【注目ポイント】 ラテンアメリカで問題であるただ乗りを解消するために料金シェアプランを1Q後半にローンチする予定。
株価(2023/1/19) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC* |
315.78USD(日中取引終値) | 1,405億USD(約18兆円) | 42.8% | 28.15% | 14.9% |
PER(実績) | PER(弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
29.8倍 | 39.9倍 | 7.2倍 | N/A | 7.6倍 |
*注:ROICは過去12カ月の実績数値。
2022年4Q決算結果
売上高 78億5,200万ドル(約1兆98億円、3Q比▲0.6%、前年同期比5.9%増)
営業利益 5億5,500万ドル (同▲64.1%、同▲13.0%)
営業利益率 7.0%(同▲12.3%、同▲1.2%)
四半期純利益 5,500万ドル(同▲96%、同▲90.9%)
希薄化後EPS 0.12ドル(弊社予想0.86ドル)
会員数 2億3,075万人(3Q比766万人増)
3Q決算結果発表の際に4Qの会員数増は450万人とのガイダンスを会社側は出していたが、結果として会社予想の約1.7倍会員数は増加した。11月に広告付きの低価格プランのローンチやドラマ「ウェンズデー」やドキュメンタリーの「ハリー&メーガン」等の人気によりホリデーシーズンに会社の想定以上の新規会員獲得した。会員数は予想以上の増加であったが、売上高は前年同期比は約5.9%増加したものの為替の影響と4Qは例年製作費とマーケティング費用が他の四半期より大幅に増加となるために営業利益はで3Q比では▲13%、前年同期比では▲64.1%となった。四半期純利益は前年同期、3Q比ともに90%以上と大幅に減少した。4Qのボトムラインの大幅減少は自社発行のユーロ建て債券(約50億ドル)の対ユーロの米ドル安による為替の未実現損失を4億6,200万ドルを営業外で計上した事による。会社の為替の影響の試算によると2022年通期で売上は▲9億6,200万ドル、営業利益は▲2億1,400万ドルの影響があった。
広告つき低価格プランは、米国、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、メキシコ、スペイン、英国で11月に開始したが、各地域で会員数は大幅に増加した。
4Qの地域別内訳は以下の通りである。
アメリカ、カナダでは売上は3Q比▲0.2%、前年同期比8.6%増の35億9,500万ドル、会員数は3Q比91万人増、前年同期比▲92万人の7,430万人、会員一人当たり平均売上は3Q比▲0.9%、前年同期比10%増の16.23ドルであった。
ヨーロッパ、アフリカでは売上は3Q比▲1.1%、前年同期比10%増の23億5,000万ドル、会員数は3Q比320万人増、前年同期比269万人増の7,673万人、会員一人当たり平均売上は3Q比▲3.5%、前年同期比▲10%の10.43ドルであった。
ラテンアメリカでは売上は3Q比▲0.68%、前年同期比5.5%増の10億1,700万ドル、会員数は3Q比176万人増、前年同期比174万人増の4,170万人、会員一人当たり平均売上は3Q比▲3.3%、前年同期比2%増の8.3ドルであった。
アジア太平洋では売上は3Q比▲3.6%、前年同期比▲1.6%の8億5,700万ドル、会員数は3Q比180万人増、前年同期比539万人増の3,802万人、会員一人当たり平均売上は3Q比▲7.8%、前年同期比▲17%の7.69ドルであった。会員一人当たり平均売上の他地域より大きな減少は低価格プランに加え以前より継続しているインドでの戦略的な値下げによる。
キャッシュフロー、資本構成
4Qの営業キャッシュフローは4億ドル(一年前の4Qは▲4億ドル)、2022年度通期の営業キャッシュフローは20億ドル(2021年度通期は4億ドル)だった。4Qのフリーキャシュフローは3億ドル(一年前の4Qは▲6億ドル)、2022年度通期のフリーキャシュフローは16億ドル(2021年度通期は▲2億ドル)だったが、会社予想の通期のフリーキャシュフロー10億ドルを上回った。2023年度通期の会社予想のフリーキャッシュフローは30億ドルを予定している。4QはオーストラリアのVFX工房の「アニマルロジック」、シアトル拠点のゲーム開発会社の「Spry Fox」の買収が完了したが(いずれも買収金額は非公表)、いずれも現預金で賄った。これにより4Q末の現預金は3Q末比▲16.4%の51億ドルとなった。
