前回(第5回)は、Jリートの基本的な仕組みと投資の魅力について解説しました。

 

リート投資の魅力は分配金(配当)の高さであり、受け取った配当を再投資することで、大きな複利効果を得ることができます。

実際に配当の再投資による複利効果を反映した配当込み指数で比べると、東証リート指数のリターンは、TOPIXを長期的に上回っています。

 

ちなみに、ある株式の値動きが比較対象を上回ることを「アウトパフォーム」と言い、「配当込みリート指数は、TOPIXを過去5年間、一貫してアウトパフォームしている。」というように使います。

 

「アウトパフォーム」の逆は、「アンダーパフォーム」です。「○○投資法人の投資口価格(株価)は、過去3ヶ月間、東証リート指数をアンダーパフォームしている。」というように使います。

 

投資に詳しい人のように聞こえるので、機会があれば使ってみましょう。

 

また、Jリートは海外リート市場との比較においても、配当利回りから10年物国債の利回りを引いたイールド・スプレッドが大きく、投資妙味があることも前回説明しました。

2023年12月末時点のJリートの分配金平均利回りは約4.3%10年国債の利回りは0.6%だったので、イールド・スプレッドは約3.7%でした。

 

今回は、そんなリートに投資する具体的な方法と代表的な商品を解説します。

1. リートに投資する方法

 

Jリートに投資する方法としては、以下の3つが代表的です。

① 上場投資信託であるETFを購入する

② 投資信託を購入する

③ 個別リートの投資口を購入する

 

このうち、手軽に始められるのは、①の上場投信であるETF、または②の投資信託を購入するという方法でしょう。個人投資家は個別のリートを選ぶことなく、投資が可能です。

 

①のETFの場合、株価は「東証リート指数」などの指数(インデックス)に連動します。

値動きが指数に連動する投資をパッシブ投資またはインデックス投資と呼び、ETFはこうした投資の代表選手です。

「東証リート指数」は、Jリートを代表する指数で、東京証券取引所(以下「東証」と言います)に上場する58リートの時価総額加重平均のインデックスです。2003年3月末日時点を1,000としています。

一般的に「東証リート指数」として紹介されるのは、投資口価格の変動のみを示す配当なし指数で、2023年12月末は1,806ppt.でした。

一方、受け取った配当の再投資を考慮する配当込みリート指数というインデックスもあり、やはり2003年3月末日を1,000とします。

2023年12月末の配当込み指数は4,382pptだったので、2003年3月に1,000を投資し、配当の再投資を続けたなら、約20年で4.4倍ほどに増えた計算になります。

 

東証リート指数には、各リートが時価総額に応じて組み入れられています。

例えば、2023年12月末時点の構成割合は、時価総額最大の日本ビルファンド投資法人(8951)が6.9%でした。

東証リート指数に連動するETFに投資をするということは、様々な地域で様々な種類の賃貸不動産を保有する58リートに対して、マルっと投資するというような意味合いです。

 

②の投資信託については、アクティプ型とパッシブ型があります。

 

アクティブ型とは投信会社のファンドマネージャーが、東証リート指数など特定のベンチマークを上回るリターンを上げるために、個別リートの組み入れ比率に強弱をつけた投信です。

ファンドマネージャーは、上がると判断するリートを時価総額割合よりも多く組み入れ(オーバー・ウエイト)、逆に値上がりの可能性が低いと考えるリートを少なく組み入れ(アンダーウエイト)ます。

調査などにコストがかかるため、投信の保有に係るコストである信託報酬は高めになります。

 

信託報酬が高めである分、ベンチマークを上回る運用成績が期待されますが、必ずしもそうした結果にはなりません。

手数料の安いインデックス投信やETF市場が拡大している背景にはこうした事情も影響しているでしょう。

 

パッシブ投信は、ETFと同様、インデックスと連動する投資信託です。

指数の構成割合に合わせたリバランスを行うだけなので、アクティブ型に比べ、信託報酬は低くなります。

投資家にとってのコストである信託報酬を安い方から並べると、一般的にはETF<パッシブ投信<アクティブ投信の順になります。

ETFと投資信託について、投資家は自ら銘柄選びを行う必要はありません。

必要なのは、投資をいつはじめ、いつ止めるかのタイミングの判断のみです。

投資金額の点でも少額投資が可能なので、まずはお試しの場合、手掛けやすい方法と言えます。

 

一方、③の個別リートへの投資の場合、投資家は自ら投資する銘柄を選ぶ必要があります。

銘柄の選定には一定の知識が必要ですが、好きな銘柄を組み合わせたりするのは、投資の醍醐味でもあります。

自分で銘柄選びをするからこそ得られる知識や経験もあるので、ぜひ個別リート投資にも挑戦してください。

 

