前回(第9回)に続き「公募増資」(以下POと言います)について解説しますが、年末が近づいているので、2022年のJリート市場の振り返りから始めます。
ジャーナルのリリース後、日銀の金融政策変更が発生し、Jリート市場が大きく動きましたので、最後に追記しました。
1. 2022年Jリート市場の振り返り
東証REIT指数(11月末時点、配当なし)は2021年末比で△4.6%となりました。配当込みでは、11月末時点で△1.46%です。
2022年世界のリート市場のパフォーマンス(2022年11月時点)
(出所: ニッセイ・アセット・マネジメント「J-REIT市場 現状と今後の見通し (2022年12月号) 221206_tj.pdf (nam.co.jp))
2022年のリート市場は様々な意味で激変に襲われた年でした。
コロナ禍が続く中でロシアのウクライナ侵攻が発生、さらに、先進国を中心にインフレが進行、各国中央銀行が政策金利を大きく引き上げたことから、リート市場にとってマイナス要因となる長期金利の急上昇が各国で発生しました。
これを受けて、各国のリート市場は軒並み2ケタ%の下落に見舞われました(チャートの青色バー)。
一方、インフレが進んだとはいえ水準が低く、中央銀行が金融緩和を維持する日本のJリートは、例外的に健闘したと言えそうです。
このような環境の下、Jリート市場では25件の公募増資が実施されました(12/15現在)。実施件数、調達金額共に過去5年間と比べ最低の数字に留まったことから、Jリートによる物件取得も過年度と比べ限定的でした。
J-REIT 増資等の資金調達状況と物件取得状況
(出所: ニッセイ・アセット・マネジメント「J-REIT市場 現状と今後の見通し (2022年12月号) 221206_tj.pdf (nam.co.jp))
投資口価格に元気がなかったことから公募増資をやりづらかった面もあるでしょうし、物件価格が高かったためにJリート各社が物件取得を抑制した面もあるでしょう。
2022年のJリート市場はどちらかと言えば、保有物件の売却を進めた年だったと言えそうです。
オフィスを中心に賃貸市場が冴えない一方、光熱費を中心に物件維持管理費用が上昇、リートの収益が圧迫される中、物件譲渡益の活用により分配金を維持する動きが目立ちました。
2024年1月以降のNISAの非課税投資枠の大幅な拡大が決定し、投資デビューや、投資の増加が期待される中、高配当で値動きが比較的穏やかなJリートは、手掛けやすい投資対象として、注目を集める局面もありそうです。
11月末時点の個別リートの投資口価格を1年前と比べると、上昇率のTop3は、ジャパン・ホテル・リート(8985)、インヴィンシブル(8963)、いちごホテルリート(3463)のホテル系リートで、コロナ禍からの回復を背景に、投資口価格の上昇率は20%を超えました。
反対に下落幅が大きかったリートは、サンケイリアルエステート(2972)、産業ファンド(3249)、大江戸温泉リート(3472)の順で、2ケタ%の値下がりでした。
また、物件タイプ別では、コロナ禍で選好を集めた物流系リートが価格を下げる傾向が見られ、11月末の物流フォーカス指数は1年前と比べ△9.3%となりました。
Top3、Bottom3のリートのうち、POを実施したリートはありませんでした。
また、2022年中に2回のPOを実施したケネディクス・レジデンシャル・ネクスト(3278)及び三菱地所物流リート(3481)の投資口価格は、1年間でそれぞれ+1.4%、△6.9%と、同種のアセットタイプのリートと特に異なる動きとはなっていません。
一方、公募増資を契機に投資口価格が大きく変動したのは、ヘルスケア&メディカル投資法人(3455、以下HMCと言います)でした。1月17日の公募増資の決議から価格決定にかけて、投資口価格は20%近く下落しました。
但し、2月以降は大きく反転上昇し、11月初旬には1月下旬の価格決定時の投資口価格から、50%以上値を上げました。足もとはやや頭を押される展開が続いていますが、11月末日の投資口価格は、ホテル系3リートに続く前年比20%超の上昇となりました。
振り返ってみれば、HCMの公募増資で投資口を取得した投資家にとっては、9ケ月間で約60%の上昇という、Jリート市場ではなかなか見ないレベルの値上がりを享受できるプラチナペーパーを手に入れたと言えるかもしれません。
このように公募増資は、魅力的な投資機会となり得るので要注目です。前回説明した通り、JリートのPOでは分配金が下がるケースは少ないので、POにより一時的に投資口価格が下がっても、時間の経過に伴って見直されることが往々にあります。
