BASEはこれまでのECショップのようにマスユーザーに幅広くリーチし、顧客が検索エンジンで辿り着き、価格訴求するコモディティを売るという形とは正反対のECプラットフォームを目指している。
SNSを活用した「個」の情報発信と「個」同士のダイレクトな交流ができるECショップをBASEでは提供している。他店にはないニッチでオンリーワンの商品・サービスをSNSやオウンドメディアによる直接交流を通じてファンになった人たちに買ってもらうという形である。
交流ができるECショップを目指すBASEは「BASE Apps」 にて、ショップオーナーが無料もしくは有料の会員制コミュニティを作ることができる新機能「コミュニティ App」の提供を2020年9月9日よりスタートした。これによりショップオーナーとファンの直接の交流の場が生まれた。
事業概要
BASE事業
誰でも簡単にデザイン性の高いネットショップを無料で作れるネットショップ作成サービスと、そこで開設された店舗の商品を購入できるショッピングアプリ等を提供すEコマースプラットフォームを展開している。
BASEは今まで様々な理由でネットショップを始める事が困難だった人でもネットショップの運営を始める事ができるように初期費用、月額費用を無料にしている。また、テンプレートも無料で豊富にあり、多様な拡張機能を持っている。
BASE事業では、より幅広いユーザーの利用を促進するための機能開発、拡張機能の強化等の継続利用ショップの成長を支援するサービスの拡充により長期的な利用とLTV (Life Time Value)の向上に努めている。
新規ユーザーにはかんたん決済を100%利用してもらい、手数料、サービス料がBASEにとっての収益源である。手数料は1回の注文の総合計(送料含む)に対し、6.6%+40円がかんたん決済手数料とサービス料としてかかる。(内訳は3.3%+60円が決済手数料、3%がサービス料)
かんたん決済はクレジットカード、キャリア決済、銀行振込、コンビニ決済・Pay-easy、PayPal、後払いの6種類に対応している。
BASEの競合
個人や小規模事業者をターゲットとしたBASEの競合のECプラットフォームはSTORES.jpとShopifyだと考えられる。
STORES.jpの月額費用が1,980円、決済手数料が3.6%とShopifyは月額費用が29USD(約3,100円)、決済手数料が3.4%と決済手数料の他に月額費用がかかる。
この固定費用を考えるとBASEの場合は月額費用がゼロなので、新規にECショップを立ち上げたいユーザーに取っては初期費用、月額費用がゼロのBASEを選ぶ確率が高いだろう。また、既に他社でECショップを開いている人たちがBASEに乗り換えるユーザー数も相当な数いると思われる。
2020年の2月にマクロミルによって行われたカート型ネットショップ作成サービス利用実績調査ではBASEを利用したと答えた人が54.6%と回答しており、個人、小規模事業者に圧倒的に選ばれるECプラットフォームであるとの調査結果であった。
PAY事業
PAY事業では、WebサービスやBASEで作成された以外のネットショップにクレジットカード決済を簡単に導入できる開発者向けのオンライン決済サービス「PAY.JP」及びID決済サービス「PAY ID」を提供している。
ベーシックプランは初期費用・月額費用一切なしで手数料がVisa/Masterが3%、その他のクレジットカードが3.6%。入金サイクルは月一回、月末締めの翌月末払い。
プロプランは月額費用1万円で、手数料がVisa/Masterが2.59%、その他のカードが3.3%。入金サイクルが月二回、15日締め/当月末払い、末締め/翌月15日払い。
また、PAY.JP Partnerはパートナー企業として登録したパートナー企業から新たな加盟店を紹介する制度で、還元方式は紹介加盟店の売上に応じた紹介料をパートナー企業へ支払うか加盟店の手数料率を引き下げるかを選ぶ事ができる。
その他事業
その他事業はBASE BANKが提供する「YELL BANK」という資金調達サービスである。
BASEを利用するショップオーナーがリスクなく即時に資金調達できる。ショップの将来の売上金額を予測して「YELL BANK」がショップオーナーから将来の売上債権の買い取りをする。買い取った金額は即時にショップオーナーに支払われるため、ショップオーナ-は将来の売上を即時に利用する事ができる。サービス利用料は利用金額の1%~15%で利用金額により変動する。
直近の業績・今期業績予測
2020年12月期第2四半期
2020年12月期第2四半期(4~6月)は緊急事態宣言の中、外出自粛、休業要請によりECの需要が高まった。決算結果は売上高は36億8,176万円(前年同期比118.2%増)、営業利益が6億1218万円(前年同期は営業損失1億3,567万円)、四半期純利益が5億399万円(前年同期は四半期純損失1億3,619万円)だった。
販管費はTVCMなどのプロモーション強化により前年同四半期比で110.4%増と大きく増加するも、営業利益は同846.8%の増加となり創業以来初の営業黒字を計上した。
BASE事業ではGMV(流通取引総額)は注文ベースで436億円、決済ベースで385億円(前年同期比注文ベース123.7%増、決済ベース126.7%増)だった。売上高は32億7,624万円(前年同期比134.7%増)、セグメント利益は7億7,486万円(前年同期比2100.4%増)だった。BASE事業のセグメント利益率は23.65%だった。テイクレート(取引手数料、売上/GMV)は8.5%だった。
PAY事業では流通総額は148億円(前年同期比39.0%増)、売上高が3億9,218万円(前年同期比35.2%増)、セグメント損失が5,230万円(前年同期がセグメント損失7,474万円)だった。コロナの影響で2020年2月以降一部のオフライン事業を営む既存加盟店のGMV(流通取引総額)が大きく減少した。テイクレートは2.6%だった。
その他事業では売上高が1,333万円(前年同期比928.9%増)、セグメント損失が2,429万円(前年同期がセグメント損失2,844万円)だった。
