執筆:西村 麻美


 

 

基本情報

 

企業概要

1957年創業の愛知県名古屋市に本社を置く日本最大手のコンタクトレンズメーカー。

 

株式関連情報

株価5,220円(2020/8/4)
発行済株式数38,015,944株(うち自己株式287,836株)
上場市場東証一部、名証一部
時価総額1,984億円

 

従業員数

3,548名(連結、2020年3月時点) 
他に平均臨時雇用者514人

 

財務データ

 2016/32017/32018/32019/32020/3
売上高(百万円)67,33272,05276,67280,89884,519
営業利益(百万円)3,5473,9104,3945,5717,033
当期利益(百万円)2,2242,5432,6573,5764,060
EPS(円)62.5271.7575.67101.63112.25
純資産(百万円)38,43937,68140,12142,54953,520
BPS(円)1,049.181,072.011,138.621,205.461,414.80
総資産(百万円)68,90172,33671,70678,27587,286

 

ビジネスモデル

 

定額サービス「メルスプラン」

メニコンは定額サービスの「メルスプラン」を2001年に開始した。「メルスプラン」はコンタクトレンズを購入するのではなく、豊富なコンタクトレンズの種類(使い捨て、2週間交換、1か月交換、3か月交換、ハードレンズ、ソフトレンズ等)から自分に合ったコンタクトレンズを選び、入会金、定額料金を払い、トラブル時には無料でレンズ交換、またいつでも度数や種類の変更が可能なプランである。

入会金3,000円と月額料金は1,800円から5,000円までコンタクトレンズの種類により違う。また、月額500円をプラスするだけで、ケア用品を自宅に宅配してくれるサービスもある。

2020年3月末時点で、「メルスプラン」の会員数は133万人になった。

会社側にとっては使い捨てコンタクトレンズが一番利益率が高いので、「メルスプラン」会員限定で使い捨てレンズを特別価格で買える特典を提供する事によりメルスプランの会員をできるだけ使い捨てレンズを使うように誘導しているようである。

メニコンでの過去4年の使い捨てレンズのCAGR(年平均成長率)は18%である。

 

オルソケラトロジー(角膜矯正)用レンズ

オルソケラトロジーは特殊なカーブデザインが施されたハードコンタクトレンズを就寝時に装着することで角膜形状を変形して矯正し、主に近視などの治療をする角膜矯正療法。

メニコンはオルソケラトロジー用レンズ(オルソレンズ)を製造するアルファコーポレーションを2016年に買収した。アルファコーポレーションは2009年にオルソレンズの販売許可を厚生労働省から取得。アルファコーポレーションは中国でオルソケラトロジーレンズの販売許可を持っており、近視人口が増加している中国で、オルソケラトロジー市場に参入する目的で買収を決めたようである。

オルソレンズは視力矯正だけでなく、近視の進行抑制という効果もあり、レーシックのように角膜をレーザーで削り取る手術が必要がない事から近年伸びている視力矯正法である。

オルソケラトロジーは日本より中国で先に広がり、オルソレンズの中国における市場規模は約80万人。日本では約2万人。スマートフォンの使用から近視になる人が多く、オルソレンズ市場は普通のコンタクトレンズ市場より高成長が期待されている。

メニコンでは過去4年間のオルソレンズのCAGR(年平均成長率)は19%である。

 

海外事業

メニコンは海外に進出したのが1977年と古く、フランスに現地法人を設立した。現在は海外拠点はオランダ、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリア、アメリカ、韓国、中国、シンガポール、オーストラリアにあり、海外売上は2020年3月期で118億円を計上し、総売上高の約14%を占める。

定額サービスは海外では提供していなく、主力商品として力を入れているのは利益率が一番高い使い捨てレンズとオルソレンズである。

 

中期経営計画

メニコンは中期経営計画「VISION2020」で2021年3月期の売上高1,000億円、営業利益率10%を目標としている。

2020年3月期時点で売上高は845億円、営業利益率は8.3%まで伸びた。使い捨てコンタクトレンズの売上の伸びとともに収益性は向上しており、キャンペーンや乱視対応の使い捨てレンズ投入など製品ラインアップの拡充などにより今期も順調に使い捨てコンタクトレンズの売上は伸び、中期経営計画の達成は高いと思われる。

 

財務状況と経営指標

 

過去3年のキャッシュフロー状況

(単位:百万円)2018/22019/22020/2
営業キャッシュフロー7,8577,0238,712
投資キャッシュフロー900▲4,951▲7,656
財務キャッシュフロー▲4,1961,825▲3,438
現金及び現金同等物期末残高15,48419,28616,791

2018年3月期の投資キャッシュフローがプラスだったのは有形固定資産の売却による収入が有形固定資産の取得による支出額より大きかったためにプラスになった。

また、2019年3月期の財務キャッシュフローがプラスなのは転換社債型新株予約権付社債の発行による収入が借入金返済や社債の償還による支出より大きかったためである。

 

有利子負債、設備投資額、減価償却費

メニコンの過去3年間の有利子負債、設備投資額、減価償却費は以下である。

(百万円)2018/32019/32020/3
有利子負債15,98118,7519,114
設備投資額4,4746,5609,667
減価償却費3,9663,6564,315

2020年3月期は設備投資額が前年に比べて47%増えたが、これは使い捨てレンズの製造工場の生産ラインを増設した事による。設備投資額は増えたが有利子負債は前年に比べ約半分に減少した。

 

主な経営指標

 2018/32019/32020/3
自己資本比率55.9%54.3%61.2%
配当性向33.3%27.6%24.9%
営業利益率5.73%6.88%8.32%
総資産回転率1.1回1.0回1.0回
EBITDA(百万円)8,5659,40112,454
ROA3.7%4.8%4.9%
ROE6.8%8.7%8.5%
ROIC4.9%5.6%7.2%

過去3期は業績の向上に合わせてほぼ全ての指標が改善している。特に営業利益は2020年3月期は前期に比べて144bps改善しているが、今期も使い捨てレンズの売上の伸びにより更に改善が見込まれる。

また、EBITDAは2020年3月期は前期に比べて32%も伸びている。

 

投資判断

メニコンは定額サービスを2001年と約20年も前から始めており、会員数は133万人以上いる。定額サービスで強固な顧客基盤を築き、会員と直接コミュニケーションを取る事により、マーケティング、製品開発に生かしている

また、オルソレンズという通常のコンタクトレンズより高成長が期待できる製品のマーケットも国内のメーカーの買収をして参入している。

スマートフォンの普及により近視や目のトラブルを抱える人は増え、コンタクトレンズは成長市場だと考えられるが、メニコンは国内及びアジアを中心とする海外で更に成長する余地があると判断している。

株価バリュエーションはPBR 3.68倍EV/EBITDA13倍と割安ではないが特に割高でもなく、安心して持っていい銘柄だと考える。

 

プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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