【注目ポイント】 2022年の販売台数、前年比50%増を達成できるか?!

株価(2022/10/19)    時価総額自己資本比率    ROE*    ROIC*
222.04USD(日中取引終値)6,958億USD(約104兆円)       53.5%  29.89%    21.5%
    PER(実績)  PER(弊社予想)        PBR配当利回りEV/EBITDA
             79.2倍     61.8倍      18.9倍     N/A     47.1倍

                        *注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。

2022年3Q決算結果

売上高   215億ドル(約3兆2,200億円、前年同期比56%増、2Q比27%増)

営業利益  36億8,800万ドル (同84%増、同49.7%増)

営業利益率 17.2% (同2.6pt増、同2.6pt増)

四半期純利益 GAAP 32億9,200万ドル(同103.5%増、同46%増)

       non-GAAP 36億5,400万ドル(同75%増、同39%増)

希薄化後EPS     GAAP 0.95ドル

       non-GAAP 1.05ドル

生産台数   365,923台(前年同期比53.9%、2Q比41.5%増)

販売台数   343,830台(同42.4%増、同35%増)

原材料価格の高騰はあったが、値上げにより売上、営業利益、フリーキャッシュフローが過去最高を記録した好決算であった。ドル高による営業利益への影響は約▲2億5,000万ドルであった。自動車の粗利益率は前年同期比2.6pt低下したが、2Qと変わらず27.9%であった。営業利益率は前年同期比、2Q比ともに2.6pt上昇の17.2%であった。GAAPベースの四半期純利益は前年同期比103.5%と大幅に増益した。

3Qの生産台数は前年同期比53.9%増、2Q比41.5%増の365,923台であった。販売台数は前年同期比42.4%増、2Q比35%増の343,830台であった。「モデルS/X」「モデル3/Y」の出荷台数内訳は「モデルS/X」が18,672台、「モデル3/Y」が32万5,158万台と量販車がけん引した。

テスラはカリフォルニア州フリーモント、中国上海、テキサス州オースティン、ドイツのベルリンにギガファクトリーがあるが、全工場において過去最高の生産台数を記録した。部品調達は3Qは大きな問題ではなかったが、3Q末の納車のピーク時に車両輸送能力に問題があったが、この問題は地域ごとの生産と納車のバランスが取れるようにこれからは変わっていくとの事である。

フリーモント工場では生産効率を更に上げるように施策を取っていく予定である。オースティン工場では「モデルY」を製造しているが、生産効率は毎月改善している。オースティンではバッテリーも製造しているが、新型4680バッテリー・セルの製造個数は3Qに3倍増加した。上海は北米以外の地域へ輸出するメイン・ハブであるが、3Qの上海工場の生産効率は一時ロックダウンがあった2Qに比べて改善した。今年春にオープンしたベルリン工場では3Q末時点で一週間に2170電池セル搭載の「モデルY」を2,000台製造できる状況である。(2Qは一週間に1,000台製造)生産効率の進捗は計画通りである。

蓄電池事業の3Qの配備量は前年同期比62%増の2.1GWhと過去最高を記録した。太陽光発電事業の3Qの設置量は同13%増の94MWとなった。太陽光発電及び蓄電事業の3Qのセグメント売上高は同38.6%増の11億1,700万ドル、売上原価は同26%増の10億1,300万ドルとなり粗利益は1億400万ドル、粗利益率は9.3%となった。部材コストの上昇により粗利益率は2Q比1.9pt低下した。

バランスシートは引き続き改善した。3Qのフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー引く設備投資)は前年同期の約2.5倍の33億ドルとなった。現預金及び短期有価証券の残高は同31%増の211億700万ドルとなった。3Q末時点の総負債額(車両とエネルギーのプロダクト・ファイナンスを除く)は同97%減の6,300万ドルまで低下した。3Q末の負債資本倍率は0.0015倍と限りなくゼロに近くなった。

