【注目ポイント】 新しくローンチする広告付きプランで再び成長軌道に戻れるか?!

株価(2022/10/18)   時価総額自己資本比率     ROE    ROIC*
240.86USD(日中取引終値)1,071億USD(約16兆円)      43.2%   30.93%   14.9%
         PER(実績)    PER(弊社予想)        PBR配当利回りEV/EBITDA
     21.8倍              22.5倍       5.7倍     N/A     5.9倍

       *注:ROICは過去12カ月の実績数値。

2022年3Q決算結果

売上高 79億2,600万ドル(約1兆1,830億円、2Q比▲0.6%、前年同期比5.9%増)

営業利益 15億3,300万ドル(同▲3%、同▲12.6%)

営業利益率 19.3%(同▲0.5%、同▲4.2%)

四半期純利益 13億9,800万ドル(同▲3%、同▲3.5%)

希薄化後EPS  3.10ドル(弊社予想3.30ドル)

会員数 2億2,309万人(2Q比241万人増)

2Q決算結果発表の際に3Qの会員数増は100万人とのガイダンスを出していたが、結果として会社予想の二倍以上会員数は増加した。3Qは人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」の新作や実在の連続殺人犯を扱った「ダーマー」が新規会員獲得に貢献した。会員数は予想以上の増加であったが、売上高は前年同期比は約6%増加したものの為替の影響で2Q比は微減、営業利益は前年同期、2Q比ともに減少した。為替の影響を除くと売上は前年同期比13%増、会員一人当たり売上は同8%増であった。EPSが市場平均予想を上回ったのは会員数増が会社予想の倍以上であった事に加えて、自社発行のユーロ建て債券(約50億ドル)の為替による未実現利益3億4,800万ドルを営業外利益で計上した事による。予想以上の決算に時間外取引でネットフリックス株は前日時間外取引終値比14%以上上昇した。

地域別内訳を見ると引き続きアジア太平洋地域(APAC)が好調であった。会員数が2Q比32.3%増の143万人増であった。為替の影響を除くとAPACの売上は前年同期比19%増であった。一人当たり売上はインドでの戦略的な値下げの影響をオーストラリア、韓国で補い為替の影響を除くと同▲3%であった。

欧州、中東、アフリカ地域(EMEA)では過去二四半期会員数が減少していたが、3Qは増加に転じ約60万人増であった。為替の影響を除くとEMEAの売上は13%増、一人当たり売上は同7%増であった。

中南米では1Qに大幅に会員数が減少し、続いて2Qは微増であったが、3Qは前年同期並みの30万人増であった。為替の影響を除くと売上は前年同期比19%増、一人当たり売上が同16%増であった。

アメリカとカナダでは1月に11%~14%値上げをした影響で会員数は1Q、2Qに減少したが、3Qは増加に転じ10万人増であった。為替の影響を除くと売上は前年同期比12%増、一人当たり売上が同11%増であった。

広告付きプランを11月から開始

11月より広告付きプランを順次12市場(カナダ、メキシコ、オーストラリア、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、UK、アメリカ、スペイン)で開始する。この12市場はネットフリックスの全売上の75%以上を占めている。広告付きプランの価格は現行のベーシックプランより20~40%安く1時間当たり5分までのCMが付く。アメリカでの広告付きプランは6.99ドル/月である。(現行ベーシックプランは9.99ドル/月)日本での広告付きプランは790円/月(現行ベーシックプランは990円)。

キャッシュフロー、資本構成

3Qの営業キャッシュフローは前年同期比6.8倍の5億5,700万ドルであった。フリーキャッシュフローは前年同期の▲1億600万ドルから大幅改善の4億7,200万ドルであった。2022年通期を通してフリーキャッシュフローは10億ドル超になる予想で、2023年はこれ以上の米ドル上昇がないと仮定して更に拡大すると会社側は予定している。