財務面では、累積損失を解消し、資本剰余金11億3085万円を減少し、利益剰余金に振り替えた。
キャッシュフローに関しては、営業活動によるキャッシュフローは四半期純利益が黒字化した事、営業未払金の増加などにより前年同期比約2.5倍の26億1,153万円となった。
投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出により▲2,485万円となった。財務活動によるキャッシュフローは新株予約権の行使による株式の発行による収入で137万円となった。現預金は前四半期と比べ36%弱増加し、97億8,346万円となった。
機能の充実
第二四半期にBASEは抽選販売機能やブロックリスト機能の提供を始め、より多くのファンが商品購入の機会を得られる機能を提供した。
この他に外部サービスとの連携により製造・仕入れ、販売、在庫管理、発送業務までをサポートする拡張機能を充実させた。
2020年12月期通期業績予想
BASEは業績予想を上方修正し、売上高を7,520百万円~8,100百万円(前年同期比+95.3%~+110.4%)、売上総利益4,500百万円~4,830百万円(前年同期比+101.7%~+116.5%)を見込んでいる。
認知度向上及び顧客獲得のための積極的な広告宣伝、サービス拡大のためのプロダクト人員等の採用等の先行投資を加速させる見込みであるため、販管費は当初計画より大幅な増加の予定。営業利益は0百万円~500百万円を見込んでいる
BASE事業の通期予想
5月25日の緊急事態宣言解除後のBASE事業のGMVの成長率は減速した。しかし、足元の状況は期初予想よりは高い水準で推移している。
通期予想はGMV(注文)が880億円から960億円、GMV(決済)が783億2,000万円から844億4,800万円、売上高が66億円から70億8,000万円の予想。
テイクレートは1~6月の8.5%から0.1pt低下の8.4%の予想。
売上総利益は43億9,000万円から47億1,000万円の予想。GMV(決済)比率は1~6月期の5.7%から0.1pt低下の5.6%、売上総利益率は1~6月期の67.3%から0.8pt低下の66.5%を予想している。
PAY事業の通期予想
PAY事業についての通期予想はGMVが34~38億円、売上高が9~10億円、テイクレートが2.6~2.7%。売上総利益が9~10億円、GMV比率は1~6月期と変わらず0.3%、売上総利益率も変わらず10.0%を予想。
財務状況及び中長期の展望
過去3年のキャッシュフロー状況
(単位:千円) | 2017/12 | 2018/12 | 2019/12 |
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営業キャッシュフロー | 228,579 | ▲400,529 | 870,017 |
投資キャッシュフロー | ▲66,433 | ▲338,215 | ▲51,524 |
財務キャッシュフロー | 1,501,656 | 1,022,743 | 1,879,834 |
現金及び現金同等物期末残高 | 4,124,532 | 4,408,530 | 7,195,414 |
中長期的な展望
野村総研の調査によると2022年までの国内B-to-CのEC市場の規模は2020年に22.3兆円、2021年に24.1兆円、2022年に26兆円になるとの予測をしている。市場規模は大きく拡大するが、EC化率は日本では8.5%と米国9.7%、中国29.7%、韓国22.7%、 英国20.7%に比べ低く、EC化率が進む余地はまだまだ大きい。
今後5Gの普及とともに中国で行われているようなライブ配信動画で商品を紹介・販売するライブコマースなどの新しい形態のECが普及する可能性もある。
成長するB-to-CのEC市場において個人、小規模事業者をターゲットにECプラットフォームを提供しているBASEの優位性は今のところ不変のように思える。月額費用がなしという新規ユーザーにとってほぼリスクがゼロでECショップを始められる決済機能付きECプラットフォームは他企業にはない魅力である。
月額費用負担がない事により、売れない店舗に取っての固定費負担がなく、会社は開示をしていないが解約率も他のECプラットフォームより圧倒的に低いと推測される。
また、BASEは個人、小規模事業者に加えて副業希望者や起業希望者もターゲットにしている。経済産業省の「商業統計」、総務省の「経済センサス」、みずほ総研の「副業・兼業の広がりの可能性」の資料を基にBASEが独自にまとめた数字によると、副業希望者が約2,200万人、個人事業者が155.8万人、10人未満の小規模事業者が134.1万事業所との事である。
この大きいセグメントをターゲットにBASEはサービスの認知度向上、新規ユーザーの獲得、プロダクトの強化、決済機能以外の付加価値向上によりGMV及び売上総利益の最大化を目指している。
BASE事業については60%台後半という売上総利益率の高さから早ければ2021年12月期から黒字化すると予想する。しかし、PAY事業、その他事業については約10%という低い売上総利益率から黒字化するのに3、4年は要するのではないかと推測する。
投資判断
株価は2020年5月半ばに2020年12月期第一決算の結果を発表して以来上昇軌道に乗った。現在の株価バリュエーションは2020年12月通期の予想EPSの高いレンジの19.30円を使って予想PERは515倍、PBRが55.45倍。2020年12月通期の予想売上高の高いレンジの81億円と使って予想PSRが25倍である。
黒字化するのが早くても2021年12月期からであるが、EC関連銘柄のコア銘柄になり得る企業であるので株価下落時には買っておきたい銘柄である。
プロフィール
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
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