2024年は3月に日銀が17年ぶりにマイナス金利を解除し、7月末には政策金利を0.25%とし、一方米FRBは9月に2020年3月以来四年半ぶりに政策金利を0.5%引き下げ、11月、12月にはそれぞれ0.25%の引き下げがあり、日米の金融政策が逆に向かう転換点となった年であった。

この記事では、そんな一年間の重要な出来事を簡潔に振り、独自の基準で選んだ来年2025年のテンバガー5選を紹介する。

目次

  1. 2024年の米国の金融政策と株式市場
  2. 2024年の日本株式市場
  3. 2024年に人気だった投資テーマ
  4. 2025年の各国の経済成長予測
  5. 2024年度の上場企業の業績見通し
  6. 2024年にテンバガーを達成した銘柄
  7. 2025年テンバガー候補の銘柄5選

2024年の米国の金融政策と株式市場

2024年1月の米国株式市場はFRBの利下げ観測が後退し、長期金利は上昇したもののアメリカ経済がソフトランディングするとの見方が優勢となり、また企業の好調な決算発表が続き、テック株を中心に上昇した。2月下旬のエヌビディアの決算発表が大幅に市場予想を上回った事からAI関連企業への成長期待が高まりテック株が市場を牽引した。3月にFRBが公表した政策金利見通しで年内3回の利下げ予想を維持した事等を受けて、金融引き締めが長期化する事への警戒感が薄れ、NYダウは5か月連続で上昇し、3月20日には3万9,512ドルと約1カ月ぶりに最高値を更新した。

4月は雇用統計や消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、FRBの利下げ観測が後退したことから長期金利が上昇し、調整局面となった。4月27日にはフィラデルフィアを拠点とするリパブリック・ファースト銀行が破綻した。5月には主要テック銘柄の決算が市場予想を大きく上回った事が好感され主要3指数は揃って上昇し、ナスダックは前月比+6.9%上昇した。

6月はテック株主導で主要3指数は連日史上最高値を更新する展開となった。FRBは政策金利を据え置き、年内の利下げ回数を1回と発表したが、年内2回の利下げを望む声もあり、利下げ観測が高まった。7月半ばからはAI関連銘柄に関して莫大な投資に見合うリターンがないとの懐疑的な見方が台頭してきて、テック株は調整局面に入った。

8月5日は日本発の暴落の流れからアメリカ市場ではNYダウは3.5%の下落、S&P500は3.3%、ナスダックは3.8%の下落となった。しかし、その後は経済指標の改善や9月の利下げ観測の高まりを受けて株価は回復し、9月のFOMCでは四年半ぶりに0.5%の利下げを決定し、アメリカ経済はソフトランディングするとの見方が強まりNYダウは最高値を更新した。10月に入るとイランはイスラエルに対しての攻撃、ハマスのイスラエルに対する攻撃、イスラエルのガザ地区への空爆等中東での地政学的リスクの高まりや米10年債利回りが一時4.9%を超えるまで上昇し、リスクオフの動きから株式市場は下落した。

11月の大統領選挙ではトランプ氏が再選された。すぐ後のFOMCでは0.25%の利下げが決定され、パウエルFRB議長は政策金利を中立的な水準に戻す為に利下げの継続姿勢を示した。次期トランプ政権の経済政策への期待や好調な企業決算を受けて主要3指数は最高値を更新した。12月に入っても引き続きテック株を中心に株価は上昇し、ナスダック、S&P500はともに最高値を更新した。12月18日のFOMCでは0.25%の利下げが決定され、金利誘導目標は4.25~4.5%となった。同時に公表された金利・経済見通しでは2025年の利下げ回数が2回となり、前回見通しの9月時点での4回から半減し、利下げペースの鈍化が示唆された。パウエルFRB議長が今後のさらなる利下げについては慎重になるべきだと繰り返しコメントした事を受けてNYダウは2.6%下落、S&P500は2.9%下落、ナスダックは3.6%下落、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は3.2%下落、米10年債利回りは上昇し一時4.4%となった。また、アメリカの金利高止まり観測を受けてドル高が進み19日には1USD=157円台となった。

