前回仮想通貨についてのレポートを書いたのが半年前であったが、以降11月にトランプ氏が再選され、仮想通貨に友好的な政策を掲げている事から市場は活発化し、12月5日にビットコイン(BTC)は10万ドルを突破した。このレポートでは活況な仮想通貨市場の恩恵を受けトランプ氏再選以降上昇しており、かつまだ割安な仮想通貨関連銘柄5選を紹介する。
仮想通貨市場の拡大
2024年の年初、BTCは約4万ドルで取引を開始し、12月5日に10万ドルを記録し、その後調整下落があり年初来のBTCの年初来騰落率は12月10日迄に150%であった。取引高に関しては日本暗号資産取引業協会(JVCEA)によると2024年1月から10月までの月間平均取引高は約1兆3,979億円に達し、2023年1月から12月までの月間平均取引高約6,878億円から103.25%の伸び率となり、取引規模は約2.03倍に拡大したとの事である。2024年11月の日本国内の取引高のデータはJVCEAではないが、米国の仮想通貨関連の分析企業のNewhedge社によると2024年11月の仮想通貨の現物取引高は2兆9,000億ドル(約435兆円)となり、2021年5月以来の高水準となった。この背景にはトランプ氏の再選を受けて仮想通貨への友好的な政策への期待から仮想通貨への投資が増加したと考えられる。仮想通貨市場全体の時価総額は2024年12月11日時点で約3.5兆ドルである。これは、世界最大の企業であるNvidiaの時価総額の約3.3兆ドルを少々上回る規模である。
BTCとナスダックの相関係数の推移
BTCとナスダックの間に正の相関関係があると2020年以降に指摘されるようになったが、2020年以降のBTCとナスダック100指数(NDX)の相関関係の推移は以下のようになる。
2020年:
- 新型コロナウイルスのパンデミックにより、金融市場全体が不安定化。
- この時期、BTCとNDXの相関係数は一時的に上昇し、0.5前後を記録。
2021年:
- 年初から4月にかけて、BTC価格が急騰。
- しかし、5月から7月にかけて、中国のマイニング禁止措置などの影響でBTC価格が下落。
- この期間、BTCとNDXの相関係数は低下し、負の相関を示す場面も。
2022年:
- 米国の金融政策の影響で、株式市場と仮想通貨市場が連動する傾向が強まる。
- BTCとNDXの相関係数は0.6〜0.8の高い水準で推移。
2023年:
- 市場のボラティリティが低下し、BTCとNDXの相関関係も弱まる。
- 相関係数は0.3〜0.5の範囲で推移。
2024年:
- 年初の現物BTC ETFの承認により、機関投資家の参入が増加。
- これに伴い、BTCとNDXの相関関係が再び強まり、相関係数は0.7前後で推移。
現物BTCのETF認可がもたらしたインパクト
2024年年初に現物BTCのETFが認可され、BTCとテック株、成長株との相関関係が高まったと言える。従来の金融市場で取引されているETFを通じて、機関投資家がBTCにアクセスしやすくなった。また、テック株や成長株を主要ポートフォリオに含むファンドが、BTCをヘッジやリターン強化の目的で組み入れる動きが進んだ。
BTCとテック株、成長株に関してはどちらもリスク資産とされ、成長を期待する投資家層から支持され、投資家がリスクオン、リスクオフの行動を取る際、両社が同じ方向に動きやすい傾向がある。また、BTCとテック株の投資家は、どちらもブロックチェーン技術やAIなどの新興技術に注目しており、この共通点が投資行動の類似性を生む一因となっていると言えるだろう。
ETFの取引が増加し、株式市場全体の取引量にも好影響を与えた。BTC価格の透明性と信頼性が向上し、関連資産の価格変動が抑制された。また、従来の株式市場に投資していた機関投資家が仮想通貨市場にも参入し、取引量の増加に寄与した。
BTCは以前はインフレや法定通貨リスクに対するヘッジ手段として位置づけられ金と類似した投資対象としてみなされてきた。BTCは株式や債券との相関が低かった為に、伝統的なポートフォリオに組み込むことでリスク分散効果をもたらしていた。しかし、現物BTCのETFの認可は、BTCを株式市場との関連性が高いリスク資産に転換させる契機となった。
次期トランプ政権で期待される事
トランプ次期政権に仮想通貨関連業界で期待されている事は主に以下のような事がある。
①規制緩和と法律の明確化
トランプ氏の前政権時には規制緩和を重視する姿勢が見られ、特に金融分野での自由市場政策が推進された。暗号資産に関する規制が緩和されることで、新しいプロジェクトや取引所の設立が容易になる可能性がある。また、現行の法律の曖昧な点を明確化し、業界全体の透明性が向上する可能性がある。
②CBDC(中央銀行デジタル通貨)への対抗政策
トランプ氏が中央集権的な金融政策に懐疑的な立場を取る可能性があるため、CBDCに対して自由市場を重視する暗号資産支持の動きが強まると予測される。民間の暗号資産や分散型金融(DeFi)が強化され、既存の金融システムの枠組みを補完または革新するプロジェクトが成長する可能性がある。
③税制優遇や負担軽減