例年1月はJリートのPOが多く実施される月です。POに参加することで、思わぬお年玉を手に入れるチャンスが訪れるかもしれません。
また、今後一般投資枠の240万円/年への倍増が予定されている非課税投資枠NISA枠を使ったPOへの参加を検討する機会もあるでしょうから、この機会に勉強しておきましょう。
2. 公募増資(PO)参加のメリット
PO参加の大きなメリットは、市場価格よりも安く投資口を取得できることです。
PO参加者の投資口の購入価格は、価格決定日(プライシング日)の終値にディスカウント率と呼ばれる割引が入るため、その時点の市場価格よりも低くなります。
Jリートの公募増資におけるディスカウント率は、足もと2.0%~2.5%といった水準で、一般事業法人に比べて小さめですが、市場価格よりも安く投資できるのは魅力的と言えるでしょう。
また、後で説明する引受証券会社による買い支えも、投資家に一定の安心を与えてくれそうです。
さらに、POでの投資口の取得には証券会社の手数料がかかりません。最近はネット証券を中心に手数料が非常に安くなったため、以前に比べありがたみが減った感はありますが、POに参加するメリットの1つではあります。
一方、このようなメリットがある事から、個人投資家においてPOの人気は高く、思い通りの配分を受けるのはなかなか難しいという面はあります。
また、ディスカウントが適用されるのは、一定の不自由さに対する代償とも言えます。
POでは、申し込みと価格決定に時間差があるため、投資家は価格決定までの間、投資口をいくらで、何口買うことになるのか分かりません。結果的に想定よりも高い取得価格になる可能性もあれば、想定よりも少ない割り当てしか受けられない事もあります(逆のケースも発生します)。
ただし、想定よりも高い価格になるとか、想定よりも少ししか買えないという事は、その公募増資が人気であったことの裏返しとも言え、PO参加が報われる可能性は相応に高そうです。
では、POの価格がどのように計算されるのか、2022年1月に実施されたヘルスケア&メディカル投資法人のPOを例に説明します。
3. 公募増資(PO)における価格決定プロセス
専門用語が多く使われるPOは、個人投資家にとってやや取っ付きにくい印象です。特に○○価格という単語が頻発することが、投資家の理解を困難にしていると感じます。
POにおける投資口の購入価格を決めるプロセスをプライシングといい、価格を決める日を価格決定日(プライシング日)と呼びます。
従来は公募増資の決議日(ローンチ)から価格決定日まで、1週間程度離れるケースが大半でした。しかし、足もと行われたケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人(3278)や日本プロロジスリート投資法人(3283)では、ローンチの3日後にプライシングが行われています。
期間の短縮化は発行体にとっては、投資口価格の変動リスクを低減させると見られますが、投資家にとっては検討時間が短くなるという事でもあり、今後、期間短縮したスケジュールが市場で定着するか注目です。なお。期間短縮には、発行体が一定条件を充たしている必要があります。
公募増資のプライシング日は、決議日(ローンチ日)に公表されます。
HCMのケースでは、2022年1月17日付の「新投資口発行及び投資口売出しに関するお知らせ」の中で、2022年1月25日から1月26日までのいずれかの日に決定されるとされています。
(出所: ヘルスケア&メディカル投資法人 プレスリリース news-b4ad3fb454b2a4d71fb8f87f8577c5c2ae8484de.pdf (hcm3455.co.jp)
この例に見られるように、POでは発行価格等決定日として複数の候補日が示されますが、よほどのことがない限り、初日に価格決定が行われます。
HCMの事例でも2022年1月25日にプライシングが行われました。
POに参加した投資家が投資口を購入する価格は、「募集価格」又は「発行価格」と呼ばれ、以下の要領で計算されます。
まず、価格決定日の終値から計算をスタートします。
HCMのケースでは、1月25日の終値は131,200円---①でした。
ここから2022年1月期の予想分配金である3,236円を差し引きます。
131,200円-3,236円=127,964円---②
これは前回説明した期初に実施されることが多いリートPOの特徴の1つです。