2. リートETFへの投資

東証には20を超えるJリートETFが上場しており、多くは東証リート指数(配当なし)に連動する商品です。

同じ指数に連動するETFであれば、どの運用会社の商品を選んでもリターンは基本的に変わりません。

商品の選択に当たっては、取引量の多さ、手数料率、配当の頻度などで商品を選びましょう。

東証リート指数以外では、大型リートにフォーカスするリートCore指数、倉庫に投資する物流リート指数、高利回りリート指数、住宅リート指数などに連動する商品があります。

東証に上場しているため、取引時間中いつでも売買できるのもETFのいいところです。

株式と同様、それぞれのETFに4ケタの証券コードが付けられており、証券口座を通して1口や10口単位で売買できます。

2ヶ月毎や3ヶ月毎など定期的に分配金を受け取れる商品があり、分配金は基本的には証券口座で受け取ります。

ETFは新NISA 成長投資枠を使った投資が可能です。分配金、譲渡益とも非課税のため、有利な投資ができます。

また、ETFは1万円以下から投資可能な商品も多く、NISAの空き枠消化にも便利です。

3. リート投信の購入

 

金融機関で投資信託を購入するのも、手軽な方法です。

投資信託は、ファンドマネージャーの戦略を反映するアクティブ型と、指数への連動を目指すパッシブ型に大別されます。

パッシブ投信の信託報酬は一般にETFよりも高いため、指数に連動する投資を行うなら、ETFを選択した方が有利なケースが多いでしょう。

また、通貨選択型の投資信託については、リート投資と直接的に関係のない外国為替の変動リスクを取ることになるので、個人的にはあまりお勧めしません。

投資では自分が取るリスクをシンプルにするのがいいと考えます。

残念ながら、人気の新NISA つみたて投資枠に適合するJリート特化型の投信はありません。

つみたてNISA枠でJリート投資をする場合、唯一の手段はバランスファンドへの投資です。

4. 個別リート投資口の購入

最後の方法は、個別リートの投資口を購入する方法です。

 

一定の知識が求められますが、自分の好みでポートフォリオを作り上げる楽しみがありますので、ぜひチャレンジしてください。

 

例えばアセットタイプに注目して、オフィスなど特定のアセットに特化した投資を行うこともできれば、賃貸マンションと倉庫というように異なるタイプの物件を組み合わせることも可能です。

日本の賃貸不動産に投資するという共通点があることから、値動きに一定の連動性はあるものの、物件タイプやリートの規模、信用格付など、収益性や値動きに影響を与える要素が異なる点もあり、銘柄選定により投資のリターンも異なります。

物件のタイプではなく、投資する地域に注目したり、分配月の異なるリートを組み合わせて分配金を毎月受け取るようなポートフォリオを作ることも可能です。

 

以下に投資対象とする物件のタイプ毎に代表的なリートを紹介します。

このうち、総合型とは様々なタイプの物件に投資するリート、複合型とはマンションとオフィスというように2つの異なるタイプの物件に投資するリートです。

投資対象とする物件タイプ毎の特徴や値動きを知るために簡単な方法の1つは、時価総額最大のリートに注目することです。

 

全てのリートが1口単位での売買が可能であり、最低投資可能金額は4万円台から60万円台までさまざまです。

ほとんどのリートでは半年ごとに分配金を受け取れます。

 

物件タイプ別主なJリート:

 証券コード名称 12/末終値予想利回り(%)時価総額(百万円)
18951日本ビルファンド投資法人オフィス611,0003.76%1,039,306
23283日本プロロジスリート投資法人物流倉庫271,4003.73%770,477
33269アドバンス・レジデンス投資法人賃貸住宅316,0003.72%452,828
48985ジャパン・ホテル・リート投資法人ホテル69,2003.83%320,881
63292イオンリート投資法人商業141,4004.73%300,327
73455ヘルスケア&メディカル投資法人シニア139,8004.60%50,258
88972KDX不動産投資法人総合型160,8004.73%666,178
98956NTT都市開発リート投資法人複合型124,7004.31%184,810
(出所: JAPAN REIT月次レポートより転記)    

 

今回はJリートに投資する方法を紹介しました。

次回(第7回)はJリートの投資口価格に影響を与える要因について考えてみます。

前回(第5回)はこちら


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執筆

J-REITウォッチャー

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リート資産運用会社で10年超の勤務経験を有する業界通。 
自身も知見を活かしてリート投資家として活動中。

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