トランプ政権での関税はカナダ、メキシコに25%、中国に追加関税10%の措置が3月4日から発動したが48時間後に方針が撤回された。米国・メキシコ・カナダ協定に準拠した製品は4月2日まで延期となった。自動車は4月4日まで適用外とされている。鉄鋼・アルミには25%の関税が3月12日から発動される。また、トランプ大統領は4月2日から自動車や半導体、医薬品などに対する追加関税を検討していると報じられた。2月以降、関税政策によりアメリカ国内はインフレや経済成長の鈍化が懸念されている。アメリカは日本の最大輸出相手国であり、日本株の投資先としては内需株が安全であると考えているが、このレポートでは業績が良く上値が望めそうな内需株について解説する。

目次

  1. アメリカは最大の輸出相手国
  2. 自動車以外にも関税リスク
  3. 関税リスクが懸念される品目及びセクター
  4. 為替は1ドル147円台に
  5. 期待できる内需株5選

アメリカは最大の輸出相手国

現在アメリカは日本にとり最大の輸出相手国である。財務省貿易統計によると2024年通年の日本からアメリカへの輸出額は21兆2,951億円であった。日本からアメリカへの輸出品目は多い順に自動車(全体の28%)、原動機(エンジン、自動車や航空機等の動力源)、自動車部品、建設用・鉱山用機械(ショベルカーやブルドーザー等の重機類)、半導体等製造装置、科学光学機器(医療用機器や計測機器などの精密機器類)等である。これら主な輸出品目は関税対象である鉄鋼・アルミニウムを使用しており、関税は完成品にも適用される為に日本経済への影響はかなり大きくなる事が予想される。

自動車以外にも関税リスク

トランプ大統領がカナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課すと初めて発表したのは、2025年1月30日だった。この関税は2月4日に発動される予定だったが、両国がアメリカへの不法移民や違法薬物の流入に対する対策を講じる時間が必要だったため、3月4日まで1カ月間延期された。その後、トランプ大統領は3月3日に関税を予定通り3月4日から発動すると再度表明した。

2月10日にトランプ大統領は鉄鋼・アルミニウムの輸入に25%の関税を賦課する大統領令に署名した。関税はカナダ産とメキシコ産を含む米国に輸入される全ての鉄鋼・アルミを対象に幅広く適用され、完成品も含まれる。金属製品への関税の税率は「さらに引き上げられる可能性がある」と警告した。新しい税率は3月12日に発効する。

自動車や半導体、医薬品に税率25%前後の輸入関税を賦課する公算が大きく、4月2日にも発表する可能性があると2月18日に語っており、自動車以外の輸出品にかなり広範囲に関税リスクが及ぶ状況になっている。

関税リスクが懸念される品目及びセクター

実際に関税リスクが懸念される品目であるが、上述した品目以外に関税リスクの懸念されるものについて記しておく。

家電製品:冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの大型家電製品は、内部構造や外装に鉄鋼やアルミニウムを使用している。これらも関税の対象となる可能性がある。

電子機器:パソコン、スマートフォン、テレビなどの電子機器も、フレームや内部部品にアルミニウムを使用することが一般的である。これらの製品も影響を受ける可能性がある。

ゲーム機や関連ディバイス:ゲームソフト自体は、従来の関税分類では無税または低率の関税が適用されていた。しかし、新たな関税政策の詳細が明らかでないため、今後の影響については注意が必要である。米国のゲーム業界団体であるエンターテインメントソフトウェア協会(ESA)は、ゲーム産業に「重大な悪影響」をもたらす可能性があるとの懸念を2月上旬に表明している。また、任天堂はカンボジアやベトナムでの生産を拡大することで、地政学的リスクを回避する準備を進めている。

為替は1ドル147円台に

為替はトランプ大統領が石破政権に円安操作をするなと伝えたと報じられ、また「通貨安の国に関税を課す」と述べたことにより、1ドル149円台に突入したが、関税により米景気後退リスクが高まっており、為替は3月7日時点で148円台で推移している。また、10年債利回りは16年ぶりに1.5%台に乗せ、日銀は春闘の賃上げを確認したら追加利上げを実施する可能性があり、その場合は為替は更に円高にふれるのではないかと推測される。このような経済状況で日本株の投資先としては銀行株、内需株がアウトパフォームするのではと考えられる。銀行株に関しては1月末に「メガバンクより狙い目?出遅れ地方銀行の割安株を徹底分析」 を書いているのでこのレポートでは除外する。

期待できる内需株5選

ここからは関税リスクがなく、かつまだ上値が期待できる内需株5選について解説していく。全銘柄とも株価、バリュエーションは2025年3月7日の終値ベースで算出した。

 

①カンロ(2216)

企業概要:飴、グミ等が主力の菓子製造企業。三菱商事が筆頭株主で販売代理店。原材料高騰を受けて価格改定をしたが、売上数量は落ち込まなかった。ピュレグミの販売増で2024年10月に工場能力を増強した。人気急騰で休売になった「じゅるるシャインマスカット」は2025年3月に再販開始。2012年に発売された人気商品「グミッツェル」が原宿の東急プラザ内に常設店が2025年3月5日にオープンした。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
3,400円478億円57.8%19.4%18.8%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
16.0倍2.8倍7.6倍2.7%1.0倍

