【注目ポイント】 ホリデーシーズンも売上は二桁増とはいかない?

 

株価(2022/10/27)    時価総額自己資本比率    ROE*    ROIC*
144.8USD(日中取引終値)2.3兆USD(約341兆円)       14.4%  162.82%    50.2%
    PER(実績)  PER(弊社予想)        PBR配当利回りEV/EBITDA
            24.69倍    29.13倍      41.31倍     0.60%     18.77倍

                        *注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。

2022年4Q決算結果

売上高 901億ドル (約13兆2,447億円、前年同期比8.1%増、3Q比8.7%増)

営業利益 249億ドル(同4.7%増、同7.9%増)

営業利益率 27.6% (前年同期 28.5%、3Q 27.8%)

四半期純利益 207億ドル (前年同期比0.8%増、3Q比6.6%増)

希薄化後EPS 1.29ドル     (弊社予想1.29ドル)

 

増収増益の決算だった。ドル高の中値上げにより過去最高の売上を記録し、また部材コスト増はあったが粗利益率は前年同期比0.1pt増とマージンを確保した。営業利益率は同0.9pt低下と大幅に悪化せず、機動的な値上げは成功したと言えるだろう。Macの売上は過去最高を記録、iPhone、ウェアラブル、ホーム&アクセサリーの売上は7~9月期としては最高売上を記録した。過去数四半期にわたって続いた半導体や部材の不足の問題は4Qは大分緩和されたとのコメントがあった。

製品別売上

iPhone426億ドル前年同期比9.7%増
Mac115億ドル同25.4%増
iPad72億ドル同▲13.1%
ウェアラブル、ホーム&アクセサリー97億ドル同9.8%増
サービス192億ドル同5%増
総売上高901億ドル 

 

景況感の悪化からPC需要が減速していると多くの半導体メモリー・メーカーが直近の決算発表でコメントしていたが、Macは前年同期比25%増と高い伸びであった。iPhone Proシリーズは9月16日から販売開始であったが、アップルの4Qの締め日は9月24日と4Q中の販売日数が8日間であった。iPadは唯一前年より売上が減少したが、昨年9月にiPadは新しいモデルを販売したので前年の売上レベルが高かったとも解釈できるので難しいところである。アップル・ミュージックやアップルTV等のサブスクリプションは4Q末時点で会員が9,000万人であった。ハードウェアだけでなくサブスクリプションの価格も値上げした事については音楽のライセンス・コストが上昇しているとの説明があった。

地域別売上                                   

南北アメリカ大陸398億ドル前年同期比8.1%
ヨーロッパ228億ドル同9.6%増
中華圏155億ドル同6.2%増
日本57億ドル同▲4.9%増
アジア太平洋64億ドル同22.7%増
総売上高901億ドル 

 

地域別売上では日本のみ前年同期比売上が減少した。アジア太平洋での大きな伸びはインドの貢献が大きかった。

1QFY23のガイダンス

アップルは2020年から予測の不確実性からガイダンスを行っていないが、1Qは4Qの売上の伸びより低くなるだろうとCFOがコメントした。Macの売上は1Qは前年同期比マイナスになるだろうとの事である。もしリセッション入りするならばサービス売上が一番影響を受けるだろうと予想した。

業績推移

Apple1Q20212Q20213Q20214Q20211Q20222Q20223Q20224Q2022
(単位:百万USD)Dec-20Mar-21Jun-21Sep-21Dec-21Mar-22Jun-22Sep-22
売上        
 プロダクト売上95,67872,68363,94865,083104,42977,45763,35570,958
 サービス売上15,76116,90117,48618,27719,51619,82119,60419,188
総売上高111,43989,58481,43483,360123,94597,27882,95990,146
売上原価        
 プロダクト原価62,13046,44740,89942,79064,30949,29041,48546,387
 サービス原価4,9815,0585,2805,3965,3935,4295,5895,664
売上原価合計67,11151,50546,17948,18669,70254,71947,07452,051
粗利益44,32838,07935,25535,17454,24342,55935,88538,095
粗利益率39.8%42.5%43.3%42.2%43.8%43.7%43.3%42.3%
営業費用        
 研究開発費5,1635,2625,7175,7726,3066,3876,7976,761
 一般管理費5,6315,3145,4125,6166,4496,1936,0126,440
営業費用合計10,79410,57611,12911,38812,75512,58012,80913,201
営業利益33,53427,50324,12623,78641,48829,979 23,076   24,894
営業利益率30.1%30.7%29.6%28.5%33.5%30.8%27.8%   27.6%
営業外収益(費用)ネット45508243-538-247160-10-237
税引前利益33,57928,01124,36923,24841,24130,13923,06624,657
法人税等4,8244,3812,6252,6976,6115,1293,6243,936
純利益28,75523,63021,74420,55134,63025,01019,44220,721
普通株主に帰属する純利益28,75523,63021,74420,55134,63025,01019,44220,721
完全希薄後株式数17,11416,92916,78216,63516,51916,40316,16316,118
完全希薄後EPS1.681.401.301.242.101.521.201.29
         
修正EBITDA*38,49632,28128,91828,44446,45033,56726,59033,343
修正EBITDAマージン34.5%36.0%35.5%34.1%37.5%34.5%32.1%37.0%
営業キャシュフロー38,76323,98121,09420,20046,96628,16622,89224,127
設備投資3,5002,2692,0933,2232,8032,5142,1023,289
フリーキャッシュフロー35,26321,71219,00116,97744,16325,65220,79020,838
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬       
         
地域別売上内訳        
北米南米46,31034,30635,87036,82051,49640,88237,47239,808
欧州27,30622,26418,94320,79429,74923,28719,28722,795
中国、台湾21,31317,72814,76214,56325,78318,34314,60415,470
日本8,2857,7426,4645,9917,1077,7245,4465,700
アジアパシフィック8,2257,5445,3955,1929,8107,0426,1506,373
合計111,43989,58481,43483,360123,94597,27882,95990,146
製品別売上内訳        
iPhone65,59747,93839,57038,86871,62850,57040,66542,626
Mac8,6759,1028,2359,17810,85210,4357,38211,508
iPad8,4357,8077,3688,2527,2487,6467,2247,174
ウェアラブル、ホーム、アクセサリー8,4357,8368,77513,32114,7018,8068,0849,650
サービス15,76116,90117,48618,27719,51619,82119,60419,188
合計111,43989,58481,43483,360123,94597,27882,95990,146

                 (注:アップル社決算資料に基づき株式会社pafin作成)    

業績予想       

FY2023予想1Q(予想)2Q(予想)3Q(予想)4Q(予想)
    Dec-22   Mar-23    Jun-23    Sep-23
売上高120,131         82,104         65,88976,280
営業利益32,79622,168           7,65820,596
税引前利益32,55122,25617,81420,529
法人税等4,8833,249                              2,5302,833
純利益(親会社株主帰属)27,66819,00715,28517,696
完全希薄後株式数16,08716,015         15,99915,923
完全希薄後EPS1.721.190.961.11

                                                 (注:アップル社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

投資判断

インフレ、消費者の購買力低下のなか出来過ぎといっても良いほどの好決算であった。逆境のなかアップル製品ユーザーはブランド・ロイヤルティが高い事をうかがわせる決算であった。1Qはホリデーシーズンであるが、ドル高を考慮して売上は前年同期比一桁台後半の伸びになるのではと予想している。リスクはリセッションに陥る事と度重なる値上げにユーザーが離れる事である。株価は金利動向、市場のモメンタムに左右されるであろう。

 

 

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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