2024年の日本株式市場

日本株の2024年1月4日の大発会は、円安による輸出関連株の上昇と、米国テック株安の影響を受けた半導体関連株の下落が混在する形で始まりTOPIXは上昇し、日経平均株価は下落して始まったが、後に回復し円安の進行もあり日経平均株価は34年ぶりの高値をつけた。3月の日銀金融政策決定会合でマイナス金利の解除が決定されたが、当面緩和的な金融政策が継続する観測から投資家のリスクオン姿勢が強まり日経平均株価は4万台に乗せた。

4月に入るとアメリカ株式市場の調整と中東情勢の緊迫化から日経平均株価は4か月ぶりに下落した。5月に入ると日銀の金利引き上げ観測が強まり、11年ぶりに日本の10年債利回りは1%を超え、また今年度の慎重な業績見通しから株式市場は上値の重い展開となった。その後は円安やFRBが利下げに転じるとの期待から6月末には株式市場は年初来高値をつけた。7月の半ばからアメリカでテック株に関して慎重な見方が増えた事により半導体関連株は下落した。7月末の日銀金融政策決定会合では無担保コールレート(オーバー ナイト物)を0.15%pt引上げ、0.25%程度とするように決定された。

為替は利上げ決定直前の1USD=153円台から3営業日の間に1USD=141円台と急速に円高が進んだ事、市場予想より早いタイミングでの日銀の利上げ、米国経済の先行への不安等からパニック売りとなり、8月5日に日本株は1987年のブラックマンデー以来の暴落となった。日経平均株価は前週末比4,451円安(12.4%下落)の31,458円、TOPIXは310.45ポイント安(12.23%下落)の2,227.15ポイントとなった。その後株式市場は急速に回復したものの円高により前月比小幅安となった。

9月半ばに自民党総裁選の告示が行われ過去最多の9人が立候補した。株式市場では金融緩和の継続や市場フレンドリーな政策をあげていた事から高市氏の総裁就任を望む声が多かったが、金融所得課税の強化や緊縮財政路線を支持する石破氏の総裁選出に9月30日に日経平均株価は4.8%下落の「石破ショック」が起きた。10月の衆議院選挙で与党が過半数を割れとなったが、経済政策の規模拡大期待や円安等により日経平均株価は四か月ぶりに上昇した。

11月の米大統領選挙でトランプ氏の再選が決定すると外国車への関税強化の懸念、また業績不振な日産自動車の大規模リストラの発表を受けて自動車セクターのパフォーマンスは冴えなかった。11月1か月間でトヨタは5%下落、日産は10%下落、ホンダは5%下落、マツダは6.7%下落、SUBARUは8%下落した。12月の日銀の金融政策決定会合では政策金利は3会合連続の据え置きとなった。今後の利上げについては春闘の賃金上昇とトランプ次期政権での政策運営の見極めが必要であると利上げを見送った。

12月17日に経営危機に陥った日産自動車とホンダの経営統合の話が日経新聞で報じられたが、翌週23日に日産自動車、ホンダ、日産が筆頭株主の三菱自動車の社長が記者会見をし、ホンダがトップの持株会社を作り、2026年の経営統合を目指し、三菱自動車は来年1月に統合に参加するかの判断をするとの発表をした。この発表の翌日ホンダの株式は前場で一時前日比約17%上昇、一方既に先月のリストラ発表以降株価がかなり上昇していた日産は前日比ほぼフラット、三菱自動車は前日比3%近く上昇した。

12月27日にニデック(6594)が工作機械メーカーの牧野フライス(6135)の株式を公開買い付け(TOB)で取得すると発表した。買い付け価格は1株当たり1万1000円で、26日の終値を42%上回る。買い付け代金は約2573億円。ニデックのプレスリリースによると牧野フを完全子会社化する計画で、買付予定数の下限は所有割合で50%となる1169万株に設定し、買い付け開始は2025年4月4日を予定している。

 

主な株価指数の年初来騰落率

日経平均株価19.20%
Topix17.27%
東証グロース250▲9.36%
NYダウ15.33%
ナスダック34.60%
S&P50027.24%
FTSE100(英国)5.22%
DAX(ドイツ)18.49%
CAC40 (フランス)▲3.45%
FTSEMIB(イタリア)10.55%