4Q末時点でのグロス有利子負債は140億ドルで会社予想の100億~150億ドルのレンジ内に抑えてでいる。現預金と短期投資の合計は60億ドルで、ネットデット(純有利子負債)は4Q末時点で80億ドル、過去12カ月のEBITDAの1.3倍である。2023年に社債の償還予定はない。2024年に償還予定の社債は4億ドルである。社債は全て固定金利である。ネットフリックスの資本政策は従前と変わらずキャッシュをコアビジネスに再投資する事であり、次にゲームやM&Aに使う事とし、保有現預金は2か月分の売上とし余剰分は自社株買いで株主還元する事であるが、2023年は大型の買収がない限り2022年には行わなかった自社株買いを行う予定である。
2023年度ガイダンス
ネットフリックスは今回から会員数のガイダンスは行わない事になった。2023年1Qの売上は前年同期比4%増(為替の影響を除くと8%増)と会社側は想定している。会員数の増加は2023年1Qは2022年4Qより大分減少すると会社側は予想している。また2023年はラテンアメリカで問題であるアカウントのただ乗りを解消するために料金シェアプランを1Q後半にローンチする予定でいる。
2023年の営業利益率は2022年年初の為替レートを前提として19%~20%をターゲットとしてきたが、これは2023年1月1日時点の為替レートで換算すると18%~20%となり、1Qでは20%を想定している。
業績推移
Netflix | 1Q22 | 2Q22 | 3Q22 | 4Q22 | FY22 |
(単位:百万USD、EPSを除く) | Mar-22 | Jun-22 | Sep-22 | 22-Dec | |
売上高 | 7,868 | 7,970 | 7,926 | 7,852 | 31,616 |
売上原価 | 4,285 | 4,691 | 4,978 | 5,404 | 19,358 |
マーケティング費用 | 556 | 575 | 568 | 832 | 2,531 |
テクノロジー開発費用 | 658 | 717 | 663 | 674 | 2,712 |
一般管理費 | 398 | 409 | 373 | 392 | 1,572 |
営業利益 | 1,972 | 1,578 | 1,533 | 550 | 5,633 |
営業外収益(費用) | |||||
支払利息 | (188) | (175) | (173) | (171) | (707) |
受取利息、その他収益 | 196 | 220 | 261 | (340) | 337 |
税引前利益 | 1,980 | 1,623 | 1,622 | 39 | 5,264 |
法人税等 | (382) | (182) | (243) | 16 | (792) |
純利益 | 1,597 | 1,440 | 1,398 | 55 | 4,490 |
普通株主に帰属する純利益 | 1,597 | 1,440 | 1,398 | 55 | 4,490 |
完全希薄後株式数 | 453 | 450 | 450 | 452 | 452 |
完全希薄後EPS | 3.53 | 3.20 | 3.10 | 0.12 | 9.95 |
修正EBITDA* | 5,332 | 5,095 | 5,424 | 4,743 | 20,594 |
修正EBITDAマージン | 67.8% | 63.9% | 68.4% | 60.4% | 65.1% |
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬 | |||||
営業キャシュフロー | 923 | 103 | 557 | 444 | 2,027 |
フリーキャッシュフロー | 802 | 13 | 472 | 332 | 1,619 |
(注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
FY2023予想 | 1Q(予想) | 2Q(予想) | 3Q(予想) | 4Q(予想) |
売上高 | 8,183 | 8,249 | 8,243 | 8,205 |
営業利益 | 1,637 | 1,567 | 1,525 | 615 |
税引前利益 | 1,207 | 1,167 | 1,187 | 565 |
法人税等 | (229) | (210) | (178) | 55 |
純利益 | 977 | 957 | 1,009 | 620 |
完全希薄後株式数 | 452 | 451 | 450.3 | 449.7 |
完全希薄後EPS | 2.16 | 2.12 | 2.24 | 1.38 |
(注:Netflix社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
投資判断
4Qの広告付き低価格プランのローンチのおかげで会員数は全地域で大幅増加となり、2023年1Q後半からラテンアメリカで問題となっていたただ乗りを解消するための料金シェアプランをローンチする予定である。ひとまず2022年1Q時のような危機的状況は脱したような印象がある。以前のような高成長は望めないがインフレが収まらない状況でも顧客離れを抑えて地道に成長を継続していくと考えている。
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