2022年の販売台数は従前からコメントしていた通り前年比50%増を目指している。EVトラックのセミ(Semi)の納車は12月から開始するとwebcast上でコメントした。また取締役会の承認が取れれば2023年に50億~100億ドル相当の自社株買いを予定していると述べた。ツイッターの買収に関しては長期的なポテンシャルは大きく、440億ドル(約5兆6400億円)の資金調達のためにテスラ株をかなり売却する予定であるとコメントした。

業績推移

TeslaQ1-2021Q2-2021Q3-2021Q4-20212021Q1-2022Q2-2022Q3-2022
(単位:百万 USD)        
自動車事業売上9,00210,20612,05715,96747,23216,86114,60218,692
 うち排出権クレジット売上5183542793141465679344286
発電、畜電事業売上4948018066882,7896168661,117
サービス、その他売上8939518941,0643,8021,2791,4661,645
総売上高10,38911,95813,75717,71953,82318,75616,93421,454
総売上原価8,1749,07410,09712,87240,21713,29612,70016,072
 自動車事業売上原価6,6177,3078,38411,08533,39311,32210,52113,480
 発電、蓄電事業売上原価5957818037392,9186887691,013
 サービス、その他売上原価9629869101,0483,9061,2861,4101,579
総粗利益2,2152,8843,6604,84713,6065,4604,2345,382
   自動車事業粗利益2,3852,8993,6734,88213,8395,5394,0815,212
   自動車事業粗利益率26%28.4%30.5%30.6%29.3%32.9%27.9%27.9%
 発電、蓄電事業粗利益▲ 101203▲ 51▲ 129▲ 7297104
 サービス、その他粗利益▲ 69▲ 35▲ 1616▲ 104▲ 75666
粗利益率21.3%24.1%26.6%27.4%25.3%29.1%25.0%25.1%
営業費用1,6211,5721,6562,2347,0831,8571,7701,694
営業費用比率15.6%13.1%12.0%12.6%13.2%9.9%10.5%7.9%
営業利益5941,3122,0042,6136,5233,6032,4643,688
営業利益率5.7%11.0%14.6%14.7%12.1%19.2%14.6%17.2%
受取利息1011102556282686
支払利息(99)(75)(126)(71)(371)(61)(44)(53)
営業外収益2845(6)68 1355628 (85)
税引前利益5331,2931,8822,6356,3433,6262,4743,636
法人税等69115223292699346205305
純利益4641,1781,6592,3435,6443,2802,2693,331
非支配株主に帰属する純利益26364122125▲ 381039
親会社株主に帰属する純利益4381,1421,6182,3215,5193,3182,2593,292
完全希薄後株式数1,1331,1191,1231,135-1,1571,1553,468
完全希薄後EPS0.391.021.442.04-2.861.950.95
         
修正EBITDA*1,8412,4873,2034,09011,6215,0233,7914,968
修正EBITDAマージン17.7%20.8%23.3%23.1%21.6%26.8%22.4%23.2%
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬     
         
営業キャッシュフロー1,6412,1243,1474,58511,4973,9952,3515,100
設備投資額1,3481,5051,8191,8106,4821,7671,7301,803
フリーキャッシュフロー2936191,3282,7755,0152,2286213,297
現金および現金同等物17,14116,22916,09517,70718,01317,57618,91521,107

                    (注:テスラ社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

業績予想

FY2022予想1Q(実績)2Q(実績)3Q(実績)4Q(予想)
     
売上高18,75616,93418,69223,926
営業利益3,6032,4643,6884,043
税引前利益3,6262,4743,6364,022
法人税等346 205 274 402 
純利益(親会社株主帰属)3,3182,2593,2923,620
完全希薄後株式数1,1571,1553,4683,472
完全希薄後EPS2.862.750.951.04
株式分割後EPS*0.950.65  

           (注:テスラ社は8月に1対3の株式分割を行った。テスラ社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

投資判断

3Qが終わった時点で2022年の販売台数を前年比50%増目標を維持している。部材コストの高止まり状況は継続すると思うが、価格アップで利益率は確保するだろう。4Qも増収増益でまた最高益を更新する可能性が高いと思われるが、株価動向はファンダメンタルよりも金利動向に左右されると考えている。

 

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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