【注目ポイント】Azure OpenAI Serviceはどこまでシェアを伸ばすか?
株価(2023/1/24) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE* | ROIC* |
242.04USD(日中取引終値) | 1.804兆USD(約234兆円) | 50.2% | 42.88% | 26.2% |
PER(実績) | PER(弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
25.86倍 | 25.21倍 | 10.32倍 | 1.12% | 17.29倍 |
*注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。
2023年2Q決算結果
売上高 527億ドル(約6兆8,510億円、前年同期比 2%増)
営業利益 216億ドル (Non-GAAP 同▲3%)
四半期純利益 174億ドル(Non-GAAP 同▲7%)
希薄化後EPS 2.32ドル (Non-GAAP 弊社予想2.3ドル)
増収減益の決算だった。売上は市場予想に届かなかったが、EPSは市場予想を上回った。時間外取引で一時4%超まで株価は上昇したが、引けにかけて売られた。売上は前年同期比2%増、営業利益は同▲3%、四半期純利益は同▲7%であった。為替の影響を除くと売上は同7%増、営業利益は同フラット、四半期純利益は同▲4%であった。ホリデーシーズンの2Qであったが、WindowsのOEM、Surface,ゲームの売上は減少し、インフレによる消費者の購買力の低下が表れた。一方クラウド・コンピューティングのAzureと他のクラウド・サービスの売上の伸びは同31%増と1Qの20%増よりは回復した。また法人向けのOffice365は同11%増、Azure 上で提供しているSaaS型のCRMパッケージのDynamicsは同21%増と好調であった。
セグメント別内訳
Productivity & Business Processes事業:法人および個人顧客向けの”Office”、”Office 365”、”Dynamics”と”Dynamics CRM Online”等。
セグメント売上高 | 170億ドル | 前年同期比6.7%増 |
セグメント利益 | 82億ドル | 同6.3%増 |
セグメント利益率 | 48.1% | 同▲0.1pt |
Inteligent Cloud事業:”Windows Server” ”SQL Server””System Center” ”Azure””Enterprise Services”などのサーバ製品およびサービス等。
セグメント売上高 | 215億ドル | 同17.8%増 |
セグメント利益 | 89億ドル | 同7%増 |
セグメント利益率 | 41.4% | 同▲4.2pt |
More Personal Computing事業:”Windows”OSのライセンス収入、”Surface”や等のデバイス類、”Xbox”などのゲーム製品等。
セグメント売上高 | 142億ドル | 同▲18.8% |
セグメント利益 | 33.2億ドル | 同▲46.8% |
セグメント利益率 | 23.3% | 同▲12.3pt |
AIに関する戦略
Earnings call内でOpenAIに関する戦略について言及した。マイクロソフト社は決算発表の前日にOpenAIへとの協業について発表をしたが、マイクロソフトはOpenAIの独占的なプロバイダーに正式になった。MicrosoftのクラウドサービスAzureのAzure OpenAI Serviceは、OpenAIのAIモデルであるGPT-3.5や画像生成AIのDALL-E 2などに対応しているが、ChatGPTへの対応も予定している。OpenAIのAIモデルをコンシューマーやエンタープライズ製品にも展開する予定である。また、OpenAI独自のAI研究を加速させるため、特化したスーパーコンピューティングシステムの開発投資を拡大する。
3Qのガイダンス
2Qの事業別の売上のガイダンスはProductivity & Business Processes事業の売上が為替の影響を除いて前年同期比11~13%増、169~172億ドル、Inteligent Cloud事業の売上が為替の影響を除いて17~19%増、217~220億ドル、More Personal Computing事業の売上は119~123億ドルを予想をしている。
為替が現状のままと仮定して売上原価は156.5~158.5億ドル、営業費用が147~148億ドル、営業外損益は約2億ドルの営業外収益を想定しているが、金利支払いでほぼ全て相殺されると発表をした。また2Qの法人税率は19~20%になるとの事である。
業績推移
Microsoft | 2Q2022 | 3Q2022 | 4Q2022 | FY2022 | 1Q2023 | 2Q2023 |
(単位:百万USD) | ||||||