(注:日本、米国は12/26/24まで、英国、ドイツ、フランスは12/24/24まで、イタリアは12/23/24まで)

 

2024年に人気だった投資テーマ

2024年に人気だった日本株の投資テーマであるが、引き続き生成AI関連銘柄、半導体銘柄、またデータセンター建設需要から電気工事や液体冷却、光ファイバー等の投資テーマは人気であった。この流れは2025年も継続すると思われる。地政学的リスクの高まりに防衛関連関連も人気であった。日銀の17年振りのマイナス金利解除、金利上昇観測から銀行株、また政策保有株式の売却で損保株も人気であった。またトランプ氏の再選により仮想通貨関連銘柄も人気となった。引き続きインバウンド関連も人気であった。年間を通してアクティビストにターゲットにされる銘柄も人気であった。

2025年の各国の経済成長予測

2025年の各国の経済成長の予測であるが、OECD(経済協力開発機構)が2024年12月4日に最新の「世界経済見通し」を発表し、世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を2024年に3.2%、2025年と2026年はいずれも3.3%と予測した。前回の2024年9月予測と比較して、2024年は据え置き、2025年は0.1ptの上方修正となった。

OECDの予測によると、2025年の経済成長率は日本1.5%、米国2.4%、カナダ2.0%、英国1.7%、フランス0.9%、ドイツ0.7%、イタリア0.9%の経済成長が予測されている。OECDによるとインフレ圧力の持続的抑制とのバランスを確保した金融緩和政策、および将来の財政支出圧力に対応する財政政策の再構築、を必要な政策行動として挙げた。金融政策に関しては、日本を除く先進国において政策金利の引き下げを継続することが推奨された。また、OECDはここ数カ月で貿易政策の不確実性が急上昇している点を指摘し、主要国の輸入制限措置が増え続ける中、「世界的な貿易制限のさらなる拡大は輸入価格を押し上げ、企業の生産コストを引き上げ、消費者の生活水準を低下させる」と警鐘を鳴らした。

また、12月13日に発表された日銀短観(企業短期経済観測調査)によると、「大企業・製造業」の業況判断指数(DI)は前回の9月調査から1ポイント上昇してプラス14となり、「大企業・非製造業」は▲1ポイントのプラス33で、底堅く推移した。「中小企業・製造業」は1ポイント上昇のマイナス5、「中小企業・非製造業」は▲1ポイントのプラス5だった。

2024年度の設備投資計画(ソフトウェア投資を除く)は全規模合計で前年度比9.7%増、ソフトウェア投資は全規模合計で前年度比6.7%増、大企業・製造業の設備投資計画は前年度比11.7%増、大企業・非製造業の設備投資計画は前年度比10.6%増、中小企業・製造業は前年度比15.1%増、中小企業・非製造業は前年度比6.7%増。

雇用人員判断DIは中小企業を中心にマイナス幅が拡大しており、人手不足感は高まり続けており、賃上げ圧力は継続する見込みである。

2024年度の上場企業の業績見通し

会社四季報新春号の集計によると(対象企業数3,636社)、2024年度の予想営業利益は全産業で11.6%増加する見通しとなった。増益幅が大きい企業が特に目立つのが半導体関連である。前期までの不振で発射台が低かったところからの回復に加え、生成AIを含む世界的な投資の活況が後押しになっている。東京エレクトロンやアドバンテストなどが前年度比で大幅な営業増益かつ、前号よりも増額の業績予想となりました。半導体関連の拡大も効き、電気機器の産業では前期比14.3%の営業増益を見込んでいる。逆に、減速が目立つのが自動車である。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、いすゞ自動車などが軒並み、前号よりも予想営業利益が減額となった。自動車を中心とする輸送用機器は前期比5.8%の営業減益予想である。

また12月20日に総務省から発表された11月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は2020年の平均を100とすると109.2となり、前年同月比2.7%の上昇であった。上昇率は前の月から0.4ポイント拡大した。これは政府による電気・ガス料金の補助が減った事等が主な要因である。「生鮮食品を除く食料」は4.2%上昇し、上昇率は4か月連続で拡大した。米類が63.6%上昇し、比較できる1971年以降で上昇幅は最大となった。