1月及び7月を決算期とするHCMのケースでも、払込日は2月1日、受渡日は2月2日と、7月期の期初に設定されていました。
POに参加する投資家は、1月末時点では株主になっていないため、2022年1月期の配当を受け取れない一方、投資主になった時点では配当落ちによる投資口下落の影響を被ることになります。
そこで、価格決定日の終値から予定配当金額を差し引くことで、配当落ちに伴う価格下落の影響を緩和するわけです。
したがって、POの実施タイミングが分配金の受け取りに影響を及ぼさないケースでは、予定配当金分の調整は発生しません。
さらにディスカウント率が割り引かれます。ディスカウント率とは、ブックビルディングと呼ばれる投資家に対する需要調査の結果を反映した株価の割引率です。
(出所: ヘルスケア&メディカル投資法人 プレスリリース news-c54e85ebf6c309d3f06bd00d6e9aadbeac239eae.pdf (hcm3455.co.jp))
PO参加希望者は、あらかじめ決められる仮条件のレンジから、希望するディスカウント率と希望株式数を引受証券会社に申告します。HCMの場合、仮条件のディスカウント率は2.5%~5.0%でした。
留意点は、ディスカウント率は通常最小の割引率が適用されるので、それ以上のディスカウント率を希望した場合、配分を受けられる可能性が低くなるという事です。
そのため、POで新株の配分を希望する投資家は、成り行きで注文を出すのが一般的です。成り行きとは決められた条件に従って新株を引き受けるという意味で、最小のディスカウント率でも購入します、と同義です。
ごく稀に最小ではないディスカウント率が適用されるケースもありますが、それはディールが投資家に不人気であったことを示しているとも考えられ、1つの注意信号と言えそうです。
また、希望通りの新株の割り当てを受けられる可能性は低いため、投資家は本当に買いたい株数よりも多めに需要申告するのも一般的です。
例えば、10口を買いたい投資家は、3倍の需要倍率が予想されるなら、30口の申し込みをしないと、10口の配分を受けられない可能性が高いということです。
こちらもごく稀に、膨らませて需要申告したところ、意外にも全量の当選連絡を受けるということがあります。あなたが証券会社から特別大事にされる顧客でないなら、笑えない結果が待っている可能性があるかもしれません。
言うまでもないですが、POに申し込んで当選したにもかかわらず、辞退するのは禁じ手です。
公募増資における個人投資家のブックでは、最終需要が新株に対して、数倍とか数十倍に達することが起こります。
供給を大幅に上回る投資家の需要が集まるという事は、POへの参加が魅力的であることの証左と言えるかもしれません。
ブックビルディングで投資家の需要を確認した後、引受証券会社は正式なディスカウント率を発行体に提示します。
前述の通り、最小のディスカウント率(タイトサイドと呼びます)で決まるのが一般的です。
旺盛な需要が集まりそうなPO案件(売れ残りリスクの低そうな案件)においてディスカウント率は低く設定される傾向があるので、JリートPOのディスカウント率が小さめという事実は、PO参加への安心材料の1つと言えるかもしれません。
適用されるディスカウント率はプレスリリースで公表されます。HCMの場合、2022年1月25日付の「新投資口発行及び投資口売出しに係る価格等の決定に関するお知らせ」というプレスリリースに2.5%である旨記載されています。
(出所: ヘルスケア&メディカル投資法人 プレスリリース news-c54e85ebf6c309d3f06bd00d6e9aadbeac239eae.pdf (hcm3455.co.jp))
プライシング日終値: 131,200円---①
2022年1月期予想分配金: △3,236円
127,964円---②
ディスカウント率: 2.5%
127,964円x (1-2.5%)= 124,764円(小数点以下切り捨て)---③
ここで計算された③124,764円が発行価格又は募集価格と呼ばれ、POに参加する投資家が新株1口に対して払い込む(購入する)価格です。
HMCのPOに参加した投資家にとっては、プライシング日である1月25日に131,200円で取引されていた投資口を124,764円で購入できる。ただし、受渡日である2月2日まで売ることはできない、という制限付きのディールになります。
いかがでしょう?POへの参加を試したくなりましたか?