業績推移:過去4期連続最高益更新。2022年12月期から2024年12月期の間に売上高は26.5%増の317億円、粗利率は3pt改善の41.5%、営業利益は2.2倍増の43億円、営業利益率は5.8pt改善の13.5%、純利益は2.4倍増の33億円と大幅に改善した。カンロは少子高齢化の日本国内で若者の飴離れが問題だと考え、Z世代に焦点をあて「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」を立ち上げ、直接現役高校生よりヒアリングを行い商品開発やプロモーションを行う事により次々にヒット商品を生み出す成長企業となった。為替が円高になる事により、水飴、ゼラチン、砂糖等の原材料価格の低下により利益成長が見込まれる。

 

②鎌倉新書(6184)

企業概要:葬儀、墓、仏壇などの終活関連のポータルサイト運営、仏教関連、供養業界向けのビジネス書籍などの出版を行っている企業。「いい葬儀」、「いいお墓」、「いい仏壇」、「いい相続」などの供養に関する情報サイトを運営、また供養業界向けビジネス情報誌『月刊仏事』を刊行している。葬儀・仏壇仏具・墓石業者のウェブコンサルティングサービスやセミナーなども展開している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
461円171億円80.5%15.8%15.7%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
22.2倍5.1倍12.5倍4.3%0.7倍

業績推移:2022年1月期以降連続最高益を更新しており、2025年1月期も最高益更新予定。終活に特化した企業であるが、その中でも葬祭と自治体支援(46都道府県459自治体と提携中)が高い伸びをしている。2024年11月に葬儀保険のベル少額短期保険を買収し、鎌倉新書の連結子会社となった。3Q決算結果は売上高が前年同期比16%増の49.4億円、営業利益が同16.2%増の5.62億円、四半期純利益が同14.4%増の3.51億円となった。株主資本比率が80.5%と高過ぎる印象があるが、ROEは15.8%と高い。

 

③高速(7504)

企業概要:宮城県地盤の食品軽包装資材および工業包装資材の専門商社。食品容器(トレー、弁当容器、フードパック)、フィルム・ラミネート、紙製包装資材、ラベル類、段ボール製品等の製造販売を手掛けている。食品に注力するドラッグストア向け容器需要を開拓し顧客増を図っている。西日本へ販路拡大で姫路、広島の営業拠点の要員を増加。九州進出も視野に入れている。21期連続増配達成。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
2,160円418億円57.6%8.0%7.3%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
13.3倍1.1倍6.5倍2.5%4.8倍

業績推移:2018年3月期より8期連続最高益更新。今期も最高益更新予定。コロナ禍や円安でも業績に大きな影響はなく、多種多様な製品を取り扱う事により業績のボラティリティは相殺されている。今通期の会社計画は売上高が前期比5.4%増の1,120億円、営業利益が同2.9%増の43.5億円、当期純利益が同1.1%増の31.5億円の予定である。企業価値向上の為に経営陣のみならず、一般社員にも株式インセンティブ制度を整備した。円高により利益率向上が期待できる。

 

④DCMホールディングス(3050)

企業概要:ホームセンター業界2位。HCの「DCM」や工具・金物・作業用品専門店の 「ホダカ」、小型店「ニコット」、家電を中心とした総合ECサイト、法人販売の「XPRICE」、保険代理店業務・宅地建物取引「DCMライフサポート」を展開。M&Aに積極的。2023年ケーヨーをTOB。PB商品売上比率高く、今期PB比率目標30%、2030年度に50%を目標としている。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
1,424円1,908億円37.8%8.2%3.5%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
10.7倍0.7倍7.2倍3.1%1.7倍

業績推移:DCMの過去の業績推移を見ると、ボラティリティは大きくないが、為替等の要因で多少の凸凹があった。TOBをしたケーヨー(2023年2月期の売上は956億円、純利益は37億円)については2024年9月に吸収合併されて、2025年3月期3QよりDCMの業績に反映されるようになった。傘下の企業の中で工具・金物・作業用品専門店の 「ホダカ」の業績が好調である。ホダカは全国で65店舗あるが、既存店売上が2025年2月期中間決算時点で前期比+5.7%であった。ケーヨーの連結効果により売上高総利益率は0.7ポイント改善した。2025年2月期通期の会社計画の業績は売上が前期比12.7%増の5,505億円、営業利益が同18.5%増の340億円、当期純利益が同▲9.5%の194億円の予定である。

 

⑤ラクトジャパン(3139)

企業概要:乳原料・チーズ・食肉製品を核とした食品原料を扱う独立系商社。北米、欧州、オーストラリアに拠点、東南アジアに自社工場。健康志向でプロテイン飲用者が増加し、原料の需要が拡大中。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
2,889円288億円33.8%11.4%5.4%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
8.5倍1.0倍9.9倍3.5%0.3倍

業績推移:過去3期の間に業績が拡大している。2024年11月期通期は売上、利益ともに過去最高を達成した。中期経営計画を一年前倒しで達成した。売上高は前期比7.9%増の1,709億円、営業利益は同39.9%増の44.5億円、営業利益は0.6pt増の2.6%、当期純利益は同53.6%増の31億円であった。今期に関しては国産脱脂粉乳の在庫適正化や業務用需要の増加により輸入乳原料が本格的に回復するのを見込んでいる。またアジア向けチーズ製造販売も好調、プロティン需要も拡大しており、会社計画では今期も最高益更新の予定である。