2024年にテンバガーを達成した銘柄

2025年のテンバガー銘柄候補の前に2024年に実際テンバガーを達成した銘柄を探したが、残念ながら日本株で2024年にテンバガーを達成した銘柄はなかった。

2025年テンバガー候補の銘柄を選ぶ基準

2025年のテンバガー候補の銘柄を選ぶにあたり、まず考慮しなければいけないのは日本は17年振りの金利上昇局面であると言う事である。銀行、保険の業績改善が期待でき、借入の多い企業にとってはコスト増により利益の下押しになるという事を考慮して銘柄選びをする必要がある。既に銀行、保険は2024年アウトパフォームしているが、金融関連でも金利上昇要因以外に業績が伸びる要因がある企業を探す事とした。

2025年に有望なセクターとして金融以外にAI、データ関連は引き続き好調であると思うが、2024年に大きくアウトパフォームした銘柄は除外し、物色対象を広げる。また、第二次トランプ政権の政策も銘柄選択において考慮する必要がある。時価総額については中・大型株をターゲットとした。

2025年テンバガー候補の銘柄5選

①日本触媒(4114)

日本触媒の株価情報

株価(12/26/24)時価総額自己資本比率 ROE ROIC
1,906.5円2,897億円73.0% 2.9% 2.1%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
17.8倍0.8倍5.3倍0.4倍5.7%

企業概要:1941年創業の様々な化学素材を供給する大手化学メーカー。アクリル酸で世界二位、高吸水性樹脂で世界首位。事業分野は生活消費財・建材分野、エネルギー・資源分野、環境、情報ネットワーク等多岐にわたる。

業績推移:日本触媒の過去三年(2022/3~2024/3)の純利益は2022/3期が237億円、2023/3期が194億円、2024/3期が110億円と減益が続いた。要因は需要の減少、コストの増加等であった。直近決算の2025年3月期中間決算結果は売上が前年同期比6.5%増の2,069億円、営業利益が同4.5%増の104億円、中間純利益が同30.1%増の89億円と増収増益であった。増益要因は、スペシャリティケミカルズ・エレクトロニクス材料などのソリューションズ製品や、アクリル酸やアクリル酸エステルの数量増と持分法投資損益の改善であった。好調な中間決算を受けて通期純利益予想を10%上方修正し、165億円とした。(前期比49.9%増)

日本触媒は2024年11月にEV向けリチウム電池用の電解質として使用され、電池寿命を6割伸ばし、航続距離を伸ばす可能性があるLiFSI(製品名イオネル)の量産体製を2028年に開始すると発表した。この計画は経済産業省の「蓄電池等の安定供給確保のための取組に関する計画」に採択された。BYDやテスラが進めている新しい電池構造や技術(4680電池やブレードバッテリーなど)にも、LiFSIが寄与する可能性があり、全固体電池が主流になるまでの間、リチウムイオン電池の改良版として「準固体電池」が注目されているが、LiFSIは、液体電解質と固体電解質のハイブリッド電池にも応用が可能である。LiFSIが採用されれば、事業ポートフォリオの安定化と収益基盤の強化に寄与する可能性が高いと考えられる。

②パルグループホールディングス(2726)

 パルグループホールディングスの株価情報

株価(12/26/24)時価総額自己資本比率   ROE   ROIC
3,100円2,692億円 47.7%19.2%16.8%
予想PER  PBR   EV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
18.2倍4.0倍8.1倍0.8倍1.6%

企業概要:衣料品や雑貨の企画・製造・販売を手掛ける企業グループ。生活雑貨「3COINS」、アパレルブランド「チャオパニック」等50ブランド以上の多様な商品と店舗展開をし、特に300円均一の生活雑貨「3COINS」がインバウンド需要もあり伸びている。店舗数は978店舗。単なるアパレルではなくSPA(製造小売業)で、商品の企画・製造から販売までを一貫して行うビジネスモデルである。各ブランド毎にターゲット層に応じたブランド・コンセプトを持ち、売れ筋商品のマーチャンダイジング・サイクルを4週間と短いサイクルにし、製造工程や流通を一元化することで、在庫リスクを最小限に抑え、消費者のニーズに迅速に応えられる体制を構築している。オムニチャンネルでのプロモーション、ECの強化等により業績を伸ばして来た。直近のアパレル事業の営業利益率は13.9%と高い。