トランプ氏は過去に税制改革を推進しており、暗号資産の取引や保有に関する税制が簡素化または軽減される可能性がある。これにより、暗号資産投資への障壁が低くなり、市場の流動性と参加者が増加することが期待される。
④新しいテクノロジーへの投資促進
トランプ政権は、国内での産業発展を支援する政策を展開する可能性があり、ブロックチェーン技術への政府支援や補助金が期待される。ブロックチェーン技術が金融以外の分野(医療、物流、ガバナンスなど)にも広く採用され、業界全体が成長する機会が増えると可能性が高い。
仮想通貨関連銘柄5選
さて、ここからはトランプ氏再選後躍進した仮想通貨市場からの恩恵を受ける関連銘柄でまだ割安であり、上値が期待できる日本株5選を紹介する。株価及びバリュエーションは全銘柄2024/12/11の終値ベースである。
①マネックスグループ(8698)
企業概要:金融持株会社。傘下にマネックス証券、ドコモマネックスホールディングス、マネックスアセットマネジメント、マネックスファイナンス、マネックスクリプトバンク、マネックスSP信託、カタリスト投資顧問、コインチェック、マネックスベンチャーズ等。仮想通貨交換業のコインチェックは2024/12/11にナスダックに上場した。コインチェックの時価総額は17億4,000万ドル(約2,700億円)
株価 | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
1,087円 | 2,789億円 | 18.8% | 23.7% | N/A |
実績PER | PBR | EV/EBITDA | 配当利回り | PSR |
18.5倍 | 2.1倍 | N/A | 3.76% | 4.2倍 |
②GMOインターネットグループ(9449)
企業概要:インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業を手掛ける。仮想通貨関連事業では仮想通貨マイニング事業、仮想通貨交換業のGMOコイン(GMOファイナンシャルグループの子会社なのでGMO本体にとり孫会社)、ステーブルコイン事業をアメリカで営んでいる。
株価 | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
2,734円 | 2,863億円 | 4.5% | 17% | 4.2% |
実績PER | PBR | EV/EBITDA | 配当利回り | PSR |
15.8倍 | 3.4倍 | 5.7倍 | N/A | 1.0倍 |
③SBIホールディングス(8473)
企業概要:金融持株会社。傘下にSBI証券、SBI新生銀行、住信SBIネット銀行、SBIインシュアランスグループ、SBIグローバルアセットマネジメント、SBIインベストメント等がある。仮想通貨関連事業ではSBI VCトレード、ビットポイントジャパン(リミックスポイントより買収)、SBIデジタルファイナンスを手掛けている。
株価 | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
3,994円 | 1.21兆円 | 4.4% | 7.0% | N/A |
実績PER | PBR | EV/EBITDA | 配当利回り | PSR |
11.3倍 | 1.0倍 | N/A | N/A | 0.9倍 |
④KDDI(9433)
企業概要:国内通信事業者2位。「au」、「UQモバイル」、「au povo」等多層的な料金プランで異なる顧客層をターゲットにしている。仮想通貨やブロックチェーン技術を活用した事業を数多く手掛けている。仮想通貨やNFTの管理をするウォレットの「αU」の提供。仮想通貨交換業者であるディーカレットに出資。ブロックチェーン関連事業を展開するHashPort、Animoca Brandsとの事業提携をしている。
株価 | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
4,978円 | 10.03兆円 | 32.5% | 12.4% | 7.0% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | 配当利回り | PSR |
14.2倍 | 2.0倍 | 7.0倍 | 2.9% | 1.7倍 |
⑤セレス(3696)
企業概要:セレスは、子会社の株式会社マーキュリーを通じて暗号資産販売所「CoinTrade」を運営。ステーキングサービス「CoinTradeStake」の提供や、仮想通貨マイニング事業にも参入している。仮想通貨事業以外には国内最大級のポイントサイト「モッピー」、アフィリエイト等モバイルサービス事業を手掛けている。
株価 | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
3,285円 | 378億円 | 32.7% | 4.6% | 4.0% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | 配当利回り | PSR |
31.4倍 | 3.9倍 | 17.7倍 | 1.2% | 1.5倍 |