HCMのケースでは、PO決議前に160,000円前後で取引されていた投資口を、PO参加者は結果的に約22%安く手に入れることができた訳です。
もちろん、投資口価格の下落には何らかの理由が存在するため、下がればいいという訳ではありませんが、POは関心のある株を安く買える機会になるかもしれません。
特に物件成長という外部成長戦略のためにPOを行う事の多いJリートでは、成長戦略が正しいなら、POはいいエントリー機会を提供してくれるはずです。
ちなみに、公募増資に関するプレスリリースには、「発行価格」以外に、「発行価額」又は「払込金額」という紛らわしい言葉も登場します。
これは発行体であるリートが新株1口の発行により調達できる金額を示しており、PO参加者が払い込む発行価格(募集価格)から引受証券会社への引受手数料を差し引いて計算します。
HCMのケースでは払込金額は120,477円/口であったため、募集価格との差額である4,287円/口 (124,764円-120,477円)が引受手数料相当額であり、引受手数料率は4,287円 / 127,964円=3.35%と計算できます。
発行体であるリートから見れば、ディスカウントに加え、引受手数料やその他費用も発生するなど、公募増資には多額の費用を要します。こうした中で、借入や投資法人債の起債といったデットによる資金調達と、弁済期限のない増資をいかに組み合わせて成長戦略を実現するか、まさにリート運用会社の腕の見せ所と言えます。
4. 価格決定後の株価下落リスクについて
公募増資に絡んで、証券会社が当該株式を売るとか、逆に買い支えるというような話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
株式関係の掲示板で時々この手の書き込みを見かけますが、内容が正確でないものも多いので、解説しておきます。
公募増資後の株価下落は投資家のみならず、発行体にとっても好ましいことではないため、一定の価格下落防止措置が用意されています。
例えば、①安定操作や②シンジケートカバー取引と呼ばれる引受証券会社によるセカンダリーマーケットでの株式の買い支え策です。
安定操作はプライシング日の翌日から申し込み最終日にかけて行われる取引です。POに当選した投資家に対して申し込みを促す事を目的としていることから、防衛水準は募集価格あたりとなるでしょう。
これを聞くと、安定操作があるなら、株価が募集価格を下回る事はないと思われるかもしれませんが、決してそういう訳ではありません。POに絡んだ証券会社による安定操作は、あくまで例外的に許されている行為であり、証券会社が一定水準を下回れば無尽蔵に買い支えて、株価を募集価格以上に引き上げる義務を負うというようなものではないからです。
実際、申込期間中に株価が募集価格を下回るケースもあるでしょうし、安定操作を行った場合必要となる証券取引所への届出書、報告書の提出量から見ても、安定操作取引が大量に行われるものでないことは明らかです。
また、証券会社は買い支えた株を保有し続けることはできないので、証券会社が買った株は公募増資後、将来の売り圧力となります。
もう1つのシンジケートカバー取引は必ず行われるものではありません。また、安定操作と比べ、防衛水準が引き下げられ、期間も長くなります。
HCMのケースでは、シンジケートカバー取引期間は2022年1月27日から2022年2月25日まで(予定)と公表されていました。
内容が専門的になりすぎるため、細かい説明は省きますが、シンジケートカバー取引が行われるのは、引受証券会社が発行体の株式を誰かから借りられる時です。引受証券会社は、借りた株をオーバーアロットメント分として一般募集分と併せて販売します。
この行為が引受証券会社が公募増資を行う発行体の株を売り浴びせるというような、おかしな誤解を生んでいる可能性がありますが、シンジケートカバー取引を行うために借りた株をの新規発行株と同条件で販売するというのが正確な理解です。
引受証券会社は、安定操作やシンジケートカバーを通して株式を買い支えた場合、市場で購入した株を貸主に返すことになります。一方、買い支えが発生しない、又は発生したが、購入株数が貸し株数に満たない場合、引受証券会社は発行体から追加的に第三者割当増資を受けて、買い支えた株と増資で入手した株を併せて貸主に返却することになります。
HCMのケースでは、証券会社が発行予定口数分全部の新投資口の第三者割当を引き受けています。
これは安定操作、シンジケートカバー取引を通じて一切買い支えを行わなかったため、第三者割当を受けて借りた株を返すという意味です。
(出所: ヘルスケア&メディカル投資法人 プレスリリース news-0e405887978e4018c7c7fa2420f580e65c127bdc.pdf (hcm3455.co.jp))
シンジケートカバー取引の出発点は引受証券会社が株を借りられることであり、株を借りる相手もスポンサー等限定的なため、公募増資の際に必ず行われるというものではありません。
また、安定操作と併せて厳格なルールの下で運用されることから、証券会社が恣意的に運用できるものではない運用できるものではない点、理解しておきましょう。
