【注目ポイント】 企業の広告費削減が続く限り業績回復は難しい?

株価(2023/2/2)    時価総額自己資本比率    ROE*    ROIC*
108.80USD(日中取引終値)1.4兆USD(約182兆円)       70.1%  26.9%    23.0%
    PER(実績)  PER(弊社予想)        PBR配当利回りEV/EBITDA
             19.5倍    25.2倍      5.0倍     N/A     12.5倍

                        *注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。

2022年4Q決算結果

売上高 760億4,800万ドル(約9兆8,900億円、前年同期比 1%増)

営業利益 182億ドル (同▲17%)

営業利益率 24% (前年同期29%)

四半期純利益 136億ドル(前年同期比▲34%)

希薄化後EPS     1.05ドル (弊社予想0.93ドル)

増収減益決算だった。売上高は1%増と微増(為替の影響を除くと7%増)で、売上、EPSともに市場予想を下回った。Google Search、YouTube広告、Googleネットワーク広告と広告事業が全て前年同期比減収となり、Googleその他事業とクラウドは増収であった。時間外取引で5%近く株価は下落した。

売上高は前年同期比1%増であったが、売上原価が同7%増加した。売上原価増加の大きなものはハードウェア費用の増加とデータセンター関連の費用の増加が大きかった。研究開発費用は同17%増、営業、マーケティング費用は同▲5.5%、一般管理費は同23%増で営業利益は同▲17%、営業利益率は5pt低下した。営業外損益は▲10億ドル、四半期純利益は同▲34%であった。

また、アルファベットは2022年に590億ドル相当の自社株買いを行った。

セグメント売上、トラフィック獲得コスト

 グーグル検索、その他の広告収入426億ドル前年同期比▲1.6%
 YouTube広告80億ドル同▲7.8%
 グーグル・ネットワーク広告85億ドル同▲8.9%
 その他グーグル88億ドル同7.8%増
グーグル・サービス計678億ドル同▲2.3%
グーグル・クラウド73億ドル同32%増
その他事業2.3億ドル同25%増
為替ヘッジによる利益6.7億ドル同3.3倍

 

総売上高760億4,800万ドル前年同期比 1%増
トラフィック取得コスト(TAC)129億ドル同▲2.8%
総売上高に占めるTAC割合17.0%同▲0.8pt

セグメント別営業損益

グーグル・サービス211億ドル前年同期比▲18.8%
グーグル・クラウド▲4.8億ドル赤字幅が同46%縮小
その他▲16億3,100万ドル赤字幅が同12.5%拡大
コスト未配分▲8億3,000万ドル赤字幅が同53%縮小
営業損益合計181億6,000万ドル同▲17%

                   

決算発表後のearnings call上で広告主である企業側の広告費削減が4Qになり更に進んだとの説明があった。3Qまで前年同期比プラスであった検索型広告も4Qになりマイナスに転じた。これにより検索型広告、YouTube広告、Googleネットワーク広告と主力の広告事業が全て前年同期比減収となった。

その他グーグルの売上が前年同期比7.8%増の88億ドルとなったが、これはYouTubePremium、YouTubeTV、Pixelの好調によるものである。

グーグル・クラウドの売上は前年同期比32%増であった。GCP(Google Cloud Computing)、Google Workspace (グループウェアサービス)ともに好調であった。

営業損益レベルでみるとあくまで黒字化しているのは主力の広告事業(検索型広告、YouTube広告、Googleネットワーク広告)のみである。クラウドの赤字は大幅に縮小したが、4Q時点ではまだ黒字化していない。

従業員数であるが、4Qに21.6%増加し、19万234人となった。その殆どがテクニカルな人員の採用増であった。

テクニカルな人員を増やした一方リストラを発表した。約1万2千人の人員削減を1Q 2023に予定しており、リストラ費用は19億~23億ドルの予定でその殆どが1Qに計上される。人員削減の他にオフィス・スペースの縮小も予定しており、このコストが約5億ドル1Qに計上される。

FY2023のガイダンスは具体的な数字を出さなかったが、設備投資額はFY2022とほぼ同水準を予定していると言及した。また、先月1月にサーバーとネットワーク機器の耐用年数を6年に変更したが、これにより減価償却費用が減少し、利益にはプラスになるとコメントした。

 

業績推移

Alphabet3Q20214Q20211Q20222Q20223Q20224Q2022
(単位:百万USD)      
総売上高65,11875,32568,01169,68569,09276,048
売上原価27,62132,98829,59930,10431,15835,342
粗利益37,49742,33738,41239,58137,93440,706
粗利益率57.6%56.2%56.5%56.8%54.9%53.5%
研究開発費7,6948,7089,1199,84110,27310,267
営業、マーケティング費用5,5167,6045,8256,6306,9297,183
一般管理費3,2564,1403,3743,6573,5975,096
営業利益21,03121,88520,09419,45317,13518,160
営業利益率32.3%29.1%29.5%27.9%24.8%24.0%
営業外利益(費用)ネット2,0332,517(1,160)(439)(902)(1,013)
税引前利益23,06424,40218,93419,01416,23317,147
法人税等4,1283,7602,4983,0122,3233,523
純利益18,93620,64216,43616,00213,91013,624
普通株主に帰属する純利益18,93620,64216,43616,00213,91013,624
完全希薄後株式数676.519672.493667.55113,23913,09712,947
完全希薄後EPS27.9930.6924.621.211.061.05
       
修正EBITDA*28,20929,27828,38028,13426,15727,461
修正EBITDAマージン43.3%38.9%41.7%40.4%37.9%36.1%
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬費用  
       
営業キャッシュフロー25,53924,93425,10619,42223,35323,614
設備投資額6,8196,3839,7866,8287,2767,595
フリーキャッシュフロー18,72018,55115,32012,59416,07716,019
       

       (注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)    

業績予想       

FY2023予想1Q(予想)2Q(予想)3Q(予想)4Q(予想)
     
売上高71,41273,86673,23879,850
営業利益17,13920,68320,50722,358
税引前利益15,53919,68319,60721,258
法人税等2,0202,5592,6472,764
純利益(親会社株主帰属)13,51917,12416,96018,495
完全希薄後株式数12,70012,55012,30012,100
完全希薄後EPS1.061.361.381.53

                                  (注:アルファベット社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

投資判断

主力の広告事業の検索型広告、YouTube広告、Googleネットワーク広告と全て前年同期比減収となってしまった。広告主の企業側の広告費削減が続く限り本格的な業績回復は難しいと考えている。リストラも1Qだけで終わらず広告事業の減速が長引けば更なるリストラも必要になるかもしれない。

 

 

 

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