業績推移:過去三年(2022/2~2024/2)でパルグループの純利益のCAGR(年平均成長率)は78.9%であった。直近決算の2025年2月期中間決算結果は売上高が前年同期比7.6%増の1,012億円、営業利益は同14.6%増の118億円、中間純利益が同9.5%増の77億円であった。期初会社予想では上半期に減益を予想していたが、期初予想より30.4%強い純利益となった。これを受けて通期の純利益予想を129億円から148億円へと上方修正した。(前期比15%増)中間期の上振れの要因は「3COINS+plus」という従来の300円に拘らない業態の出店が高水準で続いており、販管費抑制施策も奏功し、最高益を達成した。12月25日に発表された11月の既存店売上高は前年同期比101.6(うち小売既存店は99.8、ネット通販既存店は104.5)、全店売上高は前年同期比106.3であった。

 

③三井金属鉱業(5706)

 三井金属鉱業の株価情報

株価(12/26/24)時価総額自己資本比率ROEROIC
4,610円2,636億円48.6%8.4%4.2%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
5.7倍0.8倍4.5倍0.07倍3.6%

企業概要:大手非鉄金属メーカー。主に以下の事業を展開している。機能材料事業:エレクトロニクス製品向けの高付加価値・高品質な機能材料を提供。具体的には、半導体パッケージ基板用の極薄銅箔や、液晶やハードディスクの研磨に使用されるセリウム系研磨剤、FPDや半導体関連用途に必要なスパッタリングターゲットなどを製造・販売。このセグメントの主力製品はMicroThinという電解銅箔である。金属事業:非鉄金属の精錬・販売、貴金属のリサイクル、鉱山資源開発を行っている。亜鉛や鉛の精錬、電子部品関連に使用される金・銀・銅の供給、資源確保のための鉱山開発など、多岐にわたる活動を展開。モビリティ事業:自動車や二輪車向けの部品を製造・販売し。自動車用の排ガス触媒や、ドアラッチ(自動車のドア、トランク、シートなどに取り付けられるロック機構)の製造・販売。その他事業:非鉄金属事業で培った技術を応用し、光学用単結晶製造、インフラやコンクリート構造物の防錆に関する設計・施工、産業用ロボット、医療機器、通信用のケーブル事業など、幅広い分野で事業を展開。

業績推移:三井金属の過去三年(2022/3~2024/3)の純利益の推移は2022/3の通期純利益が521億円、2023/3が85億円、2024/3が260億円であった。2023/3の大幅減益の要因は世界的なエネルギー価格の上昇により製造コストが増加し、利益が圧迫された。また、スマホの生産量の減少、金属価格の変動等により在庫評価損の発生等が要因であった。直近決算の2025年3月期中間決算結果は売上高が前年同期比11.5%増の3,481億円、営業利益が同733.3%増の388億円、中間純利益が同354.8%増の370億円であった。期初予想を上回る中間決算を受けて通期計画を上方修正し、当期純利益を前年同期比78.9%増の465億円とした。中間期の上振れ要因はMicroThin等機能材料セグメントの主要製品の販売数量増と金属セグメントでの為替の円安や金属価格の上昇であった。通期ではモビリティセグメントの排ガス浄化触媒の販売数量増加、円安、金属価格の高止まり、在庫の好転を見込んでいる。

主力製品の電解銅箔のMicroThinは世界シェア90%以上を誇る圧倒的な競争力を持つ製品であり、AI向け半導体や高性能通信デバイスの需要増加に伴い、さらなる数量的な成長が期待できる。AI、データセンターセンター市場の成長と共に高性能半導体の需要は大きく伸びており、半導体基板における高密度配線を可能にするため、これらの用途に欠かせない素材である。また、5G、6Gといった通信インフラの進化に伴い、高周波・高密度回路基板向けの需要がさらに拡大している。こういった中長期的な成長ストーリーがあるが、2024年の非鉄金属セクターでは電線銘柄ばかりが注目されて三井金属は殆ど注目されず年初来騰落率(2024/12/26迄)は6.3%であった。2025年も非鉄金属セクターの見通しは良好だと思われるが、新たな成長銘柄として注目されるのではと思う。

④川崎汽船(9107)

 川崎汽船の株価情報

株価(12/26/24)時価総額自己資本比率ROEROIC
2,194円1.46兆円76.0%6.6%3.1%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
6.4倍0.9倍10.5倍0.05倍4.6%

企業概要:海運大手三社の一角。主に以下の事業を展開している。LNG輸送- LNGキャリアによる液化天然ガスの輸送を主力事業とし、安定的な収益基盤を確保。コンテナ船事業- 持分法適用会社のONE(Ocean Network Express)を通じて国際的なコンテナ輸送を展開。ドライバルク輸送- 鉄鉱石や石炭、穀物などの輸送に特化した船舶を運航。自動車船事業:完成車輸送に強みを持ち、自動車メーカーとの取引が多い。環境・エネルギー対応- LNG燃料船や環境対応型船舶の導入で脱炭素化を推進。

業績推移:川崎汽船の過去三年(2022/3~2024/3)の純利益の推移は2022/3が6,424億円、2023/3が6,949億円、2024/3が1,048億円であった。2024/3の大幅減益の要因はコンテナ船事業における市況の低迷とドライバルク市況の低迷が要因であった。直近決算の2025年3月期中間決算結果は売上高が前年同期比17.9%増の5,380億円、営業利益が同38.3%増の611億円、中間純利益が同201.3%増の1,832億円であった。増収増益の要因は、自動車船事業やコンテナ船事業の好調が寄与した。自動車船事業では、海上輸送台数が堅調に推移し、コンテナ船事業では、北米や欧州での需要増加に伴い、短期運賃が上昇し、業績に貢献した。好調な中間決算を受けて通期純利益の計画を2,100億円から2,350億円に上方修正した。(前期比130.4%増)

下期の市況については不確定要素が強いが、為替がこのままドル高基調で推移する事を前提とし、第二次トランプ政権のエネルギー政策ではシェールガスや石油の生産促進を中心に据え、供給の安定化を図ることが予想される。エネルギー価格が安定すれば海運企業にとっては燃料費の変動リスクが低減されると考えられる。世界的な脱炭素化の動きやエネルギー移行に伴い、環境負荷の低いLNG需要が増加しているが、欧州ではロシア産天然ガスへの依存から脱却するため、LNG輸入が急増している。市場全体としてLNGキャリアの需要は供給を上回っている。川崎汽船はLNG輸送に特化し、長期契約による安定収益を得るビジネスモデルを確立しており、環境規制対応や脱炭素化という世界的なトレンドにも適合している。今後のLNG市場の成長を見据えると、2025年以降のパフォーマンスも期待できる銘柄であると考えている。

⑤ふくおかファイナンシャルグループ(8354)

 ふくおかファイナンシャルグループの株価情報

株価(12/26/24)時価総額自己資本比率ROEROIC
3,918円7,408億円3.1%6.1%N/A
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
10.3倍0.7倍N/A0.6倍3.4%

企業概要:福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行(長崎中心)、福岡中央銀行、みんなの銀行(ネットバンク)を傘下に持つ金融持株会社。純資産は地銀首位級。傘下に銀行以外に証券、リース、保険代理店子会社を持っている。

業績推移:過去三年(2022/3~2024/3)の純利益の推移は2022/3期が541億円、2023/3期が311億円、2024/3期が612億円だった。2023/3期の減益要因は業務純益は増加し、経費も大きく減少したものの、外債ポートフォリオ再構築に伴う売却損計上により減益となった。直近決算の2025年3月期中間決算結果は経常収益は前年同期比15.6%増の2,249億円、経常利益は同25.1%増の556億円、中間純利益は同29.4%増の392億円であった。住宅ローンや中小企業向け融資が拡大した。債券ロスカットはあったが、株式売却で補った。好調な中間決算を受けて三期ぶりの過去最高益予想を上方修正した。通期の連結純利益予想を685億円から720億円に修正した。(前期比17.7%増)

2025年の金利上昇局面で預金金利利ザヤの拡大、またTSMCの熊本進出に伴い、関連企業の進出や地域経済の活性化が期待でき、設備投資や運転資金の需要、関連企業の資金需要等傘下の熊本銀行の新規取引の拡大が期待できる。