投資家の視点で言えば、シンジケートカバー取引が設定されているPOの方が、買い支えがある分だけ安心感があるとは言えそうです。
5. POに参加する方法
最後にPOへの参加方法を説明します。参加方法は実に簡単で、証券会社に対して申し込みを行うだけです。
ただし、どこの証券会社でもいいわけではなく、自分が証券口座を保有しており、かつその証券会社が公募増資の引受証券会社になっている必要があります。
一口に引受証券会社と言っても、POへの関与度合いと引受株数は異なります。一般的には引受株式数は事務主幹事と呼ばれる証券会社を筆頭に、(主)幹事証券会社、シンジケート団(シ団)の順になっているので、POで配分を得るためには、多くの新株を引き受ける証券会社に申し込むのが得策です。
トップレフトという言葉を聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれません。トップレフトとは、ここで言う事務主幹事の証券会社のことです。
近年、ネット証券で証券口座を開設する人が多いため、状況が変わってきてはいますが、POに関して言えば、ネット証券の引受数量は限定的なため、満足できる配分を得られる可能性は必ずしも高くありません。
POへの参加を検討するなら、Jリートの引受に強い伝統的な大手証券にも証券口座を保有しておくことが重要です。
6. まとめ
・ 2022年 インフレ対策による金利上昇の結果、世界のリート市場が大きく下落する中、Jリートはほぼ前年末水準を維持した。
・ 2022年 Jリートの物件取得は抑制的で、むしろ物件売却益を分配金の維持に活用する事例が目立った。
・ 公募増資(PO)の大きな魅力は市場価格よりも安く購入できること。
・ JリートのPOにおけるディスカウント率は足もと2.0%-2.5%水準。
・NISA一般枠を使ったPO参加は可能。
・ POに参加するなら、大手リアル証券での口座開設を検討すべき。
追記
12/20の昼休み時間に公表された日銀の突然の金融政策変更、本当に驚きました。
変更自体はもともと予想されていたことであり、実施時期が数か月前倒しになったという内容ですが、ノーマークであった年末の実施は、市場に大きなサプライズを与えました。
金利上昇を嫌うJリート市場の動揺は特に激しく、12/20の東証リート指数は1,838pptと、前日に比べ5%を超える大幅な下落となりました(TOPIXは△1.5%)。
さて、ジャーナルを読んでいただいている皆様は、今回の局面でどう動きましたか?
- チャンス到来ととらえ、買い増しした。
- 突然の下落に不安を感じ、持っていた投資口を売却した。
- 影響を吟味するため事態を静観した。
突発的な事象の中では③を選んだ方が多かったのではないかと思います。ちなみに執筆者は①を選択し、興味のあった銘柄に下値で注文を入れました。
投資の結果が判明するのはこれからですが、その後の動きを見る限り、市場は徐々に落ち着きを取り戻し始めているようです。
以前書きましたが、Jリートは東証プライム市場などに比べ市場規模が小さいため、全体に悪影響を及ぼしそうなニュースが出た場合、動きが増幅されやすい傾向があります。今回はそんな性質が再び顕在化したと言えるかもしれません。
イベントが発生した際に重要なのは、そのインパクトを冷静に分析することです。
今回のアクションで直接的に想定されるのは、10年物金利の0.25%程度の上昇です。
Jリートの配当利回りと10年物国債利回りの差であるイールド・スプレッドが0.25%縮小するなら、確かにネガティブ材料ではあるものの、縮小後の3.25%というスプレッドは、2001年以降の平均値程度であり、他国リートとの比較でも依然大きなスプレッドです。
今回の動きでより重要なことは、金融政策が緩和方向から引き締め方向に転換されたという事実でしょう。
Jリート各社は主に短期金利を基準金利として借入を行い、相当部分について金利を固定化しています。したがって今回の政策変更が既存債務に与える影響は小さく、新規借入についても短期金利が上昇しない中では、直ちに悪影響が発生するものではないでしょう。
ただし、金融政策の方向が引き締め方向に変化した以上、今後はJリート各社が賃料収入の増加など内部成長を実現できるかの見極めが、より重要になりそうです。
12/20に下落幅が大きかったのは、分配金利回りが低く、賃貸借契約の性質から短期的な賃料上昇を見込みづらい物流系リートであったことは、象徴的な動きとも感じました。
今後の金融政策及び金利動向を注視していきたいと思います。
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執筆
J-REITウォッチャー
リート資産運用会社で10年超の勤務経験を有する業界通。
自身も知見を活かしてリート投資家として活動中。
当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
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