【注目ポイント】 主力の広告事業の減速は暫く続くか?
株価(2022/10/25) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE* | ROIC* |
104.93USD(日中取引終値) | 1.366兆USD(約202兆円) | 70.8% | 29.22% | 23.0% |
PER(実績) | PER(弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
18.9倍 | 23.7 倍 | 5.18倍 | N/A | 12.23倍 |
*注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。
2022年3Q決算結果
売上高 690億9,200万ドル(約10兆9,200万円、前年同期比 6%増、2Q比▲0.85%)
営業利益 171億ドル (同▲18.5%、同▲11.9%)
営業利益率 25% (同▲7pt、同▲3pt)
四半期純利益 139億ドル(同▲27%、同▲13%)
希薄化後EPS 1.06ドル (弊社予想1.26ドル)
増収減益決算だった。ドル高の影響等で売上、EPSともに市場予想を下回り時間外取引で株価は6%以上下落した。Google Search、クラウドは増収だったがYouTube広告、Googleネットワークの広告が減収であった。売上高は前年同期比6%増であったが、売上原価が同13%増加した。売上原価増加の大きなものはデータセンター関連の費用の増加とハードウェア費用の増加であった。営業費用は同26%増加、これは研究開発費の増加と一般管理費の増加、人件費の増加等による。営業利益は同▲18.5%、営業外損益は▲9億ドル、四半期純利益は同▲27%であった。
セグメント売上、トラフィック獲得コスト
グーグル検索、その他の広告収入 | 395億ドル | 前年同期比4.3%増 |
YouTube広告 | 71億ドル | 同▲1.9% |
グーグル・ネットワーク広告 | 79億ドル | 同▲1.6% |
その他グーグル | 69億ドル | 同2.1%増 |
グーグル・サービス計 | 614億ドル | 同2.5%増 |
グーグル・クラウド | 69億ドル | 同38%増 |
その他事業 | 2億ドル | 同14.8%増 |
為替ヘッジによる利益 | 6.4億ドル | 同10.3倍 |
総売上高 | 690億9,200万ドル | 前年同期比 6%増 |
トラフィック取得コスト(TAC) | 118億ドル | 同2.9%増 |
総売上高に占めるTAC割合 | 17.1% | 同▲0.6pt |
セグメント別営業損益
グーグル・サービス | 198億ドル | 前年同期比▲17.5% |
グーグル・クラウド | ▲7億ドル | 同5,500万ドル赤字拡大 |
その他 | ▲16億1,100万ドル | 同3億2,300万ドル赤字拡大 |
コスト未配分 | ▲3億3,600万ドル | 同6億7,400万ドル赤字縮小 |
営業損益合計 | 171億3,500万ドル | 同▲18.5% |
おさまらないインフレによる景況感の悪化から企業が広告費を削減しているのが表れた決算結果であった。決算発表後のearnings call上で広告主である企業側の広告費削減が3Qになり更に進んだとの説明があった。2QまでYouTube広告、Googleネットワークの広告は前年同期比プラスであったが、3Qではそれぞれ▲1.9%、▲1.6%と減収に転じた。検索型広告は2Qは同13.5%増であったが3Qは4.3%増と減速したものの前年比プラスを維持した。
一方Google Cloudセグメントの売上は2Qは前年同期比35.6%増であったが、3Qは同38%増と売上成長は加速した。GCP(Google Cloud Computing)、Google Workspace (グループウェアサービス)ともに好調であった。
営業損益レベルでみるとあくまで黒字化しているのは主力の広告事業(検索型広告、YouTube広告、Googleネットワーク広告)のみであり、クラウドセグメントは売上成長率は高いものの赤字は拡大した。
YouTube広告に関してはYouTubeショートを開始したもののYouTube広告の伸びにはつながっていないようである。昨年4月にアップル社が開始したiPhone上のターゲティング広告の制限に加えてロシアでの全ての営業活動を停止したのは2Qまでであるが、3Qはこれに加えて広告主の広告費削減が加わった。Googleネットワーク広告に関しては企業の広告費削減がダイレクトに反映しているように思える。
従業員数であるが、2Qの1万人増に続き3Q中に1万2,000人強増加した。その殆どがテクニカルな人員の採用増であった。
4Qのガイダンスに関しては具体的な数字は出さなかったもののこのままドル高が続くと研究開発は主に米国で行っているためにドル建て費用が嵩みその分営業利益の下押し要因になるとearnings callでは述べた。
業績推移
Alphabet | 1Q2021 | 2Q2021 | 3Q2021 | 4Q2021 | 1Q2022 | 2Q2022 | 3Q2022 |
(単位:百万USD) | |||||||
総売上高 | 55,314 | 61,880 | 65,118 | 75,325 | 68,011 | 69,685 | 69,092 |
売上原価 | 24,103 | 26,227 | 27,621 | 32,988 | 29,599 | 30,104 | 31,158 |
粗利益 | 31,211 | 35,653 | 37,497 | 42,337 | 38,412 | 39,581 | 37,934 |
粗利益率 | 56.4% | 57.6% | 57.6% | 56.2% | 56.5% | 56.8% | 54.9% |
研究開発費 | 7,485 | 7,675 | 7,694 | 8,708 | 9,119 | 9,841 | 10,273 |
営業、マーケティング費用 | 4,516 | 5,276 | 5,516 | 7,604 | 5,825 | 6,630 | 6,929 |
一般管理費 | 2,773 | 3,341 | 3,256 | 4,140 | 3,374 | 3,657 | 3,597 |
営業利益 | 16,437 | 19,361 | 21,031 | 21,885 | 20,094 | 19,453 | 17,135 |
営業利益率 | 29.7% | 31.3% | 32.3% | 29.1% | 29.5% | 27.9% | 24.8% |
営業外利益(費用)ネット | 4,846 | 2,624 | 2,033 | 2,517 | (1,160) | (439) | (902) |
税引前利益 | 21,283 | 21,985 | 23,064 | 24,402 | 18,934 | 19,014 | 16,233 |
法人税等 | 3,353 | 3,460 | 4,128 | 3,760 | 2,498 | 3,012 | 2,323 |
純利益 | 17,930 | 18,525 | 18,936 | 20,642 | 16,436 | 16,002 | 13,910 |
普通株主に帰属する純利益 | 17,930 | 18,525 | 18,936 | 20,642 | 16,436 | 16,002 | 13,910 |
完全希薄後株式数 | 682.071 | 679.612 | 676.519 | 672.493 | 667.551 | 13,239 | 13,097 |
完全希薄後EPS | 26.29 | 27.26 | 27.99 | 30.69 | 24.62 | 1.21 | 1.06 |
修正EBITDA* | 22,935 | 26,109 | 28,209 | 29,278 | 28,380 | 28,134 | 26,157 |
修正EBITDAマージン | 41.5% | 42.2% | 43.3% | 38.9% | 41.7% | 40.4% | 37.9% |
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬費用 | |||||||
営業キャッシュフロー | 19,289 | 21,890 | 25,539 | 24,934 | 25,106 | 19,422 | 23,353 |
設備投資額 | 5,942 | 5,496 | 6,819 | 6,383 | 9,786 | 6,828 | 7,276 |
フリーキャッシュフロー | 13,347 | 16,394 | 18,720 | 18,551 | 15,320 | 12,594 | 16,077 |
(注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
FY2022予想 | 1Q(実績) | 2Q(実績) | 3Q(実績) | 4Q(予想) |
売上高 | 68,011 | 69,685 | 69,092 | 68,401 |
営業利益 | 20,094 | 19,453 | 17,135 | 16,074 |
税引前利益 | 18,934 | 19,014 | 16,233 | 14,304 |
法人税等 | 2,498 | 3,012 | 2,323 | 2,146 |
純利益(親会社株主帰属) | 16,436 | 16,002 | 13,910 | 12,158 |
完全希薄後株式数 | 667.551 | 13,239 | 13,097 | 13,085 |
完全希薄後EPS | 24.62 | 1.21 | 1.06 | 0.93 |
*1Q決算発表時は株式分割前だったが、年間EPSの計算にあたり1Qの実績EPSを20で割り算出した。 |
(注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
投資判断
景況感の悪化から広告主の企業が広告費を削減した事により主力の広告事業が鈍化した。検索型広告が減収に転じる事はなさそうであるが、YouTube広告、Googleネットワークの広告が増収に転じるのは短期的には難しいと思われる。インフレがピークアウトし、消費者の購買力が回復するまでは厳しい状況が継続すると考えている。来年前半にまた自社株買いを行うのではないかと推測している。
執筆者プロフィール
株式会社pafin
マーケットアナリスト 西村 麻美
新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。
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