総売上高 | 51,728 | 49,360 | 51,865 | 198,270 | 50,122 | 52,747 |
売上原価 | 16,960 | 15,615 | 16,429 | 62,650 | 15,452 | 17,488 |
粗利益 | 34,768 | 33,745 | 35,436 | 135,620 | 34,670 | 35,259 |
粗利益率 | 67.2% | 68.4% | 68.3% | 68.4% | 69.2% | 66.8% |
研究開発費 | 5,758 | 6,306 | 6,849 | 24,512 | 6,628 | 6,844 |
営業、マーケティング費用 | 5,379 | 5,595 | 6,304 | 21,825 | 5,126 | 5,679 |
一般管理費 | 1,384 | 1,480 | 1,749 | 5,900 | 1,398 | 2,337 |
減損とリストラ費用 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
営業利益 | 22,247 | 20,364 | 20,534 | 83,383 | 21,518 | 20,399 |
営業利益率 | 43.0% | 41.3% | 39.6% | 42.1% | 42.9% | 38.7% |
営業外利益(費用)ネット | 268 | (174) | (47) | 333 | 54 | (60) |
税引前利益 | 22,515 | 20,190 | 20,487 | 83,716 | 21,572 | 20,339 |
法人税等 | 3,750 | 3,462 | 3,747 | 10,978 | 4,016 | 3,914 |
純利益 | 18,765 | 16,728 | 16,740 | 72,738 | 17,556 | 16,425 |
普通株主に帰属する純利益 | 18,765 | 16,728 | 16,740 | 72,738 | 17,556 | 16,425 |
完全希薄後株式数 | 7,555 | 7,534 | 7,506 | 7,506 | 7,485 | 7,473 |
完全希薄後EPS | 2.48 | 2.22 | 2.23 | 9.65 | 2.35 | 2.20 |
修正EBITDA* | 26,242 | 24,645 | 25,042 | 99,905 | 26,500 | 26,585 |
修正EBITDAマージン | 50.7% | 49.9% | 48.3% | 50.4% | 52.9% | 50.4% |
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬費用 | ||||||
営業キャッシュフロー | 14,480 | 25,386 | 24,629 | 89,035 | 23,198 | 11,173 |
設備投資額 | 5,865 | 5,340 | 6,871 | 23,886 | 6,632 | 6,274 |
フリーキャッシュフロー | 8,615 | 20,046 | 17,758 | 65,149 | 16,566 | 4,899 |
(注:マイクロソフト社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
FY2023予想 | 1Q(実績) | 2Q(実績) | 3Q(予想) | 4Q(予想) |
Sep-22 | Dec-22 | Mar-23 | Jun-23 | |
売上高 | 50,122 | 52,747 | 55,283 | 57,052 |
営業利益 | 21,518 | 20,399 | 23,219 | 23,409 |
税引前利益 | 21,572 | 20,339 | 23,149 | 23,329 |
法人税等 | 4,016 | 3,914 | 4,398 | 4,432 |
純利益(親会社株主帰属) | 17,556 | 16,425 | 18,751 | 18,896 |
完全希薄後株式数 | 7,485 | 7,473 | 7,455 | 7,440 |
完全希薄後EPS | 2.35 | 2.20 | 2.52 | 2.54 |
(注:マイクロソフト社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
投資判断
Azureの売上成長率が1Qより11pt回復した事、法人向けのOffice365が引き続き好調だった事がポジティブな決算であった。決算自体よりOpenAIとの協業内容がより注目を浴びたようである。マイクロソフトがOpenAIの独占的なプロバイダーに正式になった事によりクラウドコンピューティング事業で後発だったマイクロソフトが一気に優位に立った印象がある。これからはAzureがどの位シェアを伸ばしていくかに注目したい。
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