3Q末時点でのグロス有利子負債は140億ドルで会社予想の100億~150億ドルのレンジ内に抑えてでいる。現預金は3Qに3億ドル増加し61億ドルとなった。ネットデット(純有利子負債)は3Q末時点で79億ドル、過去12カ月のEBITDAの1.2倍である。2023年に社債の償還予定はない。今月上旬にオーストラリアのアニメーション・スタジオのアニマル・ロジックの買収が完了した。買収価格は非公表であるがキャッシュにより買収は完了し、4Qのキャッシュフロー計算書に計上される。ネットフリックスの資本政策は従前と変わらずキャッシュをコアビジネスに再投資する事であり、次にゲームやM&Aに使う事とし、保有現預金は2か月分の売上とし余剰分は自社株買いで株主還元する。

4Qガイダンス

米ドルの独歩高から売上は3Q比約▲1%の78億ドルとしている。為替の影響を除くと4Qの売上は前年同期比9%増の想定である。会員数に関しては4Qは通常強い四半期であり450万人増を予定している。(前年同期は830万人増)一人当たり売上は前年同期比6%増の予想である。4Qは通常製作費が嵩む事、ドル高から営業利益率は4%を予想している。(前年同期は8%)為替の影響を除くと営業利益率は10%予想である。米ドル高から2022年通期の売上と営業利益にそれぞれ▲8億ドル、▲10億ドルの下押し要因になると想定している。為替の影響を除くと営業利益率は19%~20%である。中期的にはドル高は解消されて価格、コストは調整されると会社側は考えている。長期目標は従前と変わらず売上の二桁増、営業利益、フリーキャッシュフローの高成長である。

業績推移

Netflix1Q20212Q20213Q20214Q2021FY20211Q20222Q20223Q2022
(単位:百万USD、EPSを除く)Mar-21Jun-21Sep-21Dec-21 Mar-22Jun-22Sep-22
         
売上高7,1637,3427,4837,70929,6987,8687,9707,926
売上原価3,8694,0184,2075,24017,3334,2854,6914,978
マーケティング費用5136046367932,545556575568
テクノロジー開発費用5255375646472,274658717663
一般管理費2973353223981,352398409373
営業利益1,9601,8481,7556326,1951,9721,5781,533
営業外収益(費用)        
 支払利息(194)(191)(190)(189)(766)(188)(175)(173)
 受取利息、その他収益269(63)96109411196220261
税引前利益2,0351,5941,6615515,8401,9801,6231,622
法人税等(328)(241)(212)57(724)(382)(182)(243)
純利益1,7071,3531,4496075,1161,5971,4401,398
普通株主に帰属する純利益1,7071,3531,4496075,1161,5971,4401,398
完全希薄後株式数456455455456455453450450
完全希薄後EPS3.752.973.191.3311.243.533.203.10
         
修正EBITDA*4,9844,6934,8854,54619,0455,3325,0955,424
修正EBITDAマージン69.58%63.92%65.27%58.96%64.13%67.8%63.9%68.4%
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬      
営業キャシュフロー           777 (64)82(403)393923103557
フリーキャッシュフロー696(174)(85)(569)(132)80213472

               (注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

業績予想

FY2022予想1Q(実績)2Q(実績)3Q(実績)4Q(予想)
     
売上高7,8687,9707,9267,854
営業利益1,9721,5781,533338
税引前利益1,9801,6231,622443
法人税等(382)(182)(243)(58)
純利益1,5971,4401,398385
完全希薄後株式数453450.2450.3450.4
完全希薄後EPS3.533.203.100.86

                (注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

投資判断

3Qの会員数増について会社予想の100万人増は難しいと予想したが、結果として240万人増を達成した。米国、欧州でインフレがピークアウトした訳ではないのに会員数を伸ばす事ができたのは3Qにリリースされた人気コンテンツの影響が大きかったと思われる。広告付きプランのローンチで視聴者には選択肢が増え更に会員数獲得に貢献するだろう。モメンタムはかなり改善したが、欧米ともにリセッション入りする可能性も高く先行きの見通しはしづらい状況